漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0301

2020-08-26 19:33:01 | 古今和歌集

しらなみに あきのこのはの うかべるを あまのながせる ふねかとぞみる

白波に 秋の木の葉の 浮かべるを あまの流せる 舟かとぞ見る

 

藤原興風

 

 白波に秋の色づいた木の葉が浮かんでいるのは、漁師が流してしまった舟であるかのように見える。

 わかりやすい歌ですが、正直なところ余り面白みは感じませんでした。^^;;


古今和歌集 0300

2020-08-25 19:09:33 | 古今和歌集

かむなびの やまをすぎゆく あきなれば たつたがはにぞ ぬさはたむくる

神奈備の 山を過ぎゆく 秋なれば 竜田川にぞ ぬさはたむくる

 

清原深養父

 

 神が宿る山を秋が過ぎていく。それなので竜田川に紅葉という幣(ぬさ)が手向けられているのだ。

 紅葉を幣と見立てる歌が三首続きました。美しく色づいた葉も枝から落ちて季節が移ろって行きます。秋歌も残りあと少しですね。

 ここまででちょうど 300 首。よく続けてこられたものと自画自賛中です。(笑)
 引き続きよろしくお付き合いください。 ^^

 


古今和歌集 0299

2020-08-24 19:12:00 | 古今和歌集

あきのやま もみぢをぬさと たむくれば すむわれさへぞ たびごごちする

秋の山 紅葉をぬさと たむくれば 住むわれさへぞ 旅心地する

 

紀貫之

 

 秋の山が、紅葉を幣(ぬさ)として手向けているから、そこに住んでいる私までもが旅に出ているような心地がする。

 紅葉を神へのささげ物と見る見立ては一つ前の 0298 と共通。その手向けられた紅葉の美しさが、そこに暮らしている(=旅先ではない)自分にまで旅情を感じさせてくれるという歌。そんな心持にさせてくれる場所で暮らしてみたいものですね。^^

 


古今和歌集 0298

2020-08-23 19:54:08 | 古今和歌集

たつたひめ たむくるかみの あればこそ あきのこのはの ぬさとちるらめ

竜田姫 たむくる神の あればこそ 秋の木の葉の ぬさと散るらめ

 

兼覧王

 

 竜田姫が手向けをする神があるからこそ、秋の木の葉が幣(ぬさ)となって散っているのだろう。

 「ぬさ」は神に祈るときのささげ物。竜田姫自体が神ですが、その神様がさらに手向けをする道の神がいらっしゃるので、竜田姫がその神へのささげ物として秋の木の葉を散らしているのだろうという想像。

 兼覧王(かねみのおほきみ)は第55代文徳天皇の皇孫。0237 に続いて二首目の登場ですね。


古今和歌集 0297

2020-08-22 07:06:35 | 古今和歌集

みるひとも なくてちりぬる おくやまの もみぢはよるの にしきなりけり

見る人も なくて散りぬる 奥山の 紅葉は夜の 錦なりけり

 

紀貫之

 

 見る人もないまま散ってしまう奥山の紅葉は、夜に錦を着ているのと同じで、せっかくの美しさの甲斐もないことであるよ。

 詞書には「北山にもみぢ折らむとてまかれりける時によめる」とあり、山に深く入り込んだ場所で実際に散っていく美しい紅葉を見ての歌ですね。「衣繡夜行(いしゅうやこう)」という四字熟語がありますが、これのもととなった中国の故事を踏まえての作歌でしょう。

 

『史記』

曰 富貴不歸故郷 如衣繍夜行
誰知之者

曰く 富貴にして故郷に帰らざるは 繍を衣て夜行くが如し
誰か之を知る者ぞ