もともと学校保健法ではインフルエンザ罹患児の隔離期間は「解熱後2日間」と定められ、幼稚園・保育園児にも慣習として適用されてきました。
ところが2009年に新型インフルエンザが登場した際、喧々諤々となり最長「発症翌日から7日間」と厚生労働省から指示が出され、現場は右往左往。
小学生・中学生は「解熱後2日間」でよいのですが、実は幼稚園・保育園児は「解熱後3日間」が適切であるとされている事実を、ここにご紹介させていただきます。
もう5年以上前になりますか、「乳幼児はウイルス排泄が遷延し、解熱後3日時でも感染力が残る。園での流行が止まらないのは感染力の残った回復児が登園してウイルスを振りまくためである。」というニュースが話題になりました。
他の感染症と同じく、乳幼児は免疫力が弱いので排除に時間がかかるのですね。
それから小児科医の間では「園児は解熱後3日間隔離」を採用する医療機関が多くなりました。
近年、公的文書にも「園児は解熱後3日間隔離」が指示されており(下記を参照)、スタンダード化しつつあります。
■ 「保育所における感染症対策ガイドライン」(厚生労働省、2009年)
「症状が始まった日から7日目まで又は解熱した後、3日を経過するまでは、登園を避ける」
■ 「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」(日本小児科学会、2011年)
「学校保健安全法では、解熱した後 2 日を経過するまで、厚生労働省の『保育所における感染症対策ガイドライン』では、症状が始まった日から7日まで、または解熱した後3日を経過するまで、出席停止」
インフルエンザ罹患者の隔離期間、出席停止期間はその昔、ウイルス排泄期間(つまり他人に感染させる能力のある期間)を根拠に設定されたものと思われます。
しかし2000年に抗インフルエンザ薬が登場してから自然経過より約1日早く解熱するという治療効果が得られるようになりました。
この治療によりウイルス排泄期間も短くなるのかどうか、大いに興味のあるところです。
短くなるなら解熱後の隔離期間も従来通りでよいけれど、短くならないなら隔離期間を長く設定しなければいけないのではないか?
しかし、得られる情報では「ウイルス排泄期間は短くならない」と「短くなるかもしれない」という両方の意見があるようです。
ネット上で検索すると、廣津先生(小児科開業医)が精力的に蓄積しているデータを見つけました;
■ 「インフルエンザの家庭内感染と学校感染」(みちのくウイルス塾、2009年)
この中のスライドを拝見しますと、
・「発症後のウイルス残存率」
無治療では発症6日目に約50%、治療群では5~10%。治療により約2日間ウイルスが早く消失する。
・「解熱からの経時的ウイルス残存率」
解熱後2日目でも約40%、3日目約15%、4日目約5%。
・「年齢の違いによる治療後のウイルス残存率」
治療後5日目では6歳以下が約50%、7歳以上は約10%。学童と比較すると乳幼児のウイルス残存率は約1日遅れで減少していく。
などのことが読み取れます。
つまり、
・抗インフルエンザ薬治療により自然経過より早く解熱し、それと平行してウイルス排泄も減少する
・乳幼児ではウイルス排泄も減少が年長児より1日程度遅れ、長引く傾向がある
ということ。
すると出席停止期間は、
「学童は解熱後2日間、園児は解熱後3日間」
でよいと考えられます。
さらに近年、1回で治療終了のイナビル(吸入薬)とラピアクタ(点滴静注)が登場しました。
製薬会社の説明では、治療により解熱しても、発症7日目のウイルス排泄量はゼロにはならないとのことでした。
イナビルの効果発現時間はリレンザとそう変わりませんが、ラピアクタはより即効性です(点滴した晩には解熱傾向になることが多い)。
ラピアクタはウイルス排泄量も早期に減らすことができるのでしょうか?
ラピアクタの「インタビューフォーム」(薬の詳細情報)のP21-22には「インフルエンザウイルス力価の単位時間あたりの変化量は、投与前から投与 3 日目までの 600 mg 群でのみプラセボ群より有意に大きかった」と記載されています。わかりにくい表現ですが、ウイルス排泄は無治療とあまり変わらないということ。
ラピアクタ治療後、楽になったと早期に社会復帰するとウイルスをばらまく可能性が大と思われ、ラピアクタ使用者に限り「解熱後○日間」の○部分に変更が必要になるかもしれません。
※ イナビルは2010年秋の発売時から小児適応があり、ラピアクタは2010年秋に小児適応が認められました。
ところが2009年に新型インフルエンザが登場した際、喧々諤々となり最長「発症翌日から7日間」と厚生労働省から指示が出され、現場は右往左往。
小学生・中学生は「解熱後2日間」でよいのですが、実は幼稚園・保育園児は「解熱後3日間」が適切であるとされている事実を、ここにご紹介させていただきます。
もう5年以上前になりますか、「乳幼児はウイルス排泄が遷延し、解熱後3日時でも感染力が残る。園での流行が止まらないのは感染力の残った回復児が登園してウイルスを振りまくためである。」というニュースが話題になりました。
他の感染症と同じく、乳幼児は免疫力が弱いので排除に時間がかかるのですね。
それから小児科医の間では「園児は解熱後3日間隔離」を採用する医療機関が多くなりました。
近年、公的文書にも「園児は解熱後3日間隔離」が指示されており(下記を参照)、スタンダード化しつつあります。
■ 「保育所における感染症対策ガイドライン」(厚生労働省、2009年)
「症状が始まった日から7日目まで又は解熱した後、3日を経過するまでは、登園を避ける」
■ 「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」(日本小児科学会、2011年)
「学校保健安全法では、解熱した後 2 日を経過するまで、厚生労働省の『保育所における感染症対策ガイドライン』では、症状が始まった日から7日まで、または解熱した後3日を経過するまで、出席停止」
インフルエンザ罹患者の隔離期間、出席停止期間はその昔、ウイルス排泄期間(つまり他人に感染させる能力のある期間)を根拠に設定されたものと思われます。
しかし2000年に抗インフルエンザ薬が登場してから自然経過より約1日早く解熱するという治療効果が得られるようになりました。
この治療によりウイルス排泄期間も短くなるのかどうか、大いに興味のあるところです。
短くなるなら解熱後の隔離期間も従来通りでよいけれど、短くならないなら隔離期間を長く設定しなければいけないのではないか?
しかし、得られる情報では「ウイルス排泄期間は短くならない」と「短くなるかもしれない」という両方の意見があるようです。
ネット上で検索すると、廣津先生(小児科開業医)が精力的に蓄積しているデータを見つけました;
■ 「インフルエンザの家庭内感染と学校感染」(みちのくウイルス塾、2009年)
この中のスライドを拝見しますと、
・「発症後のウイルス残存率」
無治療では発症6日目に約50%、治療群では5~10%。治療により約2日間ウイルスが早く消失する。
・「解熱からの経時的ウイルス残存率」
解熱後2日目でも約40%、3日目約15%、4日目約5%。
・「年齢の違いによる治療後のウイルス残存率」
治療後5日目では6歳以下が約50%、7歳以上は約10%。学童と比較すると乳幼児のウイルス残存率は約1日遅れで減少していく。
などのことが読み取れます。
つまり、
・抗インフルエンザ薬治療により自然経過より早く解熱し、それと平行してウイルス排泄も減少する
・乳幼児ではウイルス排泄も減少が年長児より1日程度遅れ、長引く傾向がある
ということ。
すると出席停止期間は、
「学童は解熱後2日間、園児は解熱後3日間」
でよいと考えられます。
さらに近年、1回で治療終了のイナビル(吸入薬)とラピアクタ(点滴静注)が登場しました。
製薬会社の説明では、治療により解熱しても、発症7日目のウイルス排泄量はゼロにはならないとのことでした。
イナビルの効果発現時間はリレンザとそう変わりませんが、ラピアクタはより即効性です(点滴した晩には解熱傾向になることが多い)。
ラピアクタはウイルス排泄量も早期に減らすことができるのでしょうか?
ラピアクタの「インタビューフォーム」(薬の詳細情報)のP21-22には「インフルエンザウイルス力価の単位時間あたりの変化量は、投与前から投与 3 日目までの 600 mg 群でのみプラセボ群より有意に大きかった」と記載されています。わかりにくい表現ですが、ウイルス排泄は無治療とあまり変わらないということ。
ラピアクタ治療後、楽になったと早期に社会復帰するとウイルスをばらまく可能性が大と思われ、ラピアクタ使用者に限り「解熱後○日間」の○部分に変更が必要になるかもしれません。
※ イナビルは2010年秋の発売時から小児適応があり、ラピアクタは2010年秋に小児適応が認められました。