小児アレルギー科医の視線

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新型コロナの「罹患後症状」〜その1.概要

2024年06月23日 09時06分42秒 | 予防接種
「罹患後症状」と言われてもピンときませんが、
これは従来「新型コロナ後遺症」と呼ばれていたモノです。

呼名が変わった理由は、
新型コロナウイルス感染(COVID-19)後の症状がすべて「後遺症」ではないからです。

COVID-19罹患後に体調が悪いと「後遺症ではないか?」と疑いがち。
しかしたまたまそのタイミングで発症した別の病気が見つかることも現実には多数。

ちょうど、ワクチン接種後の体調不良をすべて
「ワクチンの副反応」
と考えがちなパターンと似ています。

さて、新型コロナ罹患後症状に関しては、
という診療ガイドラインが公表されています。

この項目では、私がポイントと感じた内容を抜粋してみます。

WHOの定義「post COVID-19 condition」
・新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)罹患者に見られる。
・少なくとも2ヶ月以上持続する。
・他の疾患による症状として説明がつかないものである。
・症状には、疲労感・倦怠感、息切れ、思考力や記憶への影響などがある。
・症状は日常生活に影響することもある。
・症状の程度は変動し、症状消失後に再度出現することもある。
・小児には別の定義が当てはまる。

■ 罹患後症状の診療ポイントの一つは、
他の病気が紛れ込んでいないかどうかの「除外診断」である。

■ 罹患後症状の病因・病態は現時点では不明
・・・重篤な急性疾患治療後に見られることがある衰弱・不活動(廃用)(post intensive care syndrome, PICSなど)、COVID-19罹患前からの基礎疾患、さらにパンデミックによる生活の変化による心身への影響などが、罹患後症状の臨床像をより複雑にしている。

■ 罹患後症状の頻度
・・・たくさん報告があり、症状の種類と頻度はバラバラ。

■ 罹患後症状患者の知りたいこと
・治療法はあるのか。
・症状がいつまで続くのか。
・何をすれば改善するのか。
・自分はこの先どうなるのか。

■ 罹患後症状患者への説明
・罹患後症状の経過は個々で異なる。
・罹患後症状に関しては不明な点が多く、標準的な治療法は確立していない。
・時間の経過とともにその大半は改善する。数カ月から半年程度の期間で改善を認めることが多い。
(・再増悪したりなど不安定な経過を辿ることもある)
(・経過中に抑うつなどの二次的な症状が出現する可能性がある)
・運動療法やリハビリテーションが有効である。
・症状が強い場合は安静・休息が重要で、段階的に日常生活に戻していく。

■ 罹患後症状患者への検査
・めまい、ふらつき → Schellong test、簡易Tilt試験、等
・呼吸器症状、倦怠感 → 労作時呼吸回数とSpO2の変化
・罹患歴が明らかな場合、PCRや抗原検査は不要
・過去の感染を診断する目的での抗体検査は推奨されない。
・血液検査(CDC、NHSの提案)⇩


■ 罹患後症状の治療
・標準的な治療法は確立されておらず、対症療法が中心となる。
(例)疼痛 → 鎮痛剤、咳嗽 → 鎮咳薬、喀痰 → 去痰薬
・抗ウイルス薬の罹患後症状への有効性については、現時点では知見は確立していない。
漢方薬の有効性が証明された薬物は定まっていない。
(例)補中益気湯(41)、十全大補湯(48)、人参養栄湯(108)、当帰芍薬散(23)、苓桂朮甘湯(39)など
・ワクチンが罹患後症状発症の予防となるかについては、現時点では明確な知見は得られていない。
運動療法リハビリテーションは有効であるが、一方で、症状が強い場合には、労作により症状が悪化することも報告されている(Post-exertional symptom exacerbation, PESE)。


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