徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

日本脳炎ワクチンが足らなくなった理由

2017年06月28日 10時55分47秒 | 小児科診療
 当院でも日本脳炎ワクチンが手に入らず、現在予約を停止しています。
 そしていつも厚生労働省は「全国的には足りているはず」と高みの見物。
 ホント、ワクチン関係ではいつも振り回され、日本の管理体制の甘さにあきれるばかりです。

 さて、今回のワクチン不足の原因は「需要増加&供給減少」という構造で、具体的には下記記事によると2点あるようです;

1.推奨年齢(3歳以降)以外の年齢で希望者が増えた。
 2015年に千葉県で生後11ヶ月児が日本脳炎罹患しました。ワクチン推奨年齢の3歳より小さい子です。しかし実は、日本脳炎ワクチンは生後6ヶ月から接種可能です。推奨年齢まで待っていて罹ってしまっては元も子もない、と知識のある医師・親たちは積極的に低年齢でも受けさせるという動きを取りました。

2.熊本地震の影響で製造量が減った。
 ワクチン製造元の一つ「化血研」の工場が熊本にあり、地震で被害を受けたため出荷量が減ってしまった。

 ワクチン製造量が十分と仮定すれば、あと問題になるのは「偏在」です。
 ワクチン出荷から現場の医療機関まで流通経路をトレースすればわかることですが、なぜやらないのでしょうか?


■ 日本脳炎ワクチン品薄 医療機関、接種数量確保に苦労
毎日新聞2017年5月31日
 蚊が媒介する感染症・日本脳炎を予防するワクチンが、品薄状態になっている。厚生労働省は「全国的に足りている」としているが、安定した数量確保に苦労している医療機関もある。同ワクチンは予防接種法が定める重要性の高い「定期接種」の対象だ。医薬品の在庫や流通の管理が厳格な日本で、なぜこうした事態が起こったのか。【熊谷豪、野田武】
◇ 15年に千葉で発生、契機
 「いつ入荷するか分からない」「注文通り販売できるか分からない」。東京都内のある小児科診療所は、今年初めから日本脳炎ワクチンを注文するたび、医薬品卸売りの担当者から、そう言われているという。在庫がなくなりかけ、接種予約受け付けの中止を考えた時期もある。院長は「患者が殺到して、かかりつけ患者を断ることがなければいいけれど……」と気をもむ。
 品薄になったきっかけの一つは、2015年9月に千葉県で25年ぶりに、生後11カ月の乳児患者が確認されたことと言われる。



 日本脳炎はブタが持つウイルスがヒトに感染して起きるが、感染して抗体を持つブタの割合は西日本に多い。このため近年発生する患者の大半は西日本在住だ。
 それだけに、千葉県での患者発生は関係者にとって驚きだった。しかも国が示す標準的な予防接種スケジュール(初回は3~4歳)を下回る年齢。日本小児科学会員で予防接種に詳しい岡田賢司・福岡看護大教授(小児科)は「従来の流行地域でなく、患者が1歳未満だったこともあり、全国的に対策を取らねばと考えた」と話す。
 同学会は、ブタのウイルス抗体保有率が高い流行地域では、生後6カ月から接種するよう呼び掛けた。その結果、千葉では54市町村のうち47自治体が6カ月での接種を勧めるようになるなど、前倒しが広まった。
 さらに、全国で唯一、40年以上発症例がないことを理由に定期接種の対象外だった北海道でも、本州との往来が増えて感染リスクが高まったとして昨年4月から定期接種が始まった

◇ 熊本地震で製造施設被災 問題抱える供給側
 こうして需要が高まる一方で、供給側には問題があった。
 日本脳炎ワクチンのメーカーは2社しかない。その一つの「化学及(および)血清療法研究所」(化血研、熊本市)は、昨年4月の熊本地震で製造施設が被災して、稼働が2カ月ほど止まった。ワクチン製造には通常1年半かかり、再稼働後の製品が完成するのは来年1月。それまでは在庫の前倒し出荷でしのぐ予定だったが、5月上旬に底を突いてしまったのだ。
 もう1社の「阪大(はんだい)微生物病研究会」(微研、大阪府吹田市)は増産体制を取り、販売元の田辺三菱製薬も地域ごとに必要量を割り当てて、その本数以上を出荷しないようにした。化血研も微研も出荷量を公表していないが、厚労省によると流通量は医療機関への納入量を大きく上回る見通しで、品薄とはいえ大きな問題は起きていないという。
 ただ、医療機関が買い占めなどに走ると地域間で偏在が生じる恐れもあるため、厚労省は今月8日、卸売業者に地域間の在庫融通を求める通知を出した

◇ 厚労省、業界再編を促す 国際競争力強化にらみ
 定期接種対象のワクチンは、対象年齢を迎える子どもの数が把握できるため、計画的に生産しやすい。その分、余剰が少ないために、定期接種以外の需要が一時的に高まると品薄感が生まれやすい面もある。昨年、関西国際空港を中心に麻疹(はしか)患者が集団発生した際も、ワクチン不足が心配された。
 こうした状況を踏まえ、厚労省はワクチンの安定供給を目指した業界再編を目指している。昨年10月には同省対策チームが「競争力や経営基盤の向上のため、統廃合による企業規模の拡大を促す」との提言をまとめた。
 大学の研究所から出発し、化血研や微研のように一般財団法人の形態を取っている小規模メーカーが多いことにも触れ、経営基盤を強化した株式会社に変更するよう促した。これには予防医学の観点からワクチン産業の成長が世界的に見込まれる中、海外のグローバル企業に並ぶ競争力を国内メーカーに持たせたいとの狙いもある。
 化血研では15年、国の承認と異なる方法で血液製剤を長年作っていたことが発覚。厚労省は110日間の業務停止命令を出した上で「本来なら許可取り消しに相当する」として、製造部門を他社に譲渡するよう求めた。化血研は一時、アステラス製薬と交渉をしたが、自主存続の意向が強く、最終的に条件面で折り合えず決裂した。
 一方、微研は今月、ワクチン製造の株式会社「BIKEN」を設立した。同社は田辺三菱製薬の技術協力を受ける予定で「生産システムや管理手法を融合し、生産基盤の強化を加速させる。ワクチンの安定供給に貢献する」とうたっている。


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