よく患者さんから受ける質問です。
開業医の私は「20歳までOKです」と答えています。
その心は「成長過程は小児科、体が完成してから徐々に壊れていく過程は内科」というもの。
ただし、勤務医の時は違いました。
病院では「中学生までは小児科、高校生以上は内科」と自動的に振り分けられてしまいます。
なんだか中途半端ですね。
つまり、大人でもない子どもでもない思春期のティーンズは、受診する科が定まっておらず、さまようことになってしまいます。
視点を変えると、腰を据えて思春期を診る医者がいない、という事実があぶり出されます。
はて、諸外国ではどんな風になっているんだろう、と素朴な疑問が頭をもたげます。
こんな記事を見つけました。
■ 小児科受診は何歳まで? 115カ国の小児科医に聞いてみた
(2019年10月04日:MedicalTribune)
医療における小児の定義は何歳までなのか。この疑問に答えるべく、オーストラリア・Murdoch Children's Research InstituteのSusan Sawyer氏らによる国際チームが、小児科医療の対象となる上限年齢について、世界の小児科医にオンライン調査を行い、結果をLancet Child Adolesc Health(2019年9月18日オンライン版)に発表した。それによると、各国で上限年齢が大きく異なっていたが、多くの国で理想とされる19歳に届いておらず、世界的に思春期層の医療需要に応えられていないという実態が明らかになった。
◇ 臨床実態の把握を目指し1,300人以上から回答を得る
これまでの研究から、世界の医療システムは思春期層の需要に十分対応していないことが示されている。Sawyer氏は「しかし、小児科医は思春期層に対して年齢に適した医療を提供できる立場にある。思春期医療の訓練を受けている場合は特にそうだ」と指摘。同氏によると、世界保健機関(WHO)は、思春期(adolescents)を10~19歳と定義しているが、小児科で実際に診療している年齢層が各国・地域でどのように異なるのかに関する研究はほとんどないという。
今回の研究では、世界中の小児科医に電子メールで調査への参加を呼びかけ、115カ国の1,372人から回答を得た。各国の小児科関連団体に問い合わせて一義的な回答を得るという方法を取らずに、できるだけ多くの小児科医から回答を得て、臨床における実態と各国・地域内での認識のばらつきについても把握することを試みた。
◇ 南アの11.5歳から米国の19.5歳まで大きなばらつき
小児科医の回答を集計した結果、小児科診療の平均上限年齢について、国により著明な差が認められた。上限が最も低かったのは南アフリカの11.5歳で、同国では思春期は小児科領域に含まれないようであった。一方、最も上限が高かったは米国の19.5歳であった。また、オーストラリアとニュージーランドは医療システムが類似しているにもかかわらず、平均上限年齢はそれぞれ17.8歳、15.6歳と格差が見られた。日本を含む東アジアでは18.1歳であった。高所得国においては、上限年齢が高いことと、思春期層の疾患負担が幼児(5歳未満)に比べて高いことが関連していた。
望ましいとされる上限年齢については、各国の医師の間でも意見の相違が見られた。過去20年間に小児科診療の平均上限年齢は上昇しているが、現在の世界の平均上限年齢は17.4歳(±2.5歳)で、現状では望ましい上限年齢の平均18.7歳(±2.6歳)に追い付いていない(P<0.0001)。上限年齢の経時的上昇の主な理由として、思春期層の健康に対する認識の高まり、専門団体による指導などが挙げられた。Sawyer氏は「上限年齢について、国により著明な差が見られ、残念なことに平均上限年齢が(WHO定義の)19歳であった国はごくわずかであった」と述べている。
◇ 思春期医療の教育は世界的に不十分
今回の調査からは、小児科研修における思春期医療教育の質が、大半の国で不十分であることも分かった。Sawyer氏は「小児科領域は歴史的に幼小児に焦点を当てており、思春期層は軽視されることが多かった。しかし、公衆衛生上の介入と医療の進歩により著明な低下が見られるものの、思春期層の疾患負担は小児より複雑で、以前からあまり変化していない。WHOの推計によると、年間100万人以上の思春期の若者が死亡している」と指摘している。
現在、若者は糖尿病や喘息などの慢性疾患、精神障害、貧血、肥満の増加、対人暴力、下痢性疾患、気管支疾患、薬物・アルコール乱用、性感染症、交通外傷など、小児と成人双方の健康上の負荷に直面している。同氏は「思春期医療研修への投資が最も必要な国は、上限年齢が低い国、思春期人口が多い国、上限年齢がごく最近上昇した国だろう。しかし、世界的に思春期医療研修の質は低く、その向上に対する投資は不可欠である」と述べている。
世界の状況も同様なのですね。
将来を担う若者達が身体の不調を抱えていても、それを診療する科が決まっていないというのは問題です。
とくに思春期はこころの問題が絡んでくるので、専門性も要求されます。
私のようなアラ還世代の小児科医は、子どもの体の病気は教育を受けて経験もありますが、正直申しまして、“こころの問題”は不得手です。
これからの医学教育に反映させる必要があると思います。
開業医の私は「20歳までOKです」と答えています。
その心は「成長過程は小児科、体が完成してから徐々に壊れていく過程は内科」というもの。
ただし、勤務医の時は違いました。
病院では「中学生までは小児科、高校生以上は内科」と自動的に振り分けられてしまいます。
なんだか中途半端ですね。
つまり、大人でもない子どもでもない思春期のティーンズは、受診する科が定まっておらず、さまようことになってしまいます。
視点を変えると、腰を据えて思春期を診る医者がいない、という事実があぶり出されます。
はて、諸外国ではどんな風になっているんだろう、と素朴な疑問が頭をもたげます。
こんな記事を見つけました。
■ 小児科受診は何歳まで? 115カ国の小児科医に聞いてみた
(2019年10月04日:MedicalTribune)
医療における小児の定義は何歳までなのか。この疑問に答えるべく、オーストラリア・Murdoch Children's Research InstituteのSusan Sawyer氏らによる国際チームが、小児科医療の対象となる上限年齢について、世界の小児科医にオンライン調査を行い、結果をLancet Child Adolesc Health(2019年9月18日オンライン版)に発表した。それによると、各国で上限年齢が大きく異なっていたが、多くの国で理想とされる19歳に届いておらず、世界的に思春期層の医療需要に応えられていないという実態が明らかになった。
◇ 臨床実態の把握を目指し1,300人以上から回答を得る
これまでの研究から、世界の医療システムは思春期層の需要に十分対応していないことが示されている。Sawyer氏は「しかし、小児科医は思春期層に対して年齢に適した医療を提供できる立場にある。思春期医療の訓練を受けている場合は特にそうだ」と指摘。同氏によると、世界保健機関(WHO)は、思春期(adolescents)を10~19歳と定義しているが、小児科で実際に診療している年齢層が各国・地域でどのように異なるのかに関する研究はほとんどないという。
今回の研究では、世界中の小児科医に電子メールで調査への参加を呼びかけ、115カ国の1,372人から回答を得た。各国の小児科関連団体に問い合わせて一義的な回答を得るという方法を取らずに、できるだけ多くの小児科医から回答を得て、臨床における実態と各国・地域内での認識のばらつきについても把握することを試みた。
◇ 南アの11.5歳から米国の19.5歳まで大きなばらつき
小児科医の回答を集計した結果、小児科診療の平均上限年齢について、国により著明な差が認められた。上限が最も低かったのは南アフリカの11.5歳で、同国では思春期は小児科領域に含まれないようであった。一方、最も上限が高かったは米国の19.5歳であった。また、オーストラリアとニュージーランドは医療システムが類似しているにもかかわらず、平均上限年齢はそれぞれ17.8歳、15.6歳と格差が見られた。日本を含む東アジアでは18.1歳であった。高所得国においては、上限年齢が高いことと、思春期層の疾患負担が幼児(5歳未満)に比べて高いことが関連していた。
望ましいとされる上限年齢については、各国の医師の間でも意見の相違が見られた。過去20年間に小児科診療の平均上限年齢は上昇しているが、現在の世界の平均上限年齢は17.4歳(±2.5歳)で、現状では望ましい上限年齢の平均18.7歳(±2.6歳)に追い付いていない(P<0.0001)。上限年齢の経時的上昇の主な理由として、思春期層の健康に対する認識の高まり、専門団体による指導などが挙げられた。Sawyer氏は「上限年齢について、国により著明な差が見られ、残念なことに平均上限年齢が(WHO定義の)19歳であった国はごくわずかであった」と述べている。
◇ 思春期医療の教育は世界的に不十分
今回の調査からは、小児科研修における思春期医療教育の質が、大半の国で不十分であることも分かった。Sawyer氏は「小児科領域は歴史的に幼小児に焦点を当てており、思春期層は軽視されることが多かった。しかし、公衆衛生上の介入と医療の進歩により著明な低下が見られるものの、思春期層の疾患負担は小児より複雑で、以前からあまり変化していない。WHOの推計によると、年間100万人以上の思春期の若者が死亡している」と指摘している。
現在、若者は糖尿病や喘息などの慢性疾患、精神障害、貧血、肥満の増加、対人暴力、下痢性疾患、気管支疾患、薬物・アルコール乱用、性感染症、交通外傷など、小児と成人双方の健康上の負荷に直面している。同氏は「思春期医療研修への投資が最も必要な国は、上限年齢が低い国、思春期人口が多い国、上限年齢がごく最近上昇した国だろう。しかし、世界的に思春期医療研修の質は低く、その向上に対する投資は不可欠である」と述べている。
世界の状況も同様なのですね。
将来を担う若者達が身体の不調を抱えていても、それを診療する科が決まっていないというのは問題です。
とくに思春期はこころの問題が絡んでくるので、専門性も要求されます。
私のようなアラ還世代の小児科医は、子どもの体の病気は教育を受けて経験もありますが、正直申しまして、“こころの問題”は不得手です。
これからの医学教育に反映させる必要があると思います。