徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

子どもの便秘は「ウンチの呪い?」

2024年06月19日 08時41分10秒 | 小児科診療
小児科医の私の医院には、便秘で通院する子どもがたくさんいます。
毎日、5人くらいは来院されますね。

乳児期にはカマ、ラクツロース、
2歳以降はモビコールを中心に処方しています。

うまくコントロールできない患者さんには、
漢方薬の使用を提案します。
例えば、
お腹の痛みがメインだったり、
下痢と便秘を反復したり…
西洋医学では対応しきれない例ですね。

さて、いつものように医療情報を集めていたら、
「ウンチの呪い」といインパクトのある題名に出会いました。
どうやら子どもの便秘を扱っている様子…

読んでみると、「ウンチの呪い」は便塞栓による悪循環を指しているようです。
便塞栓(硬くて大きなウンチの塊)が肛門を塞いでいて、
便が出るのを邪魔しているという構図。

当院では便秘の相談で受診された患者さんのお腹に硬い便塊を触れた場合は、
浣腸もしくはテレミンソフト(浣腸と同じ効果のある坐薬)を処方し、
2日間連続で使用するよう指示します。

この方法はガイドラインにも書いてあります。

1回で十分便が出ても2日間連続?
・・・そうなのです。
1回でたくさん排便があっても、溜まった便塊が出切れていないことが多いのです。
消化器専門医は「3日連続浣腸」を指示すると聞いています。


■ 「うんちの呪い」を断ち切ることが治療の肝〜乳幼児期の便秘症

 便秘症は、小児科の日常診療において遭遇頻度が高い疾患である。大阪府立病院機構大阪母子医療センター消化器・内分泌科副部長の萩原真一郎氏は、第127回日本小児科学会(4月19〜21日)で乳幼児期の便秘症の診断と治療を解説。便秘症の連鎖を"うんちの呪い"に例え、原因となる便塊の貯留(便塞栓)を解除し、こうした負の連鎖を断ち切ることが治療の肝であると述べた。

▶ 診断はRoma Ⅳで、ただし該当しないケースも
 便秘症は、器質的異常による器質的便秘症と基礎疾患を除外した機能性便秘症に大別される。萩原氏によると、乳幼児便秘症は発症時期で分けると特徴が把握しやすいという。例えば、
・離乳食開始前の生後6カ月未満児の便秘症 → 器質的疾患が背景にある可能性を常に考慮する必要がある。
・離乳食の開始に伴い便が硬くなる → これを機に便秘を発症することもある。
・トイレトレーニング中に硬便による排便痛を経験する → 恐怖心から便秘症に至るケースもある。
 乳幼児の便秘症診断は、Roma Ⅳに基づいて行う。発症年齢が4歳未満では、1週間の排便回数が2回以下、過度の便貯留の既往があるなどの7項目中2項目以上が1カ月以上継続する場合は便秘症と診断する。ただしRoma Ⅳに該当しないケースもあり、同氏は「排便困難例の状況を見た上で診断すべき」と述べた。
 診断後は器質的疾患を除外するが、ここでは警告症状(red flags)の確認が極めて重要になる。警告症状は、日本小児栄養消化器肝臓学会の『小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン2013』、英国の『NICE Clinical Guideline』、RomaⅣ(Gastroenterology 2016; 150: 1456-1468)で若干異なるものの、
・胎便排泄の遅延(生後24~48時間以降)
・生後2カ月以内の血便
・成長障害または体重減少などを伴う例
…では基礎疾患を除外するため、専門医への受診を勧める。

▶ 完全母乳栄養からの変更で生じる牛乳アレルギーによる便秘症
 生後9カ月未満の健康児に認められる乳児排便困難症は、腹圧の上昇と骨盤底筋群の弛緩が協調できないことで起こる。診断は、
① 少なくとも10分間、軟らかい便の排泄成功または失敗の前にいきみがある
② 他の健康上の問題がない
―場合となる。
綿棒による肛門刺激は条件付きとなりやすく、便自体が軟らかいため緩下剤による治療のいずれも推奨されていない
 牛乳アレルギーによる便秘症は、完全母乳栄養から混合栄養または粉ミルクに変更した際に発症することが多い。胃腸炎を来した後に摂取した牛乳の蛋白質に感作されて便秘を発症する。標準治療に反応がなければ牛乳の摂取制限を検討し、2~4週間の牛乳蛋白質除去により便秘の改善を図る。
 大阪母子医療センター消化器・内分泌科でも牛乳アレルギーによる便秘症が疑われた1歳6カ月児を診察しており、自身の乳製品摂取制限を解除した母親に再び摂取を制限してもらったところ児の便秘改善が得られている。
 前述の警告症状のうち、症状がない便秘症では便塞栓が重要となる。便塞栓の診断は、
① 身体所見上、下腹部に硬い便塊に触れる
② 肛門指診上、大量の便塊によって直腸の拡張が認められる
③ 腹部X線検査上、結腸内に大量の便が認められる
―の有無で行う。
ポータブルエコーは施行時に広いスペースが不要なため、便塞栓の判定に有益である。なお近年、直腸における便塊の判定を人工知能(AI)が支援する直腸観察ガイドプラスを搭載したエコーも登場し、乳幼児への施行時に利便性が期待される。

▶ 第一選択薬はグリセリン浣腸、浸透圧性下剤、刺激性下剤
 便秘症では便塞栓の存在によって負の連鎖が生じることから、治療では便塞栓に注意を要する。
 具体的には、便塞栓があると直腸が拡張するとともに便中の水分が吸収されることで便が硬くなるため、排便痛が出現。トイレトレーニングで排便に対する恐怖心を抱き、排便を我慢するようになり、便塞栓がさらに貯留する。この一連の流れについて、萩原氏は「まさに"呪い"のようであり、便塞栓を解除することが便秘症治療の肝である」と強調した。
 また日本における便塞栓治療として、軽症例やグリセリン浣腸に抵抗がある例では浸透圧性下剤または刺激性下剤が、抵抗がない例では浣腸が第一選択薬となる。さらに、漏便を伴う重症の便塞栓症例や浣腸がトラウマになっている例については、同科ではガストログラフィンを用いた注腸造影を施行し、酸化マグネシウムおよびピコスルファートによる治療を行っていると紹介した。


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