『銀河英雄伝説 黎明編』の序章・銀河系史概略には、銀河帝国の創始者ルドルフがいかにして「独裁者」になったかが書かれている。
「閉塞した時代の状況に窒息するような思いを味わっていた銀河連邦の市民たちは、この鋭気に富んだ新しい英雄を、歓呼とともに迎えた。
ルドルフは、いわば濃霧のたちこめる世界に登場した輝ける超新星であったのだ」
「ルドルフの登場は、民衆が根本的に、自主的な思考とそれにともなう責任よりも、命令と従属とそれにともなう責任免除のほうを好むという、歴史上の顕著な例証である。
民主政治においては失政は不適格な為政者を選んだ民衆自身の失政だが、専制政治においてはそうではない。
民衆は自己反省より、気楽かる無責任な為政者の悪口を言える境遇を好むものだ」
「強力な政府を。強力な指導者を。社会に秩序と活力を」
・閉塞した時代に強い指導者を求める心
・自分で考えることの放棄。誰かに思考を委ねること
これが「独裁者」を誕生させる土壌である。
「民衆が根本的に、自主的な思考とそれにともなう責任よりも、命令と従属とそれにともなう責任免除のほうを好む」というのは『奴隷の自由』と言われているエピソードを思い出させる。
奴隷解放されたアメリカの奴隷は急に自由を与えられて、自分が何をしていいか、わからず、不安になり、結局、奴隷の境遇に戻っていった。
完全な自由って不安なんですよね。
だから何かに身を委ねた方が楽。
身を委ねるものは、会社とか宗教とか、いろいろあるが、一番大きなものは「国家」。
自分は「御国のために働いているんだ」「御国のために死ぬんだ」と思えれば、惨めな人生も無意味な死も克服できる。
さあ、これらを踏まえて、僕たちはどう生きていく?
『銀河英雄伝説』田中芳樹・著は、すぐれた政治学・歴史学のテキストでもある。
これからも折にふれて書いていきます。
「閉塞した時代の状況に窒息するような思いを味わっていた銀河連邦の市民たちは、この鋭気に富んだ新しい英雄を、歓呼とともに迎えた。
ルドルフは、いわば濃霧のたちこめる世界に登場した輝ける超新星であったのだ」
「ルドルフの登場は、民衆が根本的に、自主的な思考とそれにともなう責任よりも、命令と従属とそれにともなう責任免除のほうを好むという、歴史上の顕著な例証である。
民主政治においては失政は不適格な為政者を選んだ民衆自身の失政だが、専制政治においてはそうではない。
民衆は自己反省より、気楽かる無責任な為政者の悪口を言える境遇を好むものだ」
「強力な政府を。強力な指導者を。社会に秩序と活力を」
・閉塞した時代に強い指導者を求める心
・自分で考えることの放棄。誰かに思考を委ねること
これが「独裁者」を誕生させる土壌である。
「民衆が根本的に、自主的な思考とそれにともなう責任よりも、命令と従属とそれにともなう責任免除のほうを好む」というのは『奴隷の自由』と言われているエピソードを思い出させる。
奴隷解放されたアメリカの奴隷は急に自由を与えられて、自分が何をしていいか、わからず、不安になり、結局、奴隷の境遇に戻っていった。
完全な自由って不安なんですよね。
だから何かに身を委ねた方が楽。
身を委ねるものは、会社とか宗教とか、いろいろあるが、一番大きなものは「国家」。
自分は「御国のために働いているんだ」「御国のために死ぬんだ」と思えれば、惨めな人生も無意味な死も克服できる。
さあ、これらを踏まえて、僕たちはどう生きていく?
『銀河英雄伝説』田中芳樹・著は、すぐれた政治学・歴史学のテキストでもある。
これからも折にふれて書いていきます。
その理由はたくさんあり、
①「戦略の天才のラインハルトと戦術の天才ヤン・ウェンリーの対比」……片方は《銀河を手にれる》、一方は建前ではあるけれど《事態を悪化させずに年金生活を送れればいい》
②銀河帝国側と自由惑星同盟の変遷」……それぞれの側で魅力ある登場人物が、ラインハルトとヤンの周囲で尽力する
③戦術的面白さ
④思想的面白さ
⑤声優陣の豪華さ
さて、「ルドルフの登場は…」の言葉は、政に真理で、確かに人々は多少の苦労は受け入れるが、責任などの精神的苦痛は避けたがる(精神的に楽な方が良い)という傾向がありますね。(私もそうです)
ヤンの言葉で私が心に残っているのは
「(ラインハルトのような)優れた君主政と腐敗した民主政治、どちらかを選ぶなら、腐敗した民主政治だ」(←正確な言い回しではありません)
ですね。
その理由を聞いて、非常に感心した記憶があります。(理由は敢えて書きません)
あとは、
「政治の腐敗とは、政治家が賄賂をとることじゃない。それは個人の腐敗であるにすぎない。政治家が賄賂をとってもそれを批判することが出来ない状態を、政治の腐敗というんだ」
これも納得です。
私も、『銀河英雄伝説』について語りたいことがたくさんあるのですが、コウジさんに譲ります。期待しています。
今後を楽しみにしております。
>・閉塞した時代に強い指導者を求める心
>・自分で考えることの放棄。誰かに思考を委ねること
E・フロムの『自由からの逃走』を思わせます。
さらには、「独裁者はいかにして誕生するか?」という点に関しては、プラトンの『国家』篇第8~9巻がやはり古典ですね。
二千数百年前のポリスについての話ですが、20世紀、否21世紀の世界についてもリアリティーがあります。
いつもありがとうございます。
英さんも「銀英伝」ファンだったのですね。
>「(ラインハルトのような)優れた君主政と腐敗した民主政治、どちらかを選ぶなら、腐敗した民主政治だ」
僕もうろ覚えですが、「君主制は即断即決で、民主制は議会の承認など、さまざまな手続きを取らねばならず時間がかかる」みたいな言葉を覚えていて、なるほど、と思ったことがあります。
権力者にしてみれば議会の議論とか承認は面倒くさくてしょうがないんですよね。
現在議論されている『緊急事態条項』は「議会の承認を得なくても政策を実行できる」というもの。
だから僕は反対なんですよね。
>「政治家が賄賂をとってもそれを批判することが出来ない状態を、政治の腐敗というんだ」
僕もこれを覚えています。
現在の日本はこの状態のような気がします。
マスコミは弱い者は徹底して叩きますが、報復が来そうな所は批判を控え、曖昧にしている。
『銀英伝』に書かれていることは、結構、僕の中で血肉化されています。
あと、ヤンの「事態を悪化させずに年金生活を送れればいい」という生き方、好きです!
いつもありがとうございます。
TEPOさんに触発されて書いてみました。
E・フロムの『自由からの逃走』
プラトンの『国家』
僕は読んだことがないのですが、プラトンの時代から同じことが論じられているんですね。
僕は今、国家とは何か? を考えてみたいと思っているので、機会を見つけて『国家』を読んでみます。
>『銀英伝』に書かれていることは、結構、僕の中で血肉化されています。
私は、せいぜい皮か爪あたりですね。
全開の私のコメントですが、補足させていただくと、ヤンが君主制(君主政)を否定した理由は、「その君主がいかに優れて高潔な人物であっても、世襲制であるので、次、あるいはその後の皇帝が愚劣な人格とか拙劣な才だった場合でも、民衆は選ぶことができない。
民主制の場合は、一応、政権を選択できる可能性があるからだ」
というような、説明をしていました。
私は、新作アニメ、原作を知りませんので、出典はすべて旧作アニメです。
49話:ユリアンとの会話
「ローエングラム公(皇帝即位前のラインハルト)を倒すことは、同盟にとっては有益だろう」
だが、「人類全体にとってはどうか。帝国の民衆にとっては明らかにマイナスだ。強力な改革の指導者を失い、悪くすれば内乱だ。民衆はまたその犠牲になる」
ヤンはラインハルトが「最良の」専制指導者であることを認めています。
他方、当時の同盟政府は、現代日本における先々代首相を思わせるようなトリューニヒトのもとで、ほぼ最悪の堕落を示していることも認めています。
51話:シェーンコップとの会話
ヤンは「最悪の民主政治でも最良の専制政治に優ると思っている」
その理由は、ほぼ英さんが参照されたとおりかと思います。
だからヤンは「トリューニヒトのためにラインハルトと戦う」
74話:フレデリカ、ユリアンとの会話
専制は変革を劇的に進めるには効率的な体制であり、民主主義は迂遠なもの。
ラインハルトは理想の専制君主になりつつある。
民主主義は力を持った者の自制による体制である。
バーミリオン会戦の時、ヤンは「政府の命令がなければ、ラインハルトを倒すことができた。しかし、彼を殺したくなかった」
最も輝かしい名君を自分の手で消し去ることに恐怖を覚えており、「政府の命令を口実に逃避したのかもしれない」とまで言う。
68話:ビュコックの言葉
「ヤンが敗北するとしたら、それはラインハルトのためではなく、ヤン自身の理想へのこだわりによってだ」
「バーミリオン会戦の時、ヤンは政府の停戦命令を無視すべきだったのだ」
このビュコックの言葉は、ヤンを愛した多くの人々(そして多くの読者・視聴者)に共通する思いだったと思います。
ヤンに「ルドルフ」になって欲しくて再三再四ヤンをけしかけたシェーンコップは無論のこと、74話のユリアンも然り。
しかし、「自身の理想へのこだわり」によって「ルドルフ」の道を拒絶したのがヤンでした。
教えていただきありがとうございます。
ヤンはラインハルトを専制君主として認めていて、ラインハルトの治政は有用だと考えていた。
問題なのは、暗愚な人間が専制君主になった時ですよね。
船の舵取りを間違えれば、船が漂流し沈没してしまう。
僕は
・絶対君主制や独裁制は効率的だが、判断をひとりの人間が担うため間違う可能性が大きい。
・共和制・民主制は非効率だが、皆で議論する分、間違えることが少ない。
と理解していました。
やはりヤンは柔軟です。
いずれにしても、ひとりの人間が国の運命を担うのは危ういですよね。
プーチンしかり。
政治家で公明正大、無私な人間など、ほとんどいませんし。
英さんといい、TEPOさんといい、どうしてこんなに『銀英伝』に詳しいんですか!笑
49話・51話はまさに英さんが書かれていたこと。
74話の『専制は変革を劇的に進めるには効率的な体制であり、民主主義は迂遠なもの』は僕が理解していた所です。
その後の『「自身の理想へのこだわり」によって「ルドルフ」の道を拒絶したのがヤンでした』というのは僕が完全に抜けていた所です。
深いですね。
「ルドルフ」の道はヤンの体質的に合わないものであったのかもしれませんね。
LOGH(レジェンド・オブ・ギャラクティック・ヒーローズ)のネタとなれば、ほんの一言でも、口を挟みますね。
もっとも、めぼしいネタはほかの皆さんにほとんど言われてしまいましたので、ちょっと搦め手からのコメントです。
2000年~2005年くらいの、インターネット創世記的な時代にも、LOGHのファンサイトはありました。
ただ、ファンを自称しながら、愛国的ネトウヨ的なことをおっしゃって、T中さんを中傷するような面倒くさいサイトもありましたね。
その中でも面白かったのは
「イゼルローン攻略は卑怯な便衣兵の戦法だ。自由惑星同盟の作戦は、日中戦争時に中国が盛んにやっていた民間人になりすます便衣兵戦法と同じだ。つまり、ローゼンリッターは敵国の軍服を着ていたからだ。そういえば、T中Y樹は中国人風のペンネームを使っていた時期があった、やはりあいつは中国に毒されている。LOGHは傑作なだけに残念だ」
みたいな主張でしたね。
一時期賛同者もあったようですが、こういったサイトは、いつの間にか消えました。
そもそも、舞台は36世紀の未来ですし、銀河帝国は自由惑星同盟を独立国として認めていなかったので敵「国」の軍服を着るのは卑怯、という便衣兵の概念がそもそも成立しないのではないかという疑問もあるんですけど。
まあ、愛国的な人からすれば、そんな細かいことはどうでもいいんでしょうね。
お久しぶりです。
田中芳樹先生は歴史や戦史の泰斗ですから、イゼルローン攻略の元ネタは「便衣兵戦法」なのかもしれませんね。
というか、そんなことだけで作品を否定してしまうネトウヨさんって愚かですよね。
彼らは「三国志」のゲームをしたり、「キングダム」を見たりしないのでしょうか?
あるいはヤンは国家より個人を優先する「リベラル思想」の持ち主なのですが、彼らはそこをどう思っているんでしょうね。
それと、岡田斗司夫氏がYouTubeで語っていましたが、40代50代は『銀英伝』、30代は『ゴーマニズム宣言』で政治や社会を学んだんだそうです。
なるほど、そういうことなのか、とちょっと納得しました。