「瑜伽修行中感見した好相や霊夢は空理の幻華で語るべきことではなかろうが多く感じた霊夢と好相につき其の1つを記することとする。開白して六日目すなわち七月十七日の朝起床前、始めてある霊夢とおもわれるものを感じて以来八月三十日の結願の朝までほとんど時刻を同じゅうして毎朝一時二時頃の間に霊夢とおもわれるものを見た。その間によくみたのは星の夢であった。八月二十八日の朝のごときは無数の星が満天に輝き其の中央が一大円輪の碧空をなし中に忽然として名月の現ずるのを見た。神変加持の光明曼荼羅として拝んだ。この感見した光明曼荼羅は心根に通徹し一代の信念の根底となった。今に一念思いたるごとに心面に明らかに再現せられるのである。また好相とおもわれるものは七月二十二日の午前の座に於いてはじめてかんじたが、もっとも驚異と感激にたえなかったことは、結願に近き八月二十五、六日ごろより念誦中本尊が殊に微妙の好相を現じ、光明を放ち全身に通徹し、いうべからざる霊感をおぼえたことであった。八月三十日午後六時十分の日蝕にあたり、正に百万遍の真言の念誦おわり、結願の作法をしたが、結願の座には壇上に供じてある蘇の涌きあがるをみた。かくて霊夢霊感のうちに魔碍なく結願する事を得た。お寺の方からは結願終わらば直ちに本坊のほうへ出でよとの懇ろなお計らいであったが、どうも求聞持堂を去りがたくその夜は本尊の前に通夜して法楽を捧げたが、感涙滂沱として禁じ得ざるものがあった。そうして本尊に対し如何にして報恩感謝の誠をささぐべきであろうか、報恩の道といってほかにあるはずもなく、ただ本尊の御心を体し、道のために尽くすことが唯一の報恩なることを知り、本尊に深き誓約をし、翌朝供養法を修し、午前十時ころ本坊へ下り、五十二日にて入浴などを行い、懇ろな供養をうけ正午過ぎ下山せんとするころから、天候にわかに変じ、雲雷風雨全山を震撼しきたったが、須ゆにして晴れあがり、午後二時すぎ島村師に伴われ、いくどか霊峰を拝して下山し、岐路に着いた。」
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