平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

官僚たちの夏 第8話

2009年09月08日 | 職業ドラマ
★「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される」

 夏目漱石の言葉がまさに当てはまる今回。
 論理(智)の玉木(船越英一郎)と片山(高橋克典)。
 情の風越(佐藤浩市)、鮎川(高橋克実)、庭野(堺雅人)。

 風越たちは、国際化の流れの中で苦しむ石炭やコンピューター産業の人間に情を移し、彼らを守るために戦う。
 熱意と思いをもって難局を共に切り抜けようとする。
 一方、玉木たちは効率を重んじて彼らを斬り捨てようとする。
 エネルギーは石炭から石油に移行しているし、国内コンピューター産業が育つのを待つよりは輸入した方が速いという訳だ。
 作品中ではこんなせりふもあった。
 「論理の正しさだけでは国は引っ張っていけない」
 「情に流されていては行政などやっていけない」

★智と情の対立は現在にもありますね。
 小泉構造改革はまさに<智>。
 効率重視で派遣社員を認め、机の上の数字だけで母子加算などの社会保障を斬り捨てる。
 彼らにはグローバル化の中で企業が戦って行くには派遣社員は仕方がないとし、国の借金・赤字財政を立て直すためには社会保障のカットは仕方がないという考えがある。
 派遣社員や母子家庭の痛みなどを聞いていてはやっていけないという思いがある。

 一方、<情>の部分は今回圧勝した民主党。
 母子家庭などの痛みを感じ、カットされた社会保障費をもとに戻そうとする。
 自民党から民主党への政権交代は、このドラマの玉木から風越への次官交代に似ている。

★さて、この<智>と<情>の対立。どちらが正しいか?
 ドラマでは風越が勝利し<情>が正しいとしたようだが、実は両方正しい。
 時代の要請の中で<智>が正しかったり、<情>が正しかったりするだけだ。
 反動ということもある。
 振り子のようにオモリが<智>に振れすぎれば今度は<情>に戻る。
 これは右と左も同じ。
 <右の思想>が大きく振れれば今度は<左の思想>に戻る。
 これが人の世、人の歴史。

 僕は個人的には風越のように<情>を大切にしたいと思いますけどね。
 日本にはアメリカのような<自由な競争><格差社会><自己責任社会>は向いていない。
 みんなが等しく豊かというのが日本人だと思うから。

★あとは池内総理(北大路欣也)が玉木に言った言葉がなかなか説得力がある。
 「効率を重視して日本に何が残る?」
 確かに効率を重視して国内コンピューター産業を斬り捨てていたら、コンピューターの部分だけ外国に頼らざるを得なくなる。
 資源は物理的にないのだから仕方ないとして、技術の部分は国内で何とか出来るようにするのが将来の日本の発展に繋がる。
 国内産業の発展を待つことは時間が掛かり、まわり道になるかもしれないが最終的にはプラスになる。
 これは農業・漁業も同じ。
 外国に頼ってこれらを斬り捨てていたら、もし外国から入ってこなくなった時、日本は食料パニックに陥る。

 以上、この作品はいろいろなことを考えさせてくれる作品ですね。
 今我々に何が必要かを問いかけている。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 天地人 第36回「史上最大の... | トップ | 深夜特急 賽は踊る »

コメントを投稿

職業ドラマ」カテゴリの最新記事