「十善法語」その69

此不妄語戒を昔より信に配する。此は不妄語戒といふも信といふも。相當るべきじゃ。しかし此も宋儒などの様に理を向上に言ひなしては。信の名義すら實なきことになる。虛頭に落るじゃ。今此戒に依て。詐は言ふな。言うたことは違へなと云へば。上王公大人より庸夫愚婦に至るまで。推通じておこなはるヽ。是を以て導き教へば人々正直者じゃ。家々實義の門じゃ。上たる者下を欺ざれば。民の君を推戴すること日月の如くじゃ。下足る者上を欺かぜれば。君の民を思ふこと赤子を保ずるごとくじゃ。有司たるもの。誠を以て君に事へ。誠を以て其職に居ば。悉く直臣循吏じゃ。堯舜の君。稷契皐陶（しょくせつこうよう・・古代中国の名臣達）の臣。四方八隅皆有道の民と云も。此不妄語戒を基とすべきじゃ。如是年月を経て守らば。聖賢の地位にも到るまじきじきものならずじゃ。