小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

成人におけるRSV感染症の重症度

2025年02月14日 06時05分10秒 | 予防接種
RSウイルスによる呼吸器感染症は、乳児が重症化(細気管支炎)して入院してしまう、と認識されてきました。
ところが近年、高齢者にも悪さをすることが分かってきました。
そしてワクチンまで開発されています。

しかしピンとこない方も多いのではないでしょうか?
皆さんご存知のインフルエンザとRSウイルスを比較した記事が目に留まりましたので紹介します。

この解析では、60歳以上でインフルエンザよりハイリスクという結果でした。

<ポイント>
・RSV感染症は入院中だけではなく長期アウトカムにおいてもインフルエンザと同等以上の健康上の脅威がある。
・RSV群はインフルエンザ群と比較して、入院中に機械的人工換気を必要とするリスクが高い。
・院内死亡率はRSV群とインフルエンザ群で同等。
・60歳以上で、RSV群がインフルエンザ群よりも1年以内の院内死亡、再入院、全死亡のリスクが高い。

▢ RSV感染症vs.インフル、重症度と転帰を比較~日本の成人5万7千例
2025/02/14:ケアネット)より一部抜粋(下線は私が引きました);
 RSウイルス(RSV)は小児だけでなく成人にも重大な影響を及ぼすが、成人のRSV感染症の入院患者の重症度や転帰に関する報告は少ない。今回、東京科学大学の井上 紀彦氏らがRSV感染症とインフルエンザの成人入院患者を比較した後ろ向き観察研究の結果、RSV感染症は入院中だけではなく長期アウトカムにおいてもインフルエンザと同等以上の健康上の脅威が示された。Infectious Diseases誌オンライン版2025年2月4日号に掲載。
 本研究では、日本のDPCシステムに基づく358病院の請求データを基に、2010年4月~2022年3月にRSV感染症またはインフルエンザで入院した18歳以上の5万6,980例を対象とした。短期アウトカムは入院中の重症度指標として医療資源(ICU入室、酸素補充、機械的人口換気、体外膜酸素療法)利用率および院内死亡率とし、長期アウトカムは生存者の退院後1年以内の再入院および入院後1年以内の全死亡とした。逆確率重み付けによる調整後、ポアソン回帰を用いてリスクを推定した。
 主な結果は以下のとおり。

RSV群はインフルエンザ群と比較して、入院中に機械的人工換気を必要とするリスクが高かった(9.7% vs.7.0%、リスク比[RR]:1.35、95%信頼区間[CI]:1.08~1.67)。
院内死亡率はRSV群とインフルエンザ群で同等であった(7.5% vs.6.6%、RR:1.05、95%CI:0.82~1.34)。
・RSV群はインフルエンザ群と比較して、生存者の退院後1年以内の再入院リスク(34.0% vs.28.9%、RR:1.19、95%CI:1.07~1.32)および入院後1年以内の全死亡リスク(12.9% vs.10.3%、RR:1.17、95%CI:1.02~1.36)が高かった。
・年齢層別解析では、60歳以上で、RSV群がインフルエンザ群よりも1年以内の院内死亡、再入院、全死亡のリスクが高かった

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 昭和37年4月2日~昭和54年4月... | トップ | 8歳児の6割がスギ花粉症(... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

予防接種」カテゴリの最新記事