本の感想を語りながら蔦重(横浜流星)に別れを告げる瀬川(小芝風花)。
本の内容は足抜けする花魁の話だったが、
「この筋じゃ誰も幸せにならない」
蔦重もそれを認めると、
「バカらしくって面白かったって言ってるんだよ」
「このバカらしい話を重三が勧めてくれたことを、わっちは忘れはしないよ」
上手い作劇ですね。
オモテ向きは本の内容の話をしているのに、ふたりは哀しい別れ話をしている。
蔦重が足抜けの提案をしてくれたことは、バカらしかったけど夢を見られた。
蔦重が足抜けしようと言ってくれたことが、うれしくて一生忘れない。
こう語る瀬川の思いがせつない。
瀬川が蔦重と逃げることをあきらめた理由は──
・小田信之助(井之脇海)とうつせみ(小野花梨)の現実を見たこと。
何もないふたりが行き着く先は悲惨。
人別はなく、必然的に食い扶持もない。
それに加えて吉原の追っ手から追われる生活。
・『瀬川』という名跡を背負う重荷。
瀬川はこう諭される。
「人生をガラリと変えることがあるのを示すのが『瀬川』の務め」
瀬川が千両で身請けされれば、次の『瀬川』を目指す花魁が出て来る。
『瀬川』は吉原の女郎たちに希望を与える存在なのだ。
同時に、黄表紙に出て来るような女になったら『瀬川』の名が廃る。
自分を捨て吉原のために生きる決心をした。
『瀬川』を演じきることにした。
立派な心意気だが、同時にこれでよかったのか、とも思ってしまう。
とはいえ、これが吉原に生きる女郎の限界。
心意気を示してプライドを持って生きるしかない。
……………………………………………
前回はカッコイイ親父さんたちだったが、今回は忘八ぶりを描いた。
吉原の負の部分を徹底的に描いた。
次々と客を取らされる女郎たち。
中にはとんでもない要求をしてくる客もいる。
吉原は時間制なので回数は何回でもいいらしい。
だから、
「客を取れば取るほど命を削る」
「年季明けまで瀬川にこんなことをさせる気か?」
男との駆け落ちはもっての他。
そんな中、足抜けはできなくても好きな男が客として来てくれれば嬉しい。
だから、
「マブがいなければ女郎は地獄だ」
前回は市中の陰険さ・偽善を描き、今回は吉原の負の部分を徹底的に描き、
厚みのある作品になって来ましたね。
単なる『ビジネス大河』ではなくなって来ました。
ラストは唐変木・蔦重が自分の気持ちに気づいて瀬川に言った言葉。
「行くなよ。頼むから行かねえで! 俺がおまえを幸せにしてえの。だから行かねえでくれ」
「てめえの気持ちに気づくまで二十年かかったんだぞ。心変わりなんかできねえよ」
本の内容は足抜けする花魁の話だったが、
「この筋じゃ誰も幸せにならない」
蔦重もそれを認めると、
「バカらしくって面白かったって言ってるんだよ」
「このバカらしい話を重三が勧めてくれたことを、わっちは忘れはしないよ」
上手い作劇ですね。
オモテ向きは本の内容の話をしているのに、ふたりは哀しい別れ話をしている。
蔦重が足抜けの提案をしてくれたことは、バカらしかったけど夢を見られた。
蔦重が足抜けしようと言ってくれたことが、うれしくて一生忘れない。
こう語る瀬川の思いがせつない。
瀬川が蔦重と逃げることをあきらめた理由は──
・小田信之助(井之脇海)とうつせみ(小野花梨)の現実を見たこと。
何もないふたりが行き着く先は悲惨。
人別はなく、必然的に食い扶持もない。
それに加えて吉原の追っ手から追われる生活。
・『瀬川』という名跡を背負う重荷。
瀬川はこう諭される。
「人生をガラリと変えることがあるのを示すのが『瀬川』の務め」
瀬川が千両で身請けされれば、次の『瀬川』を目指す花魁が出て来る。
『瀬川』は吉原の女郎たちに希望を与える存在なのだ。
同時に、黄表紙に出て来るような女になったら『瀬川』の名が廃る。
自分を捨て吉原のために生きる決心をした。
『瀬川』を演じきることにした。
立派な心意気だが、同時にこれでよかったのか、とも思ってしまう。
とはいえ、これが吉原に生きる女郎の限界。
心意気を示してプライドを持って生きるしかない。
……………………………………………
前回はカッコイイ親父さんたちだったが、今回は忘八ぶりを描いた。
吉原の負の部分を徹底的に描いた。
次々と客を取らされる女郎たち。
中にはとんでもない要求をしてくる客もいる。
吉原は時間制なので回数は何回でもいいらしい。
だから、
「客を取れば取るほど命を削る」
「年季明けまで瀬川にこんなことをさせる気か?」
男との駆け落ちはもっての他。
そんな中、足抜けはできなくても好きな男が客として来てくれれば嬉しい。
だから、
「マブがいなければ女郎は地獄だ」
前回は市中の陰険さ・偽善を描き、今回は吉原の負の部分を徹底的に描き、
厚みのある作品になって来ましたね。
単なる『ビジネス大河』ではなくなって来ました。
ラストは唐変木・蔦重が自分の気持ちに気づいて瀬川に言った言葉。
「行くなよ。頼むから行かねえで! 俺がおまえを幸せにしてえの。だから行かねえでくれ」
「てめえの気持ちに気づくまで二十年かかったんだぞ。心変わりなんかできねえよ」
まず、市中の本屋たちとの戦い、今回は一旦お休み。
今回は吉原の現実、そして瀬川との恋愛パートの落着。
>蔦重が足抜けしようと言ってくれたことが、うれしくて一生忘れない。
切なくもきれいな「終わらせ方」でした。
まず、重三郎が前回九郎助稲荷から罵倒されていた「鈍感さ」から、一旦自分の気持ちに気づいたこと。
しかし、重三郎と瀬川とが暴挙に及ぶ前に現実を受け入れて破滅せずに済んだこと。
このことも、二つの要素があってこそ。
一つは、重三郎・瀬川組に先立って、信之助・うつせみ組があたかも「身代わり」のようにして「足抜き」の現実を示してくれたこと。もう一つには
>「客を取れば取るほど命を削る」「年季明けまで瀬川にこんなことをさせる気か?」
私は、松葉屋夫妻は意外に「優しい」と思います。
彼らは瀬川の「マブ」が重三郎であることをはなから見抜いていました―男女の機微に対する吉原者の敏感さは隆慶一郎氏の吉原もの作品でも描かれていました―が、暴力的に対応するのではなく、重三郎を説得しようとしていたようです。
そのために敢えて瀬川を「ヘビーローテーション」にした上で、客を取っている姿を重三郎に見せつける。
お陰で、瀬川も重三郎も、共に「現実」を思い知り、受け入れることができました。
信之助・うつせみ組の方が気になりますが、想像したほど悲惨な結果にならなさそう。
「吉原は女郎を殺しはしない」とのことですが、どの程度の折檻があるのでしょうか。
まあ、客を取らされまくるのでしょうが。
信之助はこれまでと同様に「客」としてうつせみに会うことはできるのでしょうか。
しかし信之助は「へたれ侍」。
吉原の追っ手相手に抜刀するものの簡単にボコられるし、「痛い」から腹を切ることもできない。
井之脇海さんは、「義母と娘のブルース」という作品ではヒロインの彼氏―後に夫―として結構「格好良い」役でしたが(笑)。