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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「光る君へ」 第39回「とだえぬ絆」~きっとみんなうまくいくよ。惟規の楽天的で、あらがわない人生

2024年10月14日 | 大河ドラマ・時代劇
『みやこには恋しき人のあまたあれば
 なほこのたびはいかむとぞ思ふ』

「恋しき人」には恋愛以外の意味もあるのだろう。
 つまり大好きな人たち。
 姉上、父上、賢子(南紗良)、いと(信川清順)、乙丸(矢部太郎)……。
 惟規(高杉真宙)にはたくさんの好きな人がいた。
 まわりの人間も惟規のことが大好きだった。
 この性格は、いとが愛情を注いだ結果だろう。
 子供の頃の「愛情の貯金」は大切だ。

「きっとみんなうまくいくよ」
 惟規は楽天家であった。
 その基本姿勢は「なるようになる」
 がんばったり、抗おうとしたりしない。
 出世も姉と道長(柄本佑)のおかげで何となく出世してしまった。

 唯一、固執したのは斎院の中将(小坂菜緒)だろうか?
 多くを語らなかったが、斎院の中将の心変わりは痛手を負った様子。

 やわらかで軽快な生き方だったと思う。
 大好きな人がいっぱいで幸せだったと思う。
 
 そんな惟規と対照的なのが、同じく亡くなった伊周(三浦翔平)。
「俺は奪われ尽くして死ぬのか……!」
 最期まで権力と栄華と過去に固執し、憎しみの中で死んでいった。
「あの世で栄華を極めなさいませ」
 弟の隆家(竜星涼)のこの言葉が救いであったかもしれない。

 惟規の死は、まひろ・藤式部(吉高由里子)と娘・賢子の絆を結んだ。
 激しく泣くまひろに肩を添える賢子。
 賢子は母の人間らしさ、弱さを知った。
 哀しさがふたりを繋いだ。
 ……………………………

 敦康親王(片岡千之助)は完全に彰子(見上愛)のことが好きなようだ。
 彰子を見つめる姿はまさに『源氏物語』の桐壺に想いを寄せる光源氏。
 これを見た道長はまひろに
「敦康親王様はおまえの物語にかぶれすぎておられる」
 まひろはそんなことないといなすが、
 物語の主人公と自分を重ね合わせるのはしばしばあること。
 道長も『源氏物語』のエピソードに自分を見ているに違いない。
 まひろの物語はそれだけ力を持っている。

 敦康の気持ちに彰子がまったく気づいていない所が面白い。
 敦康にかけた言葉が、
「立派な帝におなりあそばすために精進なさいませ」

 一方、道長は敦康排除の動きに。
「俺の目の黒いうちに敦成が帝になる所を見たいものだ」
 さて、次回はそれで波瀾の様子。
 予告では彰子が激怒していた。


※追記
 為時(岸谷五朗)は賢子の父が道長であることを知らなかった!
 宣孝(佐々木蔵之介)はそれを受け入れていたことも知らなかった!
 何とも鈍い父上。
 このことを儀式の場で道長に伝えようとして目で合図を送ったり、
 謁見の場で惟規が道長に言い出すのではないかと心配したり、
 表情だけで笑いをつくってしまう岸谷五朗さんの芝居が素晴しい。

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れいわ新選組、沖縄1区の候補を取り下げる~さあ、次は共産党のターンだ。

2024年10月12日 | れいわ新選組
 れいわ新選組が沖縄一区の候補者を取り下げた。
 さあ、次は共産党のターンだ。

・東京14区の候補者を取り下げるか?

・沖縄4区の立憲の候補者を取り下げるよう立憲に提案するか?

 特に沖縄4区の立憲の候補者・金城徹氏は「南西シフト」を認めている人物だ。
「南西シフト」とは南西諸島(大隅諸島、吐噶喇列島、奄美群島、沖縄諸島、先島諸島)とミサイル配備を認める立場。
 戦争が始まれば、ミサイルが配備されているこれらの島々は攻撃を受ける。
 一方、れいわの山川ひとし氏はこれに反対する立場。
 共産党は金城徹支持でいいのかね?
 
「辺野古基地建設反対」というワンイシューで繋がった「オール沖縄」。
 でも辺野古だけの問題でいいのかね?
「南西シフト」や「沖縄経済」などの問題は、オール沖縄のテーマに入っていない。
 これを主張しているのが、れいわの候補・山川ひとし氏だ。
 共産党はこれをどう考えるのかね?

 おまけに金城氏は「有印私文書偽造」を疑われている人物だ。
 共産党はこれをどう考えるのかね?
 …………………………………………………

 れいわの支持者は怒っている。
 今まで選挙区にれいわの候補者がいなかった場合、共産党の候補に入れていたが、これからは入れないと言っている。
 僕も迷っている。
 特に僕の選挙区の立憲の候補には失望しているから、今回は共産党の候補に入れようと思っていた。
 でも白紙投票はもったいないしな……。
 比例はもちろんれいわに入れるけど。

 共産党は他者の誠意や痛みがわかる政党であってほしい。
 でも無理かな?
 結局は党利党略。
 それが政治の世界だというのなら、きれいごとを言うのはやめてほしい。
 でも立憲には物わかりがいいんだよな。

 最後にXに流れて来た、れいわ支持者のポストを貼っておきます。

『沖縄1区、4区に対して、れいわは、きちんと説明しましたよ。
 あの狂乱の様なポストをした共産党議員達、関係者の方々は、ポストしないのですか?
 沖縄1区、4区も含めて、説明して欲しいです。共産党さん。
 だんまりですか?
 あんなに大騒ぎしていたのにねー
 で、4区の件では立憲さんも!!』

『ウチは引いたぞ
 4区のことはどうせ傍観だろ?
 結局、政党の力関係の大小じゃないか
 なにがオール沖縄?
 なにがリベラル?
 なにが市民派?
 笑わせてくれますよ。
 結局小さきところがいじめられる構図じゃない。
 全力で45%獲りにいくぞ!』

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沖縄1区問題~れいわ支持者としては理不尽を感じるんだよね

2024年10月10日 | れいわ新選組
 沖縄1区の候補者をめぐる、れいわ新選組と共産党の対立。
 れいわ支持者としては複雑だ。
 できれば両者はケンカしてほしくない。

 れいわが共産党・赤嶺政賢氏の所に候補者を立てた理由はこうだ。

①東京14区に共産党が候補者を立てたこと
 ここは候補者調整で立憲民主党も候補者を立てていない選挙区。
 つまり最初に理不尽なことをして来たのは共産党なんだよなぁ。
 特に候補者のくしぶち万里さんは、れいわの共同代表。
 共産党の赤嶺さんのようにれいわにとって大切な候補者で、ぜひとも当選させなければならない。
 
②沖縄4区の問題
 当初オール沖縄で4区は、れいわ新選組の山川ひとし氏が候補者になっていたが、
 立憲は金城徹氏を擁立。
 共産党はこれに対し、異議を申し立てず立憲に従った。
 金城氏が4区の候補者に決まった経緯の議事録は公開されず完全にブラックボックス。
 これでれいわはオール沖縄から実質、離脱。
 共産さん、応援して下さいよ。
 特に、立憲が立てて来た金城氏は有印私文書偽造で問題が指摘されている人物ですよ。

③沖縄1区に候補者を立てたのは、れいわの得票数が沖縄で一番多い選挙区だから。
 これに加えて候補者の久保田みどりさんは推薦するに値する優秀な方だから。
 ……………………………………………

 2021年の衆議院選挙。
 れいわ新選組は、野党共闘に協力して「4割の候補者」を下ろした。
 結果、衆議院では予算会議での質問をさせてもらえない状況に。
 野党共闘の条件であった「消費税5%」も、立憲民主党は唱えなくなった。

 だとしたら、れいわ新選組は自らの党勢を拡大していくしかない。
 れいわは立憲の幹部の所に候補者を立てたが、これの意図する所は
『もはや真剣に戦う気のない既存の野党に任せておけない』
『自民党でもなく立憲民主党でもない第三極にれいわがなること』だ。

 右からも左からも嫌われている、れいわ新選組。
 今回は正念場だ。
 このまま政界の異端児として葬り去られるのか?
 理解を得て拡大するのか?
 
 現在の国会議員の数は8人。
 2019年に山本太郎がひとりで立ち上げて、支援組織や企業がないまま、ここまで育て上げた。
 目指すのは、予算委員会で質問できて独自で法案を出せる議席の獲得だ。

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裏金議員非公認で安倍支持者、発狂! ちなみにれいわ新選組は野党共闘に協力している

2024年10月08日 | れいわ新選組
 石破首相が裏金議員に対し「非公認」「比例名簿登録なし」を決めた。

 

 石破首相、これでいいと思う。
 自分のやりたいことをやればいい。

 自民党の論理に従って国民の支持率を下げ、ダメ内閣で終わるか?
 自分のやりたいことをやって自民党内部の反発を買って、倒閣となるか?
 後者の方が絶対に悔いが残らない。

 後者は旧安倍派の落選を呼び、力を弱めるという効果もある。
 反石破勢力の議員がいなくなれば、石破政権の基盤は強くなる。
 裏金議員の非公認で国民の支持も得られるだろうし、一石二鳥ではないか。

 ネトウヨさん、というか安倍支持者はこれに発狂!
 安倍晋三氏の肝いりで議員になった杉田水脈氏などは比例単独当選だから、
 比例登録がなければ当選はむずかしい。
 杉田さん、離党して日本保守党などから立候補したらどう?
 ……………………………………………

 野党は候補者調整をして、これらの裏金議員を落としなよ。
 でも、できないだろうな……。
 こうなることはわかっていたのに、今頃になって調整を始めている。
 その責任の筆頭は野党第一党の立憲民主党!
 今まで何をやってたんだよ!
 こういう所がお貴族様なんだよ!

 ちなみに、れいわ新選組は裏金議員の所にふたりの候補者を立てている(10月8日現在)。
・埼玉13区 三ッ林裕巳(裏金議員)←高井たかし幹事長
・愛知15区 根本幸典(裏金議員)←つじ恵さん

 埼玉13区も愛知15区も、高井さん、つじさんの地盤だから立候補は当然のこと。
 その他の裏金議員の所には候補者を立てていない。
 つまり野党共闘の裏金議員落選に協力しているわけだ。

 だから立憲支持者の方、れいわ新選組が野党共闘に非協力的だと批判するのはやめて下さいね。
 候補者調整をおこなって、ぜひ裏金議員を落選させて下さい。

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「光る君へ」 第38回「まぶしき闇」~権力を持つことで生じる闇。呆然とする道長と涙するまひろ。

2024年10月07日 | 大河ドラマ・時代劇
「いかなる時も我々を信頼して下さる帝であってほしい。それは敦成様だ。
 家の繁栄のために言っているのではないぞ。
 なすべきは揺るぎなき力を持って民のため良き政をおこなうことだ」

 道長(柄本佑)は敦康親王(渡邉櫂)が帝だと自分の地位を揺るがす者が現れて、
 世が乱れると考えている。

 新たな懸念もあった。
 仲睦まじい彰子(見上愛)と敦康。
 この関係は、まさに『源氏物語』の藤壺と光源氏ではないか。
 今のままだと藤壺と光源氏のように彰子と敦康は密通してしまうかもしれない。
 だから敦康をすぐに元服させ、藤壺から追い出す必要があった。

 悩みながらも非情な決断を下さなければならない道長。
 そんな道長に伊周(三浦翔平)は──
「何もかもおまえのせいだー!」
 直接、呪詛されてしまう。
 伊周は呪詛を重ねて消耗し、頭がおかしくなっている。

・誰かを排除すること。
・誰かの恨みを買うこと。
 権力を持つとはそういうことなのだ。
 私欲ではなく、すべては民のため帝のためと考えていても、それは免れない。
 不満な者は必ず出て来る。
 いい人ではたちまち政敵からしてやられてしまう。

 伊周に憎しみを向けられて呆然とする道長。
 これに涙するまひろ・藤式部(吉高由里子)。
 憎しみを向けられるような存在に道長をしてしまったのは、他ならぬまひろなのだ。
 ふたりは、民のため世のためにそれぞれの役割を果たそうと誓い合った。
 ………………………………………………

 まひろも作家として上りつめた結果、周囲の人を失うことになった。
・娘の賢子(梨里花)。
・ききょう・清少納言(ファーストサマーウィカ)。
 あくまで現状の話で、関係は今後変わるかもしれないが、
 何かを得れば何かを失う。
 それが世の常だ。

 そんな中、彰子の女房・宮の宣旨(小林きな子)の言葉が胸にしみる。
「(働くのは)生きるためであろう?」
「今日もよく働いた。はやく休もう」

 世のため、民のため、帝のため、中宮様のため。
 これらを取っ払った所にある働く真実。
 すべては生きるため。
 人生はこれくらいシンプルであった方がいいのかもしれない。

 逃げた雀の話をした子供の頃のまひろと三郎のような姿がシンプルで幸せなのかもしれない。


※追記
 書くことの意味については、和泉式部(泉里香)が思い出させてくれた。
「書くことでおのれの悲しみを救うことができる」
「書くことで命を生き継ぐことができる」

※追記
 和泉式部はたくましい。
 藤壺に入ると、たちまち頼通(大野遥斗)に色目を使い始めた。
 迷うまひろとは対照的に、彼女は現実を楽しんでいる。

※追記
 清少納言は過去に生きているが、辛辣さは失っていない。
 まひろに会って、
「光る君の物語に引き込まれました」
「まひろさまは根がお暗い」笑
「光る君のしつこいいやらしさにあきれ果てました」笑
「男のうつけぶりを笑い飛ばしています」
 ここまでは毒舌も混じった作品論・作家論だが、この後がストレートパンチ!
 中宮・定子を否定する存在として、
「わたしは腹を立てておりますのよ、まひろ様に」
「源氏の物語を恨んでおりますの」
 怒りと恨みをぶつけた。

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「坂の上の雲」第2話「青雲」~何者でもなかった真之と子規は「軍人」と「文芸」の道を歩む決意をする

2024年10月06日 | 大河ドラマ・時代劇
『坂の上の雲』第2話「青雲(前・後編)」を見た。

 少年時代から青年時代に。
 秋山真之(本木雅弘)たちは自分の進路について考え始める。

 国家草創期の選ばれた青年たちの願いは次の言葉に集約される。
『朝ニアッテハ太政大臣、野ニアッテハ国会議長』
 しかし、真之たちは自分がそうなれないことに気づき始める。

 正岡子規(香川照之)は哲学・文学青年だった。
 しかし当時の価値観では──
『戯作小説のたぐいの世界に入るということは、官吏軍人学者といった世界を
 貴としとするこの当時にあっては生娘が遊里に身をしずめるような勇気が要った』
                            文庫版1巻195ページ
 そんな中、子規は真之と話をしてこう決意する。
「あしもな、淳さん、松山を出てくるときにはゆくゆくは太政大臣になろうとおもうたが、
 哲学に関心をもつにおよんで人間の急務はそのところにないようにおもえてきた。
 どうもあしにはよくわからんが、人間というのは蟹がこうらに似せて穴を掘るがように
 おのれの生まれつき背負っている器量どおりの穴をふかぶかと掘っていくしかないものじゃと
 おもえてきた」
 真之はこう答える。
「升(のぼ)さんのこうらは文芸じゃな」
 そして
「富貴なにごとかあらん。功名なにごとかあらん」
「立身なにものぞ」
 ……………………………………………………………

 では真之はどうか?
 真之はこのまま大学に入って官吏や学者になっても二流の官吏・学者にしかなれないと
 自己分析している。
 理由は「根気がない」からだ。「要領がよすぎる」からだ。
 真之は学問や学者についてこう考えている。
・学問は根気の積み重ねである。
・学問の世界で一流になれるのは根気と積み重ねとするどい直感力を持った学者だけである。
 これができないから真之は学者に向かないと考えている。
 そして自分は軍人に向いていると無意識に思っている。

 軍人に向いている理由を真之は言語化できないでいるが、
 相談を受けた兄・好古(阿部寛)はこう見ている。
『好古はこの弟のことを、単に要領がいい男だとはみていない。
 思慮が深いくせに頭の回転が早いという、およそ相反する性能が同一人物の中に同居している。
 そのうえ体の中をどう屈折してとびだしてくるのか、ふしぎな直感力があること知っていた。
(軍人にいい)
 と、好古はおもった』  文庫版1巻205ページ。

 子規も真之もしっかり自己分析して自分の道を決めている。
 自分と真摯に向き合っている。
 これに対し、普通の人は何となく就職して、安全な道を選んで生きていくって感じですかね?
 この違いは大きい。

 こうして真之と子規の、何者でもない、モラトリアムの青年期は終わった。
 これからは社会に所属する大人の世界に入っていく。


※追記
 人生の岐路で迷う真之と子規と対照的なのは好古だ。
 好古は家族を養うため、学問をするため、陸軍士官学校に入った。
 士官学校は給料がもらえて学費も無料なのだ。
 人生の岐路で好古は考えたり、迷ったりすることはなかった。
 現状を踏まえてより良く生きるにはそうするしかなかった。

 軍人の道に入ってからも好古は迷うことがなかった。
 真之たちのように「人間としてどうあるべきか?」と考えることなく、
「陸軍騎兵中尉秋山好古はどうあるべきか?」を考えて来た。

 好古は言う。
「おれは、単純であろうと思っている」

「人生や国家を複雑に考えていくことも大事だが、それは他人にまかせる。
 おれはそういう世界におらず、すでに軍人の道をえらんでしまっている。
 軍人というのは、おのれの兵を強くしていざ戦いの場合、この国家を勝たしめるのが職分だ」

「だからいかにすれば勝つかということを考えていく。
 その一点だけを考えるのがおれの人生だ。
 それ以外のことは余事であり、余事というものを考えたりやったりすれば、
 思慮がそのぶんだけ曇り、みだれる」

 実にシンプルでストイックで潔い生き方ですね。
 常人にこれはなかなかできない。

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「痴人の愛」② 谷崎潤一郎~浮気をしたナオミに河合は激怒し、出て行けというが、やがて……

2024年10月04日 | 小説
 ナオミと結婚して幸福の絶頂に立つ河合。
 ここから河合の地獄が始まる。

 ひとつめ──ナオミは河合が期待したほど賢い女ではなかった。
 勉強ができなくて叱ると、すぐ拗ねる、上目使いで見る、負け惜しみを言う。
「理想の女」に育てあげるという河合の願いは見事に崩れ去ったのだ。

 ふたつめ──贅沢が大好き。
 以前は一枚のビフテキで満足していたのに、次第に口が奢って「あれが食べたい」「これが食べたい」と言い出す。
 服への執着もすごくて、買ってあげないと拗ねるし、おかしな誘惑をしたりする。

 結果、河合の貯金は尽きて、国の母親にお金の無心をすることに。
 しかし、河合はこう思っている。
「私の本懐はナオミを少しでも身綺麗にさせて置くこと、不自由な思いやケチ臭いことさせないことでしたから、困る困ると愚痴りながらも彼女の贅沢を許していました」

 三つ目──「お伽噺の家」の生活に満足できなくなる。
 今までは河合との生活に満足していたのだが、次第に外に出たがるようになり、
「ソシアル・ダンス」を習いたいと言う。
 河合はそれを許すが、そこでさまざまな男たちと出会う。
 銀座のダンスホール・カフエ・エルドラドオでは、男たちに囲まれて女王様のようにふるまい、
 西洋風に着飾った日本人のお嬢さんを「猿」と呼んでからかい、西洋人を前にすると卑屈になる。

 こんなナオミに河合は失望する。
 だが、河合は……
「私は失望しました。しかし一方で、ナオミの肉体は私を惹きつけてやみませんでした。
 ナオミは頭脳の方では私の期待を裏切りながら、肉体の方ではいよいよますます理想通りに、いやそれ以上に美しさを増して行ったのです」

 いやはやなんとも。
 俗な言い方をすれば、
・恋の熱情
・執着の怖ろしさ
・マゾヒズムの男の心象
・女という生き物の怖ろしさ  である。

 奔放なナオミの行き着く先は当然浮気だ。
 河合は怒り狂う。
「何だお前は! 己(おれ)に恥をかかせたな! ばいた! 淫売! じごく!」
 この時の河合の心情はこうだ。
『私にとってナオミは成熟するまでに労力をかけて育てた果実と同じです。
 だからそれを味わうのは栽培者たる私の当然の報酬であって、あかの他人にむしられ歯を立てられてはいけないのです』

 何ともエゴイスティックな思いだが、二度と浮気をしないと誓ったのに、なおも浮気を重ねると
「出て行け! 畜生! 犬! 人非人! もう貴様には用はないんだ!」

 結果、ナオミは出て行く。
 河合は「清々した」といったん思うが、すぐに後悔して
「お前は馬鹿だぞ。ちっとやそっとの不都合があっても、あれだけの美は世間にありはしないぞ」と思うようになる。
 ナオミは強い酒なのだ。
 飲み過ぎると体に毒だと知りながら、その芳醇な香気を嗅がされ、なみなみと盛った杯を見せられると飲まずにはいられなくなる酒なのだ。
 河合のナオミへの執着は、凄まじい人間の業である。
 ナオミが稀代の悪女と言われるのはこのためである。

 最終的にふたりがどうなるのかはネタバレになるので書かないが、
 ラストはなかなか衝撃的、いや笑劇的だ!
 微笑ましくて笑ってしまう。

 たぶん、この結末で河合はものすごく幸せなのだと思う。

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正論の人・石破茂は現実に屈服した……。

2024年10月02日 | 事件・出来事
 どうした石破茂!?
 15日に衆議院を解散して27日に投開票。
 総裁選では、
「国民に十分な判断材料を提供してから解散総選挙をおこなう」
 と言っていたのにね……。
 おそらく15日までにおこなわれるのは「党首討論」。
 他に代表質問もあるが、これは討論ではなく一方通行でのやりとり。
 これで国民に「十分な判断材料」に提供できるのかね?
 予算委員会をやるべきではないか?

 以上のことは多くの人が語っているので、これ以上はツッコまないが、石破さん、ガッカリだ。
 内容のある国会議論を期待していたのに。
 自分の言葉に誠実な人だと思っていたのに。
 要は野党の態勢が整わないうちに選挙をおこなって、被害少なく勝とうということだろう。
 自分の言葉より党の論理を優先した。
 党の意見に押し流された。

 次の注目点としては──
・裏金議員を公認するか?
・統一教会関係議員を公認するか?

 たぶん公認するだろうなぁ……。
 公認しないという豪腕をふるったらすごいけど、やらないだろうなぁ……。

 でも小泉純一郎はやった。
「郵政民営化に反対する議員」は公認せず、刺客を立てた。
 これを国民は支持した。
 小泉純一郎の後ろ盾は「自民党の上層部」ではなく「国民」だった。
 石破氏は逆なんだよなぁ……。
 後ろ盾として石破茂が選んだのは「国民」ではなく「自民党の上層部」。
 情けない……。
 岸田文雄、菅義偉、森山裕の傀儡政権になりそう。
 自民党内の政権交代として期待した分、国民の失望は大きいだろう。

 石破茂は「正論」の人だった。
 その正論は権力の外にいる時は一定の輝きを放っていたが、
 いざ権力の中に入ると、「現実」や「しがらみ」に押し流された。
 正論は現実の前には弱いんだよなぁ……。
 理想は現実に屈してしまうんだよなぁ……。
 今回それをまざまざと見せつけられた。
 石破茂がこんなに脆いと思わなかった。

 さて次は野党のターンになるが、果たして?

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