投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2017年 3月11日(土)09時17分6秒
>筆綾丸さん
ありがとうございます。
The Voltaire Society of America というサイトに原文と英訳が掲載されていたので英訳を読んでみましたが、けっこう難しいですね。
「もし神が存在しないなら、それを発明する必要がある」はヴォルテールの思想全体の中で位置づける必要がありますから、若干遠回りにはなりますが、ピーター・ゲイの『自由の科学─ヨーロッパ啓蒙思想の社会史』あたりを読んでみようかなと思っています。
昨日からピーター・ゲイの『神なきユダヤ人─フロイト・無神論・精神分析の誕生』(入江良平訳、みすず書房、1992)に取り組んでいるのですが、なかなか良い本です。
ピーター・ゲイは信頼できますね。
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1918年、フロイトはオスカー・フィスーへの手紙の中で、次のような問いを提出した。「ところで、敬虔な信仰者が誰一人として精神分析を創造しなかったのはなぜでしょう。そのためには完全に神なきユダヤ人を待たなければならなかったのは、どうしてなのでしょうか。」
無信仰を貫いたユダヤ人フロイトが精神分析を生んだのは何故か。〈科学としての精神分析〉に彼が固執したのは、どのような理由からか? 『ワイマール文化』等で知られ、他の追随を許さぬ浩瀚な『フロイト伝』の著者でもあるピーター・ゲイは、フロイト自らが提出し、しかし自身はそこにとどまることはなかった問いかけに、本書で応じた。数多くの文献を渉猟し、ウィリアム・ジェイムズ、ダーウィン、ティリッヒらとの比較も交えつつ、19-20世紀のウィーン社会、当時の宗教vs.科学の論争、ユダヤ人の対応などを著者は再現する。
精神分析生誕をめぐる一大問題に挑戦した、刺戟に満ちた興趣尽きぬ書である。
ウィキペディア日本語版のピーター・ゲイの項目、『ワイマール文化』の脚注に<山口昌男は『本の神話学』-第1章「二十世紀後半の知的起源」で、旧訳版の誤訳の多さを指摘している(中央公論社、現・岩波現代文庫)>とあるのを見て、ちょっと笑ってしまいました。
※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。
条件法現在と仮定法過去が織り成す悩ましい神学の綾 2017/03/10(金) 14:32:59
小太郎さん
https://en.wikipedia.org/wiki/%C3%89p%C3%AEtre_%C3%A0_l'Auteur_du_Livre_des_Trois_Imposteurs
https://en.wikipedia.org/wiki/Mikhail_Bakunin
https://en.wikipedia.org/wiki/%C3%89p%C3%AEtre_%C3%A0_l'Auteur_du_Livre_des_Trois_Imposteurs
https://en.wikipedia.org/wiki/Mikhail_Bakunin
ヴォルテールの言説「もし神が存在しないなら、それを発明する必要がある」(Si Dieu n'existait pas, il faudrait l'inventer.)の背景は知らないのですが、原文は実際とは異なることを述べる条件法現在形だから、含意として、現実には神は存在するから、発明する必要はなく、安心した、と胸を撫で下ろしていることになるのでしょうね。
他方、この言説を反転させたバクーニンの「if God really existed, it would be necessary to abolish Him.」(神が本当に存在するというなら、そいつは破棄(廃止)する必要がある)は、現在の事実に反することを述べる仮定法過去形だから、含意として、現実には神は存在しないから、破棄(廃止)する必要はない、まあ、当然のことだがね、とさもつまらなそうな顔をすることになるのでしょうね。
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Bakunin argued in his book God and the State that "the idea of God implies the abdication of human reason and justice; it is the most decisive negation of human liberty, and necessarily ends in the enslavement of mankind, in theory and practice." Consequently, Bakunin reversed Voltaire's famous aphorism that if God did not exist, it would be necessary to invent Him, writing instead that "if God really existed, it would be necessary to abolish Him.
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フランス革命を挟んで、前者は18世紀の時代精神を、後者は19世紀の時代精神を表していて、鴎外が引用するファイヒンガーの Philosophie des Als-Ob(「かのように」の哲学)は、両者の中間に位置する折衷案的な20世紀の時代精神を表しているのかもしれませんね。とすれば、21世の時代精神はどうなるのか。ゾンビ神学? Goddamn it!
蛇足
大阪の「悪友(わるとも)学園」の某理事長は、マレーシアの北朝鮮大使館の職員と入れ替えても、まったく遜色のない人ですね。
他方、この言説を反転させたバクーニンの「if God really existed, it would be necessary to abolish Him.」(神が本当に存在するというなら、そいつは破棄(廃止)する必要がある)は、現在の事実に反することを述べる仮定法過去形だから、含意として、現実には神は存在しないから、破棄(廃止)する必要はない、まあ、当然のことだがね、とさもつまらなそうな顔をすることになるのでしょうね。
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Bakunin argued in his book God and the State that "the idea of God implies the abdication of human reason and justice; it is the most decisive negation of human liberty, and necessarily ends in the enslavement of mankind, in theory and practice." Consequently, Bakunin reversed Voltaire's famous aphorism that if God did not exist, it would be necessary to invent Him, writing instead that "if God really existed, it would be necessary to abolish Him.
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フランス革命を挟んで、前者は18世紀の時代精神を、後者は19世紀の時代精神を表していて、鴎外が引用するファイヒンガーの Philosophie des Als-Ob(「かのように」の哲学)は、両者の中間に位置する折衷案的な20世紀の時代精神を表しているのかもしれませんね。とすれば、21世の時代精神はどうなるのか。ゾンビ神学? Goddamn it!
蛇足
大阪の「悪友(わるとも)学園」の某理事長は、マレーシアの北朝鮮大使館の職員と入れ替えても、まったく遜色のない人ですね。
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