ひとりでキャンプをする「ソロキャンパー」として知られる芸人のヒロシさんは、2年ほど前から家族が増えて、生活は一変しました。今後の人生設計について、ご自身の考えを話してくれました。(聞き手・道丸摩耶、撮影・中山博敬)
歴史に名を残しても意味がない
――テレビの世界から抜けて、今は好きなように生きている実感がありますか?
いやぁ、ずっときついですね。今は今で、違う種類のきつさが出てきます。目的を見失って、何のためにこれをやってるんだろうと思うときがあるんですよ。どうせ死ぬのになって。そもそも何のために生まれたんだろうと考えたときに、歴史に名を残したって意味はないし、死んでからキャーキャー言われても生きているうちに言ってほしかったってなるし、結局、人類は子孫を残すために生きているのかなって。でも、僕は結婚していないし、するつもりもないし、子孫を残すこともない。となると、あとは自分が好きなことを全部やってしまおうと思うんです。
――結婚しないと決めていらっしゃるんですか。
(相手に)出会えないからね。芸人として売れていた時、「キャー!」「ヒロシさん!」って応援してくれる子たちはいたけど、ステージの上から自分のうちわを持っている子が目に入っても、電話番号を渡すわけにいかないじゃないですか。皆が見ているわけだし。だから、「声をかけてみたいな」と思いながら、「ヒロシです。ヒロシです。ヒロシです。」と名前だけ売り込んで去っていくわけです。その結果、何もないよね。
――芸能人というのはモテると思っていました。すみません……。
芸能人御用達みたいなお店に行ったらモテると思ったけど、そこでもモテないんですよ。僕より有名なタレントさんがいっぱい来てるから。今の時代、こんなことを言うと怒られるかもしれないけど、僕はタレントパワーでモテたかったんです。下っ端の時、売れるとモテ始める先輩をたくさん見てきたので、「いつか俺もなってやる!」と思ってたけど、僕が売れた時は、タレントパワーでモテる時代は終わってました。もうちょっと早く売れていれば、違ったんでしょうかね。
浮気されて終わる
――モテたいけれど、結婚するつもりはないんですね。
まずモテて、お付き合いがあって、結婚があるわけじゃないですか。僕はお付き合いが何なのかが分からない。結局は浮気されて終わるし、しかも浮気された方なのに、毎回、相手にいろいろと言われて結局は、僕が相手に謝って別れる羽目になるんですよ。お付き合いって何なんですかね。別に罰則もないし。そもそも結婚したって、すぐに別れることもあるでしょ。「じゃあ別にしなくてもいいんじゃない?」という考えで生きてきました。結婚は面倒くさいけど、モテたい。昔は夜中に街に出てナンパし続けるなんてこともしてましたけど。
――体力がありますね。
お金はなかったけど、エネルギーはあったからね。今はもう出かけたくない。疲れるから。キャンプの仕事ばかりしているから山から山の移動ばかりで、最近は風呂にもなかなか入らないんですよ。今日は取材だから、ちゃんと入ってきました。久しぶりに服も小奇麗なのにして、髪にドライヤーをかけてワックスもつけて、ひげもそってきました。今日は美しいヒロシです。でも、人前に出る仕事がなくなったら、飯も好き放題食うし、太ったとしても痩せようと思わないでしょうね。たぶん仕事をしていなかったら、ずっと家にいます。
――家にいるのが幸せですか?
売れる前、アルバイト生活をしていた時に、「バイト行きたくねえな」とそのままバイトを辞めたことがあります。でも、1週間たつと暇になってくるんですよ。そうすると、バイトしたくなってくる。不思議ですよね。家にいるのは好きだけど、暇だと何かしたくなる。
2匹の保護猫を迎えて生活が変わった
――家には、猫がいるとか。
2匹います。2年前かな、保護猫のオス「あつし」を飼うことになって、1年後にメス「さくら」も増えました。魚を飼った経験はありましたが、猫は初めてでした。昔から猫好きだったんです。けれども心配性だから飼えなくて。もし、いなくなった時の喪失感が怖くて。だから我慢してきたんですけど、いろいろなことが重なり保護猫の活動をしている団体を見に行って、一緒に生活をすることに決めました。
――猫を飼って生活は変わりましたか?
変わりましたね。僕はテレビのナレーションの仕事をたまにやっていましたが、自分が飼うまで、「かわいいワンちゃんですね」って台本に書いてあるのが全然分からなかったんですよ。「犬でいいでしょ!」って。「ワンちゃん」「猫ちゃん」って言うのにすごく抵抗がありましたね。それなのに今ではうちの猫ちゃん……、ほら、もう猫ちゃんって言っちゃってます。
災害があった時、避難所に犬や猫を連れていけないという話も、今までは仕方ないことだと思ってたんですけど、今は「絶対に一緒に避難したい」と思います。やっぱり家族ですよね。そんな思いが強いから、あつしやさくらに何かあったら……。それも承知で飼ったんですけど、きついでしょうね。僕が先に死にたいです。僕が先に死ぬなら、誰か信頼できる人にお金を預けて、あつし、さくらのお世話をしてもらいたいです。って自分で言っておきながら、無理ですね。信頼できる人がいないので。
――猫と一緒にいると、寂しくないですか。
確かに猫を飼ってからは、ひとりという感じはしないです。ひとりの夜って、何かむなしいときがあるでしょ? 僕はひとりが好きなくせに、昔はそれがむなしくなる夜がたびたびあったんです。そういう感覚がなくなったのは、年をとったせいもあるかもしれないけど、たぶん猫ちゃんのおかげだと思います。
バンドで売れたい
――芸人、キャンプと2度のブレイクを経験されました。今後の目標はありますか?
僕はまだテレビに憧れがあった時代に芸人としてかすって、インターネットの時代が来たらユーチューブのチャンネルの認知度が高くなって、両方を経験できた。運がよかったのかな? あとは死ぬまでどう生きるかなんですけど、もう一つくらい大きなことをするとしたら、昔から好きなバンドかなって。
――ベース担当ですよね。
はい。今52歳ですけど、悪あがきして最後にバンドで売れて、日本武道館とか大きな会場でたくさんの人の前に立ってみたい気持ちがあります。
あとは、動物たちです。具体的にどうしたらいいかはまだ思い浮かばないですが、キャンプで山に行くと、犬や猫が捨てられていたという話を聞きます。コロナ禍の時に飼ったペットを捨てる人もいるらしいです。そういう犬や猫をどうにかしたいと思うんだけど、どうすればいいか分からない。今は、うちの猫を譲ってくれた団体に餌を送ったりしています。犬や猫が普通に生きられるように支援したいです。
猫としゃべりたい
――老後の楽しみはありますか。
子どももいないので、お金を残したって仕方ない。それなら全部、自分のために使い切って死にたいよね。自分の本には、「全財産を払って、ベッドの周りに女の人たちに来てもらって死んでいきたい」って書いたんだけど、それが駄目なら、精巧で普通にしゃべれる人型ロボットができていたら買いたいね。話し相手だけじゃなくて介護もやってくれる機能があって……。
――ロボットは実現しなくても、猫ちゃんはいてくれるのではないでしょうか。
それならしゃべりたいですよ、猫ちゃんたちと。今は一方的に、僕がしゃべってますから。向こうからもしゃべりかけてくるんですが、遊んでほしいのか、ごはんが欲しいのか、分からない。ごはんかなと思ってあげると食わないし。遊んであげようとすると無視されますね。鳴き声から何を求めているか翻訳するアプリとかあるけど、全然違うことを言ってると思うんですよ。夕方なのに、「おはよう」とか訳されますからね。誰かもっと正確な翻訳機を開発してくれないかな。
――そうやって楽しく生きていければいいということですね。
いや、楽しく生きていける自信はないです。すみません。だって、戦争が始まったらどうしようとか考えちゃいますし。シェルターを掘ろうと考えたこともあったけど、僕とあつし、さくらがシェルターで過ごしたとして、いつかは外に出ないといけないでしょう? 出て誰もいなかったらどうしようとか、そんな想像ばかりしちゃいます。
この先どうなるかは自分でも分からないけど、これまでの常識みたいなものが崩れていってる時代だと実感します。僕は昭和生まれだから、「人生とはこういうものだ」という考えを強く持って生きてきたけど、今は柔軟さが必要なんじゃないかな、と思います。どんなことが起きても対応できる心構えだけは持っておきたいです。なかなか難しいんですけどね。
ヒロシ 1972年生まれ、熊本県出身。芸人として「ヒロシです。」のフレーズで始まる自虐ネタで大ブレイク。2015年からユーチューブ「ヒロシちゃんねる」を配信。チャンネル登録者は111万人を突破(24年10月時点)した。年内に書籍を発売予定。キャンプ番組「ヒロシのぼっちキャンプ」(BS-TBS、水曜夜10時~)や「ヒロシのひとりキャンプのすすめ」(熊本朝日放送、木曜深夜0時15分~)などに出演中。その他の情報は公式HP「 ヒロシ・コーポレーション 」で。
感想;
ペットの存在は大きいですね。
何がブレイクするかわからないですね。
わかることは、今目の前のやること、やりたいことをやることなのでしょうね。
それが未来に花咲くと信じて。
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