福聚講

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今日は大師が藤原葛野麻呂に代わり福州観察使に上陸を求める書を出された日です

2024-10-13 | お大師様のお言葉

今日(延暦23年80410月13日)は大師が藤原葛野麻呂に代わり福州観察使に上陸を求める書を出された日です.
高野大師御高傳に「延暦二十三年十月十三日、大師賀能の為に書を作し衝州観察使いに云う・・」とあり、以下の文があります。

「大使、福州ノ観察使ニ与フル為ノ書」
賀能啓ス。高山澹黙ナレドモ、禽獣労ヲ告ゲズシテ投リ帰キ、
深水言ハザレドモ、魚龍倦ムコトヲ憚ラズシテ逐ヒ赴ク。
故ニ能ク西羌、険シキニ梯シテ垂衣ノ君ニ貢シ、
南裔、深キニ航シテ刑厝ノ帝ニ献ズ。
誠ニ是レ明ラカニ艱難ノ身ヲ亡ボスコトヲ知レドモ、
然レドモ猶命ヲ徳化ノ遠ク及ブニ忘ルルナリ。
伏シテ惟レバ大唐ノ聖朝、霜露ノ均シキ攸、皇王宜シク宅トスベシ。
明王武ヲ継ギ、聖帝重ネテ興ル。九野ヲ掩頓シ、八紘ヲ牢籠ス。
是ヲ以テ我ガ日本国、常ニ風雨ノ和順ナルヲ見テ定ンデ知リヌ、中国ニ聖有スコトヲ。
巨棆を蒼嶺ニ刳メテ、皇華ヲ丹墀ニ摘ム。蓬莱ノ琛ヲ執リ、崑岳ノ玉ヲ献ズ。
昔ヨリ起テ今ニ迄ルマデ、相続ヒテ絶ヘズ。
故ニ今、我ガ国主、先祖ノ貽謀ヲ顧ミテ今帝ノ徳化ヲ慕フ。
謹ンデ太政官右大弁正三品兼行越前国ノ太守、藤原朝臣賀能等を差シテ、
使ニ充テテ国信別貢等ノ物ヲ奉献ス。
賀能等、身ヲ忘レ命ヲ銜ミ、死ヲ冒シテ海ニ入ル。
既ニ本涯ヲ辞シ、中途ニ及ブ比ニ、暴雨帆ヲ穿チ、戕風柁ヲ折ル。
高波漢ニ沃ギ、短舟裔々タリ。
凱風朝ニ扇ゲバ、肝ヲ耽羅ノ狼心ニ摧ク。北気夕ニ発レバ、胆ヲ留求ノ虎性ニ失フ。
猛風ニ頻蹙シテ、葬ヲ鼈口ニ待ツ。驚汰ニ攅眉シテ、宅ヲ鯨腹ニ占ム。
浪ニ随テ昇沈シ、風ニ任セテ南北ス。
但ダ天水ノ碧色ノミヲ見ル。豈ニ山谷ノ白霧ヲ視ンヤ。
波上ニ掣々タルコト、二月有余。水尽キ人疲レ、海長ク陸遠シ。
虚ヲ飛ブニ翼ヲ脱シ、水ヲ泳グニ鰭ヲ殺ス、何ゾ喩ト為スニ足ラン哉。
僅カニ八月ノ初日ニ、乍チニ雲峯ヲ見テ欣悦極罔ス。
赤子ノ母ヲ得タルニ過ギ、早苗ノ霖ニ遇ヘルニ越エタリ。
賀能等万タビ死波ヲ冒シテ、再ビ生日ヲ見ル。
是レ則チ聖徳ノ致ス所ニシテ、我ガ力ノ能クスル所ニ非ズ。
又大唐ノ日本ニ遇スルコト、八狄雲ノゴトクニ会ヒテ高台ニ膝歩シ、
七戎霧ノゴトクニ合ヒテ魏闕ニ稽顙スト云フト雖モ、而モ我ガ国ノ使ニ於テハ、
殊私曲ゲ成シテ待スルニ上客ヲ以テス。
面リ龍顔ニ対シテ自ラ鸞綸ヲ承ル。佳問栄寵已ニ望ノ外ニ過ギタリ。
夫ノ璅々タル諸蕃ト豈ニ同日ニシテ論ズベケンヤ。
又竹符銅契ハ本姧詐ニ備フ。世淳ク、人質ナルトキハ文契何ゾ用イン。
是ノ故ニ我ガ国淳樸ヨリ已降、常ニ好隣ヲ事トス。
献ズル所ノ信物、印書ヲ用イズ。遣スル所ノ使人、姧偽有ルコト無シ。
其ノ風ヲ相襲イデ今ニ盡クルコト無シ。
加以ズ使乎ノ人ハ必ズ腹心ヲ択ブ。任ズルニ腹心ヲ以テスレバ、何ゾ更ニ契ヲ用イン。
載籍ノ伝フル所、東方ニ国有リ、其ノ人懇直ニシテ礼義ノ郷、
君子ノ国トイフハ蓋シ此ガ為カ。
然ルニ今、州使責ムルニ文書ヲ以テシ、彼ノ腹心ヲ疑フ。
船ノ上ヲ撿括シテ公私ヲ計ヘ数フ。斯レ乃チ、理、法令ニ合ヒ、事、道理ヲ得タリ。
官吏ノ道、実ニ是レ然ルベシ。
然リト雖モ遠人乍チニ到テ途ニ触レテ憂多シ。
海中ノ愁猶胸臆ニ委レリ。徳酒ノ味未ダ心腹ニ飽カズ。
率然タル禁制、手足厝キドコロ無シ。
又建中以往ノ入朝ノ使ノ船ハ、直ニ楊蘇ニ着ヒテ漂蕩ノ苦シミ無シ。
州県ノ諸司、慰労スルコト慇懃ナリ。左右、使ニ任セテ船ノ物ヲ撿ベズ。
今ハ則チ、事、昔ト異ナリ、遇スルコト望ト疎ソカナリ。底下ノ愚人、竊ニ驚恨ヲ懐ク。
伏シテ願ハクハ遠キヲ柔クルノ恵ヲ垂レ、隣ヲ好スルノ義ヲ顧ミテ、
其ノ習俗ヲ縦ニシテ常ノ風ヲ怪マザレ。
然レバ則チ涓々タル百蛮、流水ト与ンジテ舜海ニ朝宗シ、
喁々タル万服、葵藿ト将ンジテ以テ堯日ニ引領セン。
風ニ順フ人ハ甘心シテ逼湊シ、腥キヲ逐フ蟻ハ意ニ悦ンデ駢羅タラン。
今、常習ノ小願ニ任ヘズ。
奉啓不宣。謹ンデ言ス。

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