平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「坂の上の雲」第2話「青雲」~何者でもなかった真之と子規は「軍人」と「文芸」の道を歩む決意をする

2024年10月06日 | 大河ドラマ・時代劇
『坂の上の雲』第2話「青雲(前・後編)」を見た。

 少年時代から青年時代に。
 秋山真之(本木雅弘)たちは自分の進路について考え始める。

 国家草創期の選ばれた青年たちの願いは次の言葉に集約される。
『朝ニアッテハ太政大臣、野ニアッテハ国会議長』
 しかし、真之たちは自分がそうなれないことに気づき始める。

 正岡子規(香川照之)は哲学・文学青年だった。
 しかし当時の価値観では──
『戯作小説のたぐいの世界に入るということは、官吏軍人学者といった世界を
 貴としとするこの当時にあっては生娘が遊里に身をしずめるような勇気が要った』
                            文庫版1巻195ページ
 そんな中、子規は真之と話をしてこう決意する。
「あしもな、淳さん、松山を出てくるときにはゆくゆくは太政大臣になろうとおもうたが、
 哲学に関心をもつにおよんで人間の急務はそのところにないようにおもえてきた。
 どうもあしにはよくわからんが、人間というのは蟹がこうらに似せて穴を掘るがように
 おのれの生まれつき背負っている器量どおりの穴をふかぶかと掘っていくしかないものじゃと
 おもえてきた」
 真之はこう答える。
「升(のぼ)さんのこうらは文芸じゃな」
 そして
「富貴なにごとかあらん。功名なにごとかあらん」
「立身なにものぞ」
 ……………………………………………………………

 では真之はどうか?
 真之はこのまま大学に入って官吏や学者になっても二流の官吏・学者にしかなれないと
 自己分析している。
 理由は「根気がない」からだ。「要領がよすぎる」からだ。
 真之は学問や学者についてこう考えている。
・学問は根気の積み重ねである。
・学問の世界で一流になれるのは根気と積み重ねとするどい直感力を持った学者だけである。
 これができないから真之は学者に向かないと考えている。
 そして自分は軍人に向いていると無意識に思っている。

 軍人に向いている理由を真之は言語化できないでいるが、
 相談を受けた兄・好古(阿部寛)はこう見ている。
『好古はこの弟のことを、単に要領がいい男だとはみていない。
 思慮が深いくせに頭の回転が早いという、およそ相反する性能が同一人物の中に同居している。
 そのうえ体の中をどう屈折してとびだしてくるのか、ふしぎな直感力があること知っていた。
(軍人にいい)
 と、好古はおもった』  文庫版1巻205ページ。

 子規も真之もしっかり自己分析して自分の道を決めている。
 自分と真摯に向き合っている。
 これに対し、普通の人は何となく就職して、安全な道を選んで生きていくって感じですかね?
 この違いは大きい。

 こうして真之と子規の、何者でもない、モラトリアムの青年期は終わった。
 これからは社会に所属する大人の世界に入っていく。


※追記
 人生の岐路で迷う真之と子規と対照的なのは好古だ。
 好古は家族を養うため、学問をするため、陸軍士官学校に入った。
 士官学校は給料がもらえて学費も無料なのだ。
 人生の岐路で好古は考えたり、迷ったりすることはなかった。
 現状を踏まえてより良く生きるにはそうするしかなかった。

 軍人の道に入ってからも好古は迷うことがなかった。
 真之たちのように「人間としてどうあるべきか?」と考えることなく、
「陸軍騎兵中尉秋山好古はどうあるべきか?」を考えて来た。

 好古は言う。
「おれは、単純であろうと思っている」

「人生や国家を複雑に考えていくことも大事だが、それは他人にまかせる。
 おれはそういう世界におらず、すでに軍人の道をえらんでしまっている。
 軍人というのは、おのれの兵を強くしていざ戦いの場合、この国家を勝たしめるのが職分だ」

「だからいかにすれば勝つかということを考えていく。
 その一点だけを考えるのがおれの人生だ。
 それ以外のことは余事であり、余事というものを考えたりやったりすれば、
 思慮がそのぶんだけ曇り、みだれる」

 実にシンプルでストイックで潔い生き方ですね。
 常人にこれはなかなかできない。


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