小児アレルギー科医の視線

医療・医学関連本の感想やネット情報を書き留めました(本棚2)。

溶連菌性咽頭炎への最良の抗菌薬は?

2016年11月22日 08時02分04秒 | アレルギー性鼻炎
 溶連菌性咽頭炎は、真夏を除いて一年中発生する感染症です。
 「喉が痛い」「気持ち悪くて吐いた」という訴えを聴くと、小児科医はピンときます。
 必ずしも高熱は出ず、咳や鼻水も目立ちません。
 お腹を痛がることもありますが、下痢はしません。

 典型的な診察所見は・・・
 喉がただれたように真っ赤で痛そう(扁桃に白苔が付くことは多くありません)。
 あごのリンパ節を触れると腫れて痛がります。
 お腹をさわっても、感染性胃腸炎のようにフニャフニャの力の入らないお腹ではありません。

 こんな患者さんに喉の検査をすると、ほとんどの例で溶連菌が陽性に出ます。
 陽性者には、こんな説明をしています;

 「風邪の原因の9割はウイルスで残りの1割が細菌です。その細菌類の代表がこの溶連菌です。」
 「溶連菌は細菌ですから“抗菌薬”(=抗生物質)が直接効いてくれるので、今日処方する薬を飲むと1〜2日で症状が治まります。」
 「症状が治まって安心して薬をやめてしまうとぶり返すことや腎臓に合併症が出ることがありますので、処方された分を最後まで飲みきってください。」

 さて、治療に使う抗菌薬は、従来は「ペニシリン系10日間投与」がずっとスタンダードでした。
 しかし近年、セフェム系5日間でも同等の効果が得られることが報告され、普及しつつあります。
 というわけで、まだ喧々諤々の治療法ですが、ここに紹介する論文はたくさんの論文を集めて解析したもの。
 結論から申し上げると、
・症状消失という点では薬剤間で差がない
・耐性菌発生とコストという点ではペニシリン系がまだ有利
 と想定内のものでした。
 一方で重症合併症であるリウマチ熱の発症例がまれになったことから、一部の小児科医から「抗菌薬不要論」も出てきています。
 やはりこの議論、なかなか結論が出ませんね。

■ A群レンサ球菌咽頭炎に最良の抗菌薬は?
ケアネット:2016/10/17
 咽頭スワブでのA群β溶血性レンサ球菌(GABHS)陽性者において、咽頭痛に対する抗菌薬のベネフィットは限られ、抗菌薬が適応となる場合にどの薬剤を選択するのが最良なのかは明らかになっていない。今回、オーストラリア・クイーンズランド大学のMieke L van Driel氏らが19件の無作為化二重盲検比較試験を評価し、GABHSによる扁桃咽頭炎の治療におけるセファロスポリンとマクロライドをペニシリンと比較したところ、症状消失には臨床関連の差が認められなかったことが示された。著者らは、「今回の結果から、コストの低さと耐性のなさを考慮すると、成人・小児ともにペニシリンがまだ第1選択とみなすことができる」と記している。The Cochrane database of systematic reviews誌オンライン版2016年9月11日号に掲載。
 著者らは、症状(痛み・熱)の緩和、罹病期間の短縮、再発の予防、合併症(化膿性の合併症、急性リウマチ熱、レンサ球菌感染後糸球体腎炎)の予防における各抗菌薬の効果比較のエビデンスと、副作用発現率の比較およびレンサ球菌に対する抗菌薬治療のリスク・ベネフィットに関するエビデンスを評価した。
 CENTRAL(2016年第3版)、MEDLINE Ovid(1946年~2016年3月第3週)、EMBASE Elsevier(1974年~2016年3月)、トムソン・ロイターのWeb of Science(2010年~2016年3月)、臨床試験登録を検索し、「臨床的治癒」「臨床的再発」「合併症または有害事象、もしくは両方」のうち1つ以上を報告している無作為化二重盲検比較試験を選択した。
 主な結果は以下のとおり。

・ペニシリンとセファロスポリン(7試験)、ペニシリンとマクロライド(6試験)、ペニシリンとカルバセフェム(3試験)、ペニシリンとスルホンアミドを比較した1試験、クリンダマイシンとアンピシリンを比較した1試験、アジスロマイシンとアモキシシリンを小児で比較した1試験の合計19試験(無作為化された参加者5,839例)を評価した。
・すべての試験で臨床転帰が報告されていたが、無作為化、割り付けの隠蔽化、盲検化に関する報告は十分ではなかった。
・GRADEシステムを用いて評価されたエビデンス全体の質は、intention-to-treat (ITT)分析における「症状消失」では低く、評価可能な参加者における「症状消失」と有害事象では非常に低かった。
症状消失には差があり、セファロスポリンがペニシリンより優れていた(評価可能な患者の症状消失なしのOR:0.51、95%CI:0.27~0.97;number needed to treat for benefit[NNTB] 20、N=5、n=1,660;非常に質の低いエビデンス)。しかし、ITT解析では統計学的に有意ではなかった(OR:0.79、95%CI:0.55~1.12;N=5、n=2,018;質の低いエビデンス)。
臨床的再発については、セファロスポリンがペニシリンと比べて少なかった(OR:0.55、95%CI 0.30~0.99;NNTB 50、N=4、n=1,386;質の低いエビデンス)が、これは成人だけで認められ(OR:0.42、95%CI:0.20~0.88;NNTB 33、N=2、n=770)、NNTBが高かった。
・どのアウトカムにおいても、マクロライドとペニシリンに差はなかった。
・小児における1件の未発表試験において、アモキシシリン10日間投与と比べて、アジスロマイシン単回投与のほうが高い治癒率を認めた(OR:0.29、95%CI:0.11~0.73;NNTB 18、N=1、n=482)が、ITT解析(OR:0.76、95%CI:0.55~1.05; N=1、n=673)や、長期フォローアップ(評価可能な患者の分析でのOR:0.88、95%CI :0.43~1.82、N=1、n=422)では差はなかった。
小児では、アジスロマイシンがアモキシシリンより有害事象が多かった(OR:2.67、95%CI:1.78~3.99;N=1、n=673)。
・ペニシリンと比較してカルバセフェムの治療後の症状消失は、成人と小児全体(ITT解析でのOR:0.70、95%CI:0.49~0.99;NNTB 14、N=3、n=795)、および小児のサブグループ解析(OR:0.57、95%CI:0.33~0.99;NNTB 8、N=1、n=233)では優れていたが、成人のサブグループ解析(OR:0.75、95%CI:0.46~1.22、N=2、n=562)ではそうではなかった。
小児では、マクロライドがペニシリンより有害事象が多かった(OR:2.33、95%CI:1.06~5.15;N=1、n=489)。
・長期合併症が報告されていなかったため、稀ではあるが重大な合併症を避けるために、どの抗菌薬が優れているのかは不明であった


<原著論文>
van Driel ML, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2016 Sep 11.

 当院では、長らくペニシリン系抗菌薬(ワイドシリン)を使用してきましたが、10日間と長く服用すると、開始後7日間頃に5%程度の頻度で薬疹が発症します。
 これを避けるため、数年前にセフェム系5日間コースへ変更しました。
 正確な統計は取っていませんが、薬疹例はほとんど認めなくなり、一方で再燃例は少し目立つようになった印象があります。
 短期間に3回以上反復する例では、家族健診を行ったり、漢方薬を併用したりしています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ダニによるアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法の効果

2016年10月20日 08時10分48秒 | アレルギー性鼻炎
 ダニに対するアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法の治療薬は、2016年10月時点の日本では2種類発売されています。
アシテア®(塩野義製薬)
ミティキュア®(鳥居薬品)

『ミティキュア』と『アシテア』、同じダニアレルギーの減感作療法の薬の違いは?(わかりやすいブログ)

 処方するには一定の資格が必要ですので、どの医療機関でも扱っているわけではありません。
 最低でも数年間毎日使用するという気の長い治療法で、効果が実感できるまでに半年くらいかかることが多いようです。
 当院でも中学生で一人、はじめています。
 その効果に関する最近の報告を紹介します;

■ ダニアレルギーが舌下免疫療法で改善、日本の968人が参加 アレルギー性鼻炎に対する効果を検証
2016.10.20:MEDLEY
ダニはアレルギー性鼻炎の原因(アレルゲン)のひとつです。過敏反応を抑えるため、体をアレルゲンに慣らす治療法が知られています。日本の患者を対象に効果を確かめる研究の結果が報告されました。

◇ ダニアレルギーに対する舌下免疫療法の研究
 アレルギー専門誌『Allergy』に報告された研究を紹介します。この研究では、日本でダニ(チリダニ)によるアレルギー性鼻炎の患者を対象として、舌下免疫療法の効果を調べています。

◇ 舌下免疫療法とは? 
 アレルギーは、異物に対して免疫が過敏に反応することで起こります。花粉症もアレルギーの一種です。治療法のひとつとして、アレルギーを起こす物質(アレルゲン)を体に与え続けることで、免疫を慣らして過敏反応を抑える方法があります。舌の下に入れて溶かすタイプの薬を使う場合は特に「舌下免疫療法」とも呼ばれます。
 ダニによるアレルギー性鼻炎に対しては、日本でも2015年にアシテア®ダニ舌下錠が発売され、舌下免疫療法が行われています。

◇ 日本で968人が研究に参加
 この研究には、ダニによるアレルギー性鼻炎の患者968人が参加しました。参加者はランダムに3グループに分けられました。

・300単位(IR)の薬剤を使うグループ
・500単位(IR)の薬剤を使うグループ
・有効成分を含まない偽薬を使うグループ
 ・・・300単位(IR)、500単位(IR)というのは薬剤の強さを表します。
 52週間の治療が行われ、最後の8週間に症状の重さをスコアで評価して、治療効果を検討しました。

◇ 症状に改善あり
 次の結果が得られました。
 治療期間の最後の8週間におけるAASSは、偽薬群に比べて300IR群と500IR群でともに有意に改善した。
 ほとんどの有害事象は軽度であり、16件の深刻な有害事象が報告されたが、薬剤関連のものはなかった。300単位でも500単位でも、症状のスコアに改善が見られました。薬が原因で起こったと見られる深刻な副作用はありませんでした。

◇ まとめ
 アレルギー性鼻炎は多くの人を悩ませています。免疫をコントロールする方法が進歩することで、くしゃみや鼻水が楽になる人が増えるかもしれません。

<参照文献>
House dust mite sublingual tablet is effective and safe in patients with allergic rhinitis. Allergy. 2016 Jul 29.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

A群レンサ球菌咽頭炎に最良の抗菌薬は?

2016年10月17日 06時00分26秒 | アレルギー性鼻炎
 古くて新しい話題、溶連菌性咽頭炎の治療に関する論文を紹介します。
 従来、ペニシリン系抗菌薬10日間投与がスタンダードでした。
 しかし、別系統のセフェム系抗菌薬5日間でも治療効果は変わらないことが報告され、現在は混在しています。

 当院では長らくペニシリン系抗菌薬で治療してきましたが、約5%に薬疹が出現するため、「ペニシリンアレルギーを作っているのではないか?」との疑問が拭えず、数年前にセフェム系へ変更しました。

 紹介する論文では、ペニシリン系、セフェム系、それともう一つマクロライド系(※)を比較検討し、治療効果に大きな差は認められなかったという内容です。そして、コストの面からペニシリン系が依然として第一選択薬になるだろう、と結論づけています。
 おかしいなあ・・・薬疹の話題が出てこない(^^;)。

※ マクロライド系抗菌薬は、ペニシリン系抗菌薬が副作用や耐性菌で使えないときに選択します。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

卵は早く開始した方がアレルギーになりにくい?

2016年10月03日 07時27分51秒 | アレルギー性鼻炎
 上の子が食物アレルギーやアトピー性皮膚炎だと、弟や妹が生まれたとき、アレルギーが心配で卵やピーナッツなどを食べさせないようにしがちです。
 しかし近年、摂取開始を遅らせる方がむしろ危険であり、早期から摂取させる方が食物アレルギーになる率が低くなると報告されてきました。
 なんだか逆説的でピンときませんよね。
 これは2008年に発表されたLackらによる「二重抗原曝露説」(人体にアレルゲンが入る際、少量の経皮接触ではアレルギー感作が誘導され、多量の経口摂取では免疫寛容が誘導される)以降の流れです。
 教科書やガイドラインも、それに沿ってどんどん書き換えられている最中なのです。
※ ただし、これはあくまでも予防の話であり、すでに食物アレルギーを発症して食べると症状が出る方は除去が基本ですので誤解なきよう(^^;)。

 紹介する論文は近年の論文を集めてメタ解析したものですが、同じ路線の内容です;

■ 乳児期の卵・ピーナッツ摂取でアレルギーのリスク低下/JAMA
2016/10/03:ケアネット
 乳児食として、早期に卵およびピーナッツを導入すると、これらのアレルゲン食品によるアレルギー性疾患のリスクが低減することが、英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのDespo Ierodiakonou氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年9月20日号に掲載された。アレルゲン食品の導入時期が、アレルギー性疾患や自己免疫疾患のリスクに及ぼす影響への関心が高まっている。乳児食のガイドラインは、両親にアレルゲン食品の導入を遅らせることを推奨しなくなっているが、多くの場合、早期の導入を勧めてもおらず、最近の6つのアレルゲン食品の早期導入の無作為化試験(EAT試験)では、いずれの食品でも予防効果は認められていない。

◇ 導入時期の影響をメタ解析で評価
 研究グループは、アレルギー性疾患および自己免疫疾患のリスクに及ぼすアレルゲン食品の導入時期の影響を評価するために、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った(英国食品基準庁の助成による)。
 医学データベース(MEDLINE、EMBASE、Web of Science、CENTRAL、LILACS)を用いて、1946年1月~2016年3月までに報告された文献を検索した。
 生後1年以内の乳児において、アレルゲン食品(牛乳、卵、魚類、甲殻類、ナッツ類[tree nuts]、小麦、ピーナッツ、大豆)の導入時期を検討し、アレルギー性疾患や自己免疫疾患、アレルギー感作との関連について報告した介入試験および観察試験を対象とした。
 主要評価項目は、喘鳴、湿疹、アレルギー性鼻炎、食品アレルギー、アレルギー感作、1型糖尿病、セリアック病、炎症性腸疾患、自己免疫性甲状腺疾患、若年性関節リウマチであった。

◇ エビデンスレベルは低いが、魚類の早期導入が鼻炎を抑制
 146試験の204編の論文が解析に含まれた。介入試験のうち、24件(39論文、1万3,298例)がアレルギー性疾患、5件(6論文、5,623例)は自己免疫疾患に関するものであった。また、観察試験のうち、69件(90論文、14万2,103例)がアレルギー性疾患、48件(69論文、6万3,576例)は自己免疫疾患に関するものだった。
 日本の研究を含む5試験(1,915例)のメタ解析では、乳児食に早期(生後4~6ヵ月時)に卵を導入した乳児は、これより遅い時期に導入した乳児に比べ卵アレルギーのリスクが低いことを示す、確実性が中等度のエビデンス(moderate-certainty evidence)が得られた(率比[RR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.36~0.87、I2=36%、p=0.009)。
 卵アレルギーの発生率が5.4%の集団における絶対リスク減少率は、1,000人当たり24例(95%CI:7~35)であった。
 また、2試験(1,550例)のメタ解析では、早期(生後4~11ヵ月時)にピーナッツを導入した乳児は、これより遅い時期に導入した場合に比べピーナッツアレルギーのリスクが低いことを示す、確実性が中等度のエビデンスが得られた(RR:0.29、95%CI:0.11~0.74、I2=66%、p=0.009)。
 ピーナッツアレルギーの発生率が2.5%の集団における絶対リスク減少率は、1,000人当たり18例(95%CI:6~22)だった。
 エビデンスの確実性は、効果の推定値の不正確性および試験の集団や介入の間接性によって、低下した。卵およびピーナッツの導入時期は、他の食品に対するアレルギーのリスクとは関連しなかった。
 一方、早期の魚類導入のアレルギー感作および鼻炎の低減との関連を示す、確実性が非常に低い~低いエビデンスが確認された。グルテンの導入時期とセリアック病のリスク、アレルゲン食品の導入時期と他のアウトカムは、いずれも関連がないことを示す、確実性の高いエビデンスが得られた。
 著者は、「これらの知見は、各試験の限界との関連を考慮して解釈すべきである」と指摘している。
<原著論文>
Ierodiakonou D, et al. JAMA. 2016;316:1181-1192.

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アレルギー疾患の鍵になるたんぱく質発見〜喘息の特効薬への期待が広がる

2016年09月17日 08時20分48秒 | アレルギー性鼻炎
 大発見!?

■ ぜんそく発症の「鍵」特定 千葉大、治療法確立に期待
2016.9.17:産経新聞
 ぜんそくなどのアレルギー疾患が発症する過程で、鍵となる役割を果たすタンパク質を千葉大の中山俊憲教授(免疫学)らの研究グループが特定し、17日付で米学術雑誌「サイエンス・イムノロジー」(電子版)に発表した。
 中山教授によると、このタンパク質の作用を防ぐ抗体をぜんそくのマウスに投与したところ、症状が治まったことを確認。ヒトへの投与が可能な抗体も大手製薬会社と共同で開発に成功した。
 抗体はぜんそくの治療薬として使われるステロイドに比べ、正常な免疫細胞に与える影響が少なく、重症患者にとって有効な治療法になり得るという。
 ぜんそくは「CD69」という分子を発現した病原性免疫細胞が血管外に出て、気管などに達して炎症を引き起こす。
 中山教授は「10年以内に新たなぜんそく治療法の確立を目指す。他のアレルギー治療にも応用できるだろう」と話す。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ダニの舌下免疫療法は喘息にも有効

2016年09月14日 07時24分35秒 | アレルギー性鼻炎
 スギ花粉の舌下免疫療法に引き続き、2015年にダニ抗原による舌下免疫療法が日本で認可されました。
 しかし、適応は「ダニによるアレルギー性鼻炎」のみ。
 ダニが原因のアレルギーと言えば喘息が頭に浮かびますが、その適応はないのでガッカリした医療関係者は数知れず。

 下記のような報告が増えて、ぜひ喘息にも適応が通る時代が来て欲しい:

■ チリダニ舌下免疫療法の効果をRCTで確認 〜コントロール不良の成人喘息患者対象
2016.05.11:Medical Tribune
 ドイツ・University of RostockのJ. Christian Virchow氏らは,チリダニアレルギーに関連したコントロール不良の成人喘息患者を対象に舌下免疫療法を行う二重盲検ランダム化比較試験(RCT)の結果,舌下免疫療法群ではプラセボ群と比べ,吸入ステロイド(ICS)減量期間中の喘息増悪までの期間が延長したとJAMA(2016; 315: 1715-1725)で報告した。

◇ 喘息増悪リスクに対する影響を検討
 チリダニ(house dust mite)は,アレルゲンであるハウスダストを構成する成分の1つで,喘息患者の約半数がチリダニに感作しており,喘息症状の重症化の原因にもなっている。
 アレルギー疾患の根本治療法としてエビデンスが確立されているのは,舌下免疫療法などの減感作療法のみで,減感作が奏効すれば治療を中止しても長期の便益が期待できるチリダニに対する舌下免疫療法により,アレルギー性鼻炎が改善し,治療薬を減らせることは以前に報告されていたが,喘息増悪リスクに対する影響は不明であった
 今回の研究では,チリダニアレルギーに関連した喘息を有し,ICSやICS配合薬で症状がコントロールできず,アレルギー性鼻炎を合併する成人患者834例(平均年齢33歳,女性48%)を欧州の109施設で登録。それまでの喘息治療からICS(ブデソニド)と気管支拡張薬(サルブタモール)に切り替え,プラセボ群,舌下免疫療法6SQ-HDM群,同12SQ-HDM群にランダム化した。SQ-HDMとは,今回使用されたチリダニ舌下錠を製造・販売するALK社が製品の力価を表すために欧州連合域内で用いている単位である。舌下錠の投与は1日1回,治療期間は登録時期により7〜12カ月であった。
 試験期間後半の3カ月間にまずICSを50%減量し,その後の3カ月間は完全に中止した。主要評価項目は,ICS減量期間中に中等度〜重度の喘息増悪が発現するまでの期間とし,副次評価項目は,喘息症状の悪化,抗原特異的免疫グロブリン(Ig)G4の変化,喘息コントロール質問票と喘息QOL質問票の変化,有害事象とした。

◇ 増悪リスクが約30%相対的に減少
 834例中693例が試験を完遂した。実薬群2群ともプラセボ群と比べ中等度〜重度の喘息増悪リスクが有意に低下した〔6SQ-HDM群:ハザード比(HR)0.72,95%CI 0.52〜0.99,P=0.045,12SQ-HDM群:同0.69,0.50〜0.96,P=0.03,図〕。プラセボ群と比べた実薬群2群における初回増悪の絶対リスク差は,6SQ-HDM群が0.09(95%CI 0.01〜0.15),12SQ-HDM群が0.10(同0.02〜0.16)であった。実薬群2群の間で絶対リスクに有意差は認められなかった。(JAMA 2016; 315: 1715-1725)
 喘息症状の悪化を伴う増悪のリスクは,プラセボ群と比べて6SQ-HDM群でHR 0.72(95%CI 0.49〜1.02,P=0.11)と有意差には至らなかったが,12SQ-HDM群ではHR 0.64(同0.42〜0.96,P=0.03)と有意に低下した。抗原特異的IgG4は,実薬群2群ではプラセボ群と比べて有意に上昇した。一方,喘息コントロール質問票と喘息QOL質問票の変化は,いずれもプラセボ群と実薬群2群で有意差は認められなかった。
 全身アレルギー反応の報告はなく,最も多い有害事象は軽度〜中等度の口内掻痒(6SQ-HDM群13%,12SQ-HDM群20%,プラセボ群3%)で,その他に口内浮腫,咽喉の炎症が見られた。

◇ 減感作療法に新たな可能性
 ICSでコントロール不良のチリダニアレルギーに関連した成人喘息患者に対して,舌下免疫療法が喘息増悪リスクの低下に有用であることをRCTで示したのは今回の研究が初めてで,Virchow氏らは「長期の有効性と安全性を評価するためにさらなる研究が必要である」と述べている。
 米・Johns Hopkins UniversityのRobert A. Wood氏は,同誌の付随論評(2016; 315: 1711-1712)で今回の試験について「重要な患者集団に焦点を当て,極めて妥当な評価項目を用いており,この分野における貴重な貢献である」と評価。減感作療法には依然改良の余地が多くあるため,こうした研究を継続し,個々の患者ごとに最適化された減感作療法を確立していく必要があると指摘している。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

夏の終わりの花粉症

2016年08月31日 06時25分55秒 | アレルギー性鼻炎
 花粉の飛散が夏のイネ科から、秋の雑草系(キク科)へ移行する季節となりました。
 スギ/ヒノキは「風媒花」と呼ばれ、風に乗って花粉が長距離飛びます。一方、ブタクサなどのキク科雑草は「虫媒花」と呼ばれ、虫が花粉を運ぶタイプなので遠くまで花粉が飛ぶことはありません(風が強い日はそれなりですが)。なので、草が生えている場所へ行くと症状がひどくなる傾向があります。小中学生は、登下校が鬼門になります(^^;)。
 わかりやすい記事を見つけましたので紹介します;

■ 「第3の花粉症」夏の終わりに猛威 6人に1人が苦しむブタクサが厄介
2016/8/30:J-cast ヘルスケア
夏の終わりになるとゴホンゴホンと咳(せき)が出始めるアナタ、季節の変わり目の風邪と勘違いしてはいないだろうか。花粉症といえば、2月から4月にかけて猛威を振るうスギやヒノキのイメージが強いが、8月から10月に飛散のピークを迎える「ブタクサ花粉症」の患者が最近増えている。
このブタクサが、地球温暖化によって全世界で猛繁殖しており、今世紀半ばの2050年頃にはブタクサ花粉症の患者は倍増するという研究が、米医学誌「Environmental Health Perspectives」(電子版)の2016年8月25日号に発表された。
ブタクサは、北米原産のキク科の植物で、日本には明治期に入ってきた。「豚しか食べない草」を意味する英語の「ホッグ(豚)ウィード(雑草)」から名づけられた。よく空き地や河川敷、道端に密生し、7月から10月にかけて黄色い小花が集まった房を細長く連ねるので、ひと目見ればすぐわかる「雑草」だ。高さ1メートルほどなので、花粉の飛散距離は数百メートル程度だが、1株で1シーズンに数億個もの花粉を飛ばし、繁殖力は旺盛だ。
欧米では花粉症患者の大半が、ブタクサアレルギーといわれ、原産地の米国では人口の5~15%がブタクサ花粉症だ。欧州でもブタクサの密生地が拡大し、フランスでは2002年に患者は人口の4%だったのに、2014年には13%に急増、被害が深刻になっている。日本では4人に1人がスギやヒノキなどの「春の花粉症」患者だが、6人に1人がブタクサなどの「秋の花粉症」患者で、「第3の花粉症」として注目されている
今回、論文を発表したのは英イーストアングリア大学の研究チーム。それによると、ブタクサの密生地がどんどん拡大しているのに加え、地球温暖化によってブタクサの花粉飛散シーズンが各国で長期化する傾向にあり、現在、欧州全体で約3300万人いるブタクサ花粉症患者が、2050年頃には約7700万人に倍増すると推測。さらに花粉の量も増えるため、症状自体が重くなると警告している。

◇ 女性につらい「吹き出物」「顔のはれ」「ピリピリ痛み」
花粉症の専門サイトをみると、「ブタクサ花粉症は、8月の終わりごろに咳が出始めるのが特徴だが、スギ・ヒノキに比べ、なじみが薄いため、夏風邪をこじらせたと勘違いする人が少なくない」と指摘。そして、次のような症状があるという。

(1)夏の終わりからくしゃみ、目の強いかゆみ、充血が出てくるのは、ほとんどブタクサの影響と思ってよい。目の周りの皮膚に影響を及ぼすため、目がかゆくても絶対にかいていはいけない。
(2)花粉がのどの奥まで侵入するため、咳が止まらなくなりやすい。
(3)ブタクサ花粉症の人は果物系の食物アレルギーを併発しているケースが多いため、メロンやスイカ、キュウリなどウリ科の食べ物に注意する。
(4)特に女性にはうれしくない「吹き出物ができる」「顔が赤くはれる」「ほてる」「ピリピリ痛む」など皮膚の症状が出やすい。

ただ、スギやヒノキと違って、ブタクサは花粉の飛散距離が短いため、密生地に近づかなければ被害は少ない。マスクを常備して、密生地を通る時はすぐに身につけよう。


 こちらも参考にどうぞ;

■ 雑草原因、秋でも花粉症に
毎日新聞2016年9月16日
 春に飛散するスギ花粉で苦しむ日本人は多いが、スギの季節でもないのに目がかゆい、くしゃみや鼻水が出るといった症状があるときは、ほかの樹木や草による花粉症かもしれない。「秋の花粉症」も油断大敵だ。

●スギと似た症状
 「夏から秋にかけてスギ花粉症のような症状が出たら、それは草本(そうほん)花粉による花粉症の可能性がある」と話すのは、日本医科大学大学院の大久保公裕教授(頭頸(とうけい)部感覚器科学)。草本とは、イネ科やキク科などのいわゆる雑草のことで、カモガヤ、ブタクサ、ヨモギによる花粉症がよく知られている。土手、公園、道ばた、ゴルフ場と、どこにでも生えている植物だ。スギと同様に目や鼻にアレルギー症状を起こすほか、イネ科は皮膚のかゆみが出やすいのも特徴という。

●子どもにも発症
 スギやヒノキの花粉は山から数十キロの距離を飛んでくるが、これらの草本植物の花粉は草丈が低いため、数十〜数百メートルの範囲にしか広がらない。「秋の花粉症は範囲が限定的で、症状もスギやヒノキに比べて悪化しにくいため、あまり注目されてこなかった。この時期にアレルギー症状を訴える患者は増えている」と大久保教授は指摘する。
 スギ花粉で症状が出ている人は、ほかのアレルゲンでも症状が出やすくなるという。草本花粉は地面から1メートルほどの高さまでで漂うため、子どもが発症するケースも少なくない。自宅や職場の周辺に生えていなくても、ウオーキング、ランニング、犬の散歩、ハイキングと行動範囲が広がれば、発症のリスクは高くなる。

●川のそば注意を
 自衛策は、イネ科、キク科の草が生えている場所にはなるべく近づかない▽特に風の通り道となる川のそば、土手沿いに住む人は川に面した窓を開けない▽もし草の生えた場所に出かけてムズムズしてきたら、マスクや眼鏡で防ぐ。
 また、秋の花粉症の原因となる植物が近くにないのに症状が出ている人は、夏に増えたダニの死骸やハウスダストによるアレルギーの可能性がある。早めに耳鼻咽喉(いんこう)科を受診して、不快な症状を抑えたい。

 一方、スギ花粉症で苦しむ人にとって気になるのは、来春のスギ花粉の飛散量だ。
 スギ花粉の量は、前年夏の天候に大きく左右される。夏が完全に終わらないと予測は難しいが、ウェザーニューズ社(千葉市)は2017年のスギ、ヒノキ、シラカバ(北海道)の花粉飛散予報を速報ベースで公表している。暑くて晴れの日が多かった東海から西日本は「前年の1・5〜2倍」と予想。関東から東北南部は「前年並みかやや多いくらい」、東北北部から北海道は「前年の1・5倍」。全国的に今年より多めの飛散量になりそうだ。


■ 「夏〜秋の花粉症」(KYOWA KIRIN)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「熱性けいれん7つの疑問に答える」

2016年08月09日 07時02分32秒 | アレルギー性鼻炎
 こんなパンフレットがいつの間にか手元にありました;

■ 診療ガイドラインが19年ぶりに改訂「熱性けいれん7つの疑問に答える」
(NIKKEI Drug Information 2015.08)・・・登録・有料サイトです。

ポイントをおさえたわかりやすい内容なので抜粋・紹介します。
その前に、熱性けいれんの概要は下記でご確認ください;

熱性けいれん(当院HP)
■ 「熱性けいれん診療ガイドライン2015
さて、本題へ。

【疑問1】ジアゼパム座薬(ダイアップ®)が処方される患者とは?
【疑問2】ジアゼパム予防投与は何歳まで続けるべき?
【疑問3】解熱剤投与でけいれんは予防できる?
【疑問4】抗ヒスタミン薬を使用しても大丈夫?
【疑問5】熱性けいれんはてんかんのリスク因子?
【疑問6】座薬挿入の刺激で便が出た!どう対応する?
【疑問7】キャンプに座薬を持って行かせるべき?


解説を読む前に、私がふだん患者さんに説明している内容を記しておきます;

【疑問1】(細かいのでスルー)
【疑問2】5歳まで、年齢が小さいときは2年間を目安。
【疑問3】できない。
【疑問4】けいれん持続時間が伸びるという報告があるので好ましくない。
【疑問5】単純性はリスクにならない。
【疑問6】10分以内で座剤の形が明らかに残っている場合は再挿入、それ以外では再挿入しない。
【疑問7】う〜ん・・・(^^;)。

さて、パンフレットの解答は?

【疑問1】詳しくはガイドラインをご参照。
予防の目的は、患者自身に降りかかる不利益と、家族の不安を解消することが基本。これらを考慮して処方を検討する;
①患者の不利益:後遺症が残る ・・・短いけいれん(単純型)では神経的後遺症は残らないとされ、何回起こしても問題ない(けいれんの際、周囲にぶつかる怪我を除く)。
②家族の不利益:不安、心配、パニック ・・・医療事情(医療機関が遠い)、家族の様子(強度の心配性)などの要素を考慮


【疑問2】「最終発作から1〜2年または4〜5歳まで」
学童期になっても予防投与が継続されているケースが散見されるが、好ましくない。


【疑問3】「発熱時の解熱剤使用が熱性けいれんを予防できるとするエビデンスはない」「熱性けいれんの誘発を心配して解熱剤の使用を控える必要もない」
・・・つまり、解熱剤使用は熱性けいれんの頻度・リスクに影響しないと明言された(画期的!)。

【疑問4】エビデンス的には「根拠は不明確」としながらも、「熱性けいれんの既往がある小児に対しては、発熱性疾患罹患中における鎮静性抗ヒスタミン薬の使用は推奨されない」。熱性けいれんと抗ヒスタミン薬との関連についての情報は、小児科以外では十分浸透していない可能性がある。耳鼻咽喉科や皮膚科で、熱性けいれんの既往がある小児に第1世代の抗ヒスタミン薬が処方されたら、熱性けいれんの既往を医師に伝えているか保護者に確認し、必要であれば薬剤師から医師に伝えるようにしたい。
・・・当地域の当番医では上記のような現象が散見されます、かつ近隣の皮膚科では抗ヒスタミン薬を3〜4種類併用する医師もいて困っています。患者さん、眠いだろうなあ。

【疑問5】短く終わる単純型では一般人口と変わらない。複雑型や家族歴などの危険因子がある場合はリスクが上がる。

【疑問6】ジアゼパム座薬は、挿入後15〜30分ほどで薬効成分が有効濃度域に達する。そのため、
・挿入直後〜15分の間に便と一緒に出てきた場合は、もう一度同じ座薬を入れるか、新しい座薬を入れる。
・挿入後15分以上経過して、座薬の塊が少し出てきても、半分以上が溶けているような状態であれば、ある程度吸収されたと判断できるので、座薬を入れ直す必要はない。
・挿入後30分以上経過していれば、薬はほとんど吸収されているので、入れ直す必要はない。
※ 挿入後30秒〜1分程度肛門をティッシュなどで軽く押さえると、座薬が出てくるのを妨げる。


【疑問7】携帯させる必要がある。
ダイアップ坐剤の融点は50〜55℃。夏の外出時でも、日陰においておけば溶けることはない。これは、アンヒバ座剤(アセトアミノフェン)が34〜39℃で溶けるのと対照的。

・・・園の行事などでは医師も関与しての十分な根回しが必要ですね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新生児期からの保湿ケアが経皮感作を減らすという報告。

2016年06月05日 07時28分34秒 | アレルギー性鼻炎
 近年、俄然注目を浴びている「経皮感作」。
 基礎的な知識として、

・アレルゲンが口から入ると「免疫寛容」、皮膚から入ると「感作」
・新生児期からの保湿ケアにより、アトピー性皮膚炎の発症率が抑えられた(しかし感作率はかわらなかった)

 ですが、どんどん新しい事実が判明中です。
 この報告は、アトピー性皮膚炎の有無にかかわらず、生後2日時点でTEWL(経表皮水分蒸散量)が多かった赤ちゃんは、経皮感作率が高かったというもの。
 視点を変えると、生後からTEWLを低く抑えることにより、将来の食物アレルギーやアトピー性皮膚炎を予防できる可能性がある、ということです;

■ 新生児期の皮膚バリア機能が食物アレルギー発症予測の指標に?
ケアネット:2016/06/01
 食物アレルゲンへの経皮曝露が、食物感作/食物アレルギーを引き起こす可能性がある。アイルランド・コーク大学のMaeve M. Kelleher氏らは、経表皮水分蒸散量(TEWL)を指標とした皮膚バリア機能と食物アレルギーとの関連を調べる出生コホート研究を行い、新生児期の皮膚バリア機能障害が、アトピー性皮膚炎の有無にかかわらず2歳時の食物アレルギー発症を予測することを明らかにした。この結果は経皮感作の概念を支持するもので、TEWLを用いることにより、アレルギーマーチを変化させる介入研究においてアトピー性皮膚炎または食物アレルギーを発症する前の新生児を、生後数日で層別化できる可能性があるという。
Journal of Allergy and Clinical Immunology誌2016年4月号(オンライン版2016年2月26日号)の掲載報告。

<原著論文> Kelleher MM, et al. J Allergy Clin Immunol. 2016;137:1111-1116.


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小児のIgE陽性者の4分の1がアレルギー疾患と縁がない(つまり疑陽性)。

2016年02月21日 06時29分18秒 | アレルギー性鼻炎
 年度末となり、食物アレルギーの連絡票(小学校・保育園・幼稚園のアレルギー疾患管理指導表の類)の更新時期になり、当院でも、書類を携えて来院する患者さんが散見されます。
 以前は“アレルギー検査信仰”ともいうべき、検査結果提出を義務づける園が多く、検査結果と症状は必ずしも一致しないことを説明してもなかなか理解してもらえず苦労しましたが、最近は減ってきました。

 先日、下記の記事が目に止まりました。
 IgE陽性を判断材料に診断を進めると過剰診断に陥る危険性を示した論文です。

■ 小児のIgE感作と疾患の関連 4分の1が疾患を有さず
2015/11/17:ケアネット
 小児は皮膚炎、喘息および鼻炎に罹患することが多いが、それらの有病率は年齢とともに変化する。また、IgE抗体保有と疾患との関連もよくわかっていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のNatalia Ballardini氏らは、感作と疾患との関連を明らかにする目的で、出生コホート研究にて16歳まで追跡された小児を調査した。その結果、特異的IgE抗体は小児期全体における皮膚炎およびアレルギー性疾患の複数罹患と関連していること、また4歳からの喘息および鼻炎と強く関連していたことを報告した。一方で、IgE感作を認める小児の23%が、小児期にいかなる疾患も呈しないことも判明したという。

 対象は、スウェーデンの出生コホート研究BAMSEに登録された小児2,607例であった。
 1~16歳の間6評価時点で、親の報告に基づき皮膚炎、喘息、鼻炎の罹患を確認した。また、4、8、16歳時の採血結果からIgE感作の有無を調査。一般的な食物または吸入アレルゲンに対するアレルゲン特異的IgE≧0.35kUA/Lの場合を感作ありと定義した。
 一般化推定方程式を用い、感作による皮膚炎、喘息、鼻炎および複数罹患のオッズ比を算出した。
 主な結果は以下のとおり。

・16歳までに少なくとも1回の感作が報告された小児は、51%であった。
・感作を受けている小児の約4分の1(23%)が、いかなる疾患も有していなかった。
・潜在的な交絡因子を補正後、感作と次の有意な関連が認められた。
 (1)小児期全体に及ぶ皮膚炎
 (2)1~16歳時の皮膚炎・喘息・鼻炎の複数罹患(オッズ比:5.11、95%信頼区間[CI]:3.99~6.55)
 (3)4~16歳における喘息および鼻炎

(原著論文)Ballardini N, et al. Allergy. 2015 Oct 27.


 不思議に思ったのは、食物アレルギーとの関連に言及されていないこと。
 有意差を持って関連がなかったのか、検討されなかったのか・・・原文を読まないとわかりませんね(^^;)。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする