けふのみと はるをおもはぬ ときだにも たつことやすき はなのかげかは
けふのみと 春を思はぬ ときだにも 立つことやすき 花のかげかは
凡河内躬恒
今日限りだと思わないときでさえ、花の蔭から立ち去りやすいなどということがあろうか。ましてや春の最後の日の今日は立ち去ることはできない。
歌意はわかりやすいですね。同じ躬恒の春を惜しむ歌として、後撰和歌集には
くれてまた あすとだになき はるのひを はなのかげにて けふはくらさむ
暮れてまた 明日とだになき 春の日を 花のかげにて 今日は暮らさむ
(後撰和歌集 巻第三「春下」第145番)
というものもあります。
この 0134 で、古今和歌集の巻第二「春歌下」はしめくくり。私自身、春という季節がとても好きなので春歌が終わってしまうのが寂しいような気もしますが、一日一首の古今和歌集、まだまだ先は長いです。明日からは新たな気持ちで「夏歌」を楽しんでまいりましょう。