福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

今日は大師が「実相般若経答釈」を書かれた日です。

2020-08-02 | お大師様のお言葉

今日弘仁八年817八月二日は大師(御年四四歳)が「実相般若経答釈」を書かれた日です。
「実相般若経答釈」は、大師が東大寺の円蔵法師からの『実相般若波羅蜜経』に関する四つの疑問点(「即身成仏」、「殺害三界一切衆生 終不因斯墮於惡道」、「空・無相・無願」「現身中において金剛不空無礙を即得成就す」)に対して、密教の立場からの文字を超えた深い解説が行われている。

「東大寺の圓蔵法師の問尋せる「実相般若」の中の四処の疑を答釈す。

圓藏小師(何人か不明)至りて枉問す。喜慰、何ぞ言はむ。兼ねて實相般若中四處疑滞を垂問す。
遍照無才にして何ぞ不讓に當らむ。來命拒みがたし。略して祕趣を敷ぶ。惟おもふに垂覽せよ。
第一疑問の文に云く、「若復人ありて能く日日中に受持・讀誦・思惟・修習せば即ち現身に一切法平等性金剛三昧を得、餘の十六生に當に一切法門において而も自在遊戲快樂を得、乃至當に諸佛如來金剛之身を獲べし」(実相般若経に「若復有人能日日中。受持讀誦思惟修習。即於現身。得一切法平等性金
剛三昧。餘十六生。當於一切法門。而得自在遊戲快樂。乃至當獲諸佛如來金剛之身」
)とは 
釋して曰言く、一切法平等性金剛三昧とは斯れ則ち大樂金剛不空薩埵三摩地なり。此の敎の菩薩は初發心より彼の顕敎菩薩所修の境を超越し、五智に直入し、法身自證の祕密三密門を修す。故に現身に於いて此の三昧を得る。一切法とは諸法無量なりと雖も攝末歸
本すれば三密に過ぎず。三密とは身語意密なり。此三密に且らく二種あり。一は自三密。二は他三密なり。他にまた二あり。謂く已成と未成なり。故に此の三種は平等無二にして互相渉入し異相あることなし。故に一切法平等といふ。修行者は瑜伽を修するによりて三昧を修證す。此の三昧は能断能壊不生不滅常住堅固之徳を具す。故に名けて金剛と言ふ。十六生とは十六大菩薩生也。「菩提心論」所説の金剛薩埵より乃至金剛拳まで是也(金剛界三十七尊の中、東西南北の各四菩薩なり、即ち東方にて金剛菩薩、金剛王、金剛愛、金剛喜、西方にて金剛法、金剛利、金剛因、金剛語、南方にて金剛宝、金剛光、金剛憧、金剛咲、北方にて金剛業、金剛護、金剛牙、金剛拳の諸菩薩)。行者が大樂金剛薩埵三摩地を修證するの時、頓圓に十六尊三昧王等を現證す。大日如來の自證三摩地は無量無數不可説不可説なりと雖も、皆な悉く此三昧王等に歸攝す。 具つぶさに此三昧を証するを名けて曰く普光明如來金剛之身と。

第二問に曰く「三界一切衆生を殺害すとも終に斯に因りて悪道に堕せず。何以っての故に已に調伏心律儀(心を調伏する律)を受けるが故に」(実相般若経に「爾時世尊説此法門已。復告金剛手菩薩言。
金剛手若有人。得聞此一切法平等實相般若波羅蜜法門。受持讀誦思惟修習。假令其人殺害三界一切衆生。終不因斯墮於惡道。何以故已受調伏心律儀故。當知是人疾得阿耨多羅三藐三菩提。」
)とは、 
釋曰く、三界は三毒是也。一切衆生は三毒によりて
三界苦を感ず。修行者は三祕密金剛律儀を發起して三毒本不生を観ずれば則ち三界之因を断ず。因已に不生なり。果何に由てか起らむ。故に曰く「終不因斯墮於悪道」と。斯乃ち如來の密意也。若し文の如く取義すれば所謂る諸佛之賊也。知らざるべからず。

第三問に曰く「所謂一切諸法は空なり。無自性なるが故に。一切諸法は無相なり。衆相を離れたるが故に。
一切諸法は無願なり。諸願を離れたるが故に。一切諸法は自性清浄なり。般若波羅蜜清浄なるが故に」(實相般若波羅蜜經に「爾時世尊復以一切如來永離戲論相。爲諸菩薩。説文字轉輪品實相般若波羅蜜法門。所謂一切諸法空。無自性故。一切諸法無相。離衆相故。一切諸法無願。離諸願故。一切諸法自性清淨。般若波羅蜜清淨故。」)とは
 釋して曰く、斯れ乃ち金剛利菩薩三摩地なり。
顕に文殊と名ずく。
此に二義あり。顕密不同なるが故に。顕意に云く、修行者は一切妄想分別を離れんが為に勤めて此の三解脱妙藥を服す。初めの諸法空観を以て無始妄境を遮す。數數修習すれば空三昧現前す。若し方便を失すれば則ち空病を起こす。此病を除かんがために更に空相を撥す。此の三昧現前の時は自他の身心なし。身心已に泯ずれば境界何んが有らむや。心境一相なり。何ぞ能所あらんや。能所あらずんば誰か求め、誰か願はん。故に曰く無願と。
無願とは言く三界の果報乃至菩提涅槃をも願はざるなり。斯れ乃ち遮情之義也(煩悩を否定する考え方)。復次に無願とは本有の故に。謂く菩提涅槃は法爾にして自有なり。諸佛開授すといへども還りて衆生心藏に就きて開与するのみ。既に心藏、無尽荘嚴之寶なることを知りぬ。更に誰についてか願求む。故に爾か云ふ。

次に密の義とは此四句者四種文殊三摩地なり。此の密観は染紙する能はず。待面傳授ある耳。

第四問に曰く「現身中に金剛不空無碍を即得成就し決定して法に入ることを得、復たまさに一切如來金剛祕密堅固之身を成就せむと」(實相般若波羅蜜經に「爾時世尊説此法門已。復告金剛手菩薩言。金剛手若有人得聞此大安樂金剛法性實相般若波羅蜜法門。於日日中毎清旦時。若聽聞若誦念相續不絶。當知是人所有罪障皆自消滅。心常調暢第一安樂。於現身中。即得成就金剛不空無礙決定入法。復當成就一切如來金剛祕密堅固之身」)とは 
釋して曰く、此れ亦た大樂金剛の三昧也。修行者は毎日此三密祕観に依りて此經を受持讀誦せば必ず此尊の三昧を得、此三摩地を證し已りぬれば、十六三昧及び如來金剛之位を即得す。故に曰く、現身即得金剛身等と。此經は金剛頂經之一會祕敎之肝心也。一一の句一一の字に悉く無邊の義理を含む。是故に顕学の古徳は釋すと雖も更に問へ。密傳の人にあらずんば何ぞ
能く解するを得んや。若し能く具受に心ありと雖も、面にあらずんば得ず。惟だ悉を垂れよ。還使途に立つ。縷くは説くこと能はず。略して一隅を擧ぐ。疎簡を嫌ふ莫れ。 沙門空海釋上
  弘仁八年八月二日 東大寺臨壇華厳和尚道前」
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