「美濃には海がない。行って見るべきか?」
「行かれるがよろしいかと」
「申したな、この帰蝶に」
「尾張にお行きなさいませ」
「十兵衛が申すのじゃ、是非もなかろう」
見事なやりとり!
もし、ここで帰蝶が「わたし、尾張なんかに行きたくない! 十兵衛、お願い!」などと叫んだら3流のシナリオだ。
もし、ここで帰蝶が「尾張に行くべきか? わたしの嫁ぐ男はどのような男であった?」などと問うたら、凡庸なシナリオだ。
ここは『海』を題材にして、尾張に嫁ぐことの是非を確認した今回のやりとりが正解。
「美濃には海がない」は前回、利政(本木雅弘)が言っていたことだったし、
同じことを言うことで、帰蝶が利政と問題意識を共有していることがわかる。
こんな聡明な帰蝶に対し、兄・高政(伊藤英明)はどうなのか?
高政は帰蝶が嫁ぐこと(=美濃と尾張の同盟)のリスクを考えている。
すなわち「今川を敵にまわしたくない」という思いだ。
同時に高政の主張の背景には、
「妹・帰蝶の不憫」
「父親へのコンプレックス」
「美濃の正当な統治者=土岐家」
という思いがある。
ここには『海』や『国を富ませること』や『民』の視点がない。
高政が何かあると、すぐに母・深芳野 (南果歩)の所を訪ねるのもなあ……。
自分の出自を確認したいんだろうけど、異論があるなら直接、父親にぶつければいいのに。
利政への異論はすべて光秀(長谷川博己)経由。
そして、土岐頼芸( 尾美としのり)の威を借りようとする。
う~ん、これではダメだよね。
一方、信長(染谷将太)。
信長には『海』『国を富ませること』『民』の視点がある。
海に漁に出て、獲った魚を切り分けて、民に一文で売り、市で売れと言う。
利政が聞いたら「信長やるな」と大喜びするエピソードであろう。
息子としても、高政より信長を評価する。
利政・高政・帰蝶・信長の関係の描き方、上手いですね。
こうした関係がしっかり押さえられているから、光秀もスムーズに信長に仕えることができる。
そして駒(門脇麦)。
「あたしよりも帰蝶様をお見送りしたかったのではありませんか?」
見送るという行為で光秀の気持ちに気づいてしまった。
普通は大切に思う女性を見送る方が気持ちとして深い。
だが、人は時として思いとは反対のことをするもの。
見送らない方が深い場合がある。
見送ればつらいし、未練が残る。
見送られた帰蝶も同じだろう。
だから、ここは見送りをせず、距離を取るのが正解。
光秀が駒を峠まで送ろうとしたのは、もしかして代替え行為?
帰蝶でやれなかったことを駒でやろうとしている?
これまた人情の機微を上手く描きましたね。
さすがベテラン脚本家!
今回の演出は大原拓さんだったので、光秀と駒の別れのシーンでロングショットが使われていました。
「行かれるがよろしいかと」
「申したな、この帰蝶に」
「尾張にお行きなさいませ」
「十兵衛が申すのじゃ、是非もなかろう」
見事なやりとり!
もし、ここで帰蝶が「わたし、尾張なんかに行きたくない! 十兵衛、お願い!」などと叫んだら3流のシナリオだ。
もし、ここで帰蝶が「尾張に行くべきか? わたしの嫁ぐ男はどのような男であった?」などと問うたら、凡庸なシナリオだ。
ここは『海』を題材にして、尾張に嫁ぐことの是非を確認した今回のやりとりが正解。
「美濃には海がない」は前回、利政(本木雅弘)が言っていたことだったし、
同じことを言うことで、帰蝶が利政と問題意識を共有していることがわかる。
こんな聡明な帰蝶に対し、兄・高政(伊藤英明)はどうなのか?
高政は帰蝶が嫁ぐこと(=美濃と尾張の同盟)のリスクを考えている。
すなわち「今川を敵にまわしたくない」という思いだ。
同時に高政の主張の背景には、
「妹・帰蝶の不憫」
「父親へのコンプレックス」
「美濃の正当な統治者=土岐家」
という思いがある。
ここには『海』や『国を富ませること』や『民』の視点がない。
高政が何かあると、すぐに母・深芳野 (南果歩)の所を訪ねるのもなあ……。
自分の出自を確認したいんだろうけど、異論があるなら直接、父親にぶつければいいのに。
利政への異論はすべて光秀(長谷川博己)経由。
そして、土岐頼芸( 尾美としのり)の威を借りようとする。
う~ん、これではダメだよね。
一方、信長(染谷将太)。
信長には『海』『国を富ませること』『民』の視点がある。
海に漁に出て、獲った魚を切り分けて、民に一文で売り、市で売れと言う。
利政が聞いたら「信長やるな」と大喜びするエピソードであろう。
息子としても、高政より信長を評価する。
利政・高政・帰蝶・信長の関係の描き方、上手いですね。
こうした関係がしっかり押さえられているから、光秀もスムーズに信長に仕えることができる。
そして駒(門脇麦)。
「あたしよりも帰蝶様をお見送りしたかったのではありませんか?」
見送るという行為で光秀の気持ちに気づいてしまった。
普通は大切に思う女性を見送る方が気持ちとして深い。
だが、人は時として思いとは反対のことをするもの。
見送らない方が深い場合がある。
見送ればつらいし、未練が残る。
見送られた帰蝶も同じだろう。
だから、ここは見送りをせず、距離を取るのが正解。
光秀が駒を峠まで送ろうとしたのは、もしかして代替え行為?
帰蝶でやれなかったことを駒でやろうとしている?
これまた人情の機微を上手く描きましたね。
さすがベテラン脚本家!
今回の演出は大原拓さんだったので、光秀と駒の別れのシーンでロングショットが使われていました。
鈍感な男が自分でも意識していないような思いを、行動の解釈を通して見抜いてしまうのが女性の鋭さ。
前回気になっていた「身分の壁」が安全弁になっているかに見えた三角関係、今回は全面展開しました。
まず、帰蝶と駒との間でストレートなやりとりがありました。
帰蝶は、光秀が尾張偵察に出向いた時点で「自分は振られた」と自覚し、駒に「困る(私に遠慮する)ことはない」と言います。
しかし、駒は駒でおっしゃるとおりの経緯で光秀の帰蝶に対する思いを指摘します。
「そうやもしれぬ」という光秀の答えは精一杯誠実なもので、おそらく光秀自身その時まで帰蝶に対する思いは意識していなかったと思います。
私はアニメ「トラップ一家物語」(映画「サウンド・オブ・ミュージック」と同じ題材だがより史実に近いと思われる)で、トラップ男爵の婚約者だったイヴォンヌ姫がヒロインマリアに対するトラップ男爵の思いを指摘した場面を思い出しました。
「トラップ一家物語」ではそこでトラップ男爵とイヴォンヌ姫との婚約は解消し、やがて子どもたちが取り持つ縁でマリアと結ばれてハッピーエンドでしたが、本作の駒はどうなるのでしょうね。
これだけのイベントがあると、もはや駒は「恋人」としては終わったように見えます。
だとすると、今後本作での彼女の役割はどうなるのか。
他方、道三と高政との間の板挟み問題については、光秀は堂々と切り抜けましたが、その結果光秀と道三、土岐頼芸、高政との関係が明確化されました。
もはや第3話で見られた光秀と高政との友情関係は終焉でしょう。
斉藤家将来の悲劇への方向は固まったようです。
恋人二人が同時に去り、友情も終わる。
そろそろ「ラッキーマン」時代の終焉でしょうか。
光秀が民の視点で物が見れるのは野盗達と不毛な争いを何とか打開しようと日々奔走したのが大きいですね。
それにしても、十兵衛の視野の広さや先を見据えた考えを理解できない高政は凡庸ですな。
それに旧遺物に過ぎない頼芸にすがる時点で高政は無能ですな。
逆に無能だと思った頼芸が十兵衛の話を聞いて、納得して一旦退いたのは強かで目敏いですね。
駒との別れは切ないですが、彼女はこの物語の数少ない癒しでしたね。
そして、彼女と帰蝶との別れは十兵衛にとって、新たな戦いの始まりですな。
いつもありがとうございます。
>鈍感な男が自分でも意識していないような思いを、行動の解釈を通して見抜いてしまうのが女性の鋭さ。
おおっ、さらに深い考察ですね。
なるほど~、光秀は駒に言われて自分の気持ちに気づいたんですね。
光秀は政治まわりに関しては洞察力に優れていますが、女性まわりはほんと何も見ていませんよね。
僕は「トラップ物語」は見ていないのですが、「サウンド・オブ・ミュージック」はDVDを購入していて何度も観ています。
「サウンド・オブ・ミュージック」でもトラップ大佐と伯爵夫人の別れがありますが、帰蝶といい、伯爵夫人といい、引き際は見事ですね。
駒も諦めがついたという感じでしょうか。
次週からは、僕がファンの木村文乃さんが煕子役で出て来ますから、楽しみです。
>光秀と高政との友情関係は終焉
そうなるんですね。
人生には別れがつきものですが、今回はさまざまな別れがありましたね。
いつもありがとうございます。
>頼芸が十兵衛の話を聞いて、納得して一旦退いたのは強かで目敏いですね。
ここ、僕も注目しました。
今回はあまりにも書くことが多かったので省略しました。
この時の頼芸は半分くらい光秀の言ったことに納得したような表情でしたね。
とは言え、頼芸のメインの思いは「今は利政に立ち向かう時ではない」という認識。
頼芸は信長がたわけで自滅してくれるのを待っているかのようです。
最終的には今川と結ぶことを考えているのかもしれません。
一方、こんな頼芸と比べて、高政は直情的ですね。
熱血漢で待つことができない。
こんなふうでは頼芸に利用されそうですね。
したたかさ、ずるさは今川義元にも言えて、家康の父を尾張攻めの先方にしようとしている。
自分は陰に隠れて、若い奴らを利用する、
これがオトナなんですよね。