福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

四国八十八所の霊験その67

2014-07-06 | 四国八十八所の霊験
 45番岩屋寺は寺伝によれば、大師が弘仁6年(815年)この山中で法華仙人と会い仙人が大師に帰依してこの山を献上したということです。大師は不動明王の木像と石像を刻み、木像を本尊として安置、石像は奥の院の岩窟に祀って秘仏とし、岩山全体も本尊としたといいます。山号の「海岸山」は大師の作とされる「山高き谷の朝霧海に似て松吹く風を波にたとえむ」の御詠歌によるとされます。山中の霧を海にたとえたものです。
「一遍聖絵」には文永10(1273)年、時宗の開祖一遍上人は「予州浮穴郡菅生の岩屋といふところに参篭し給ふ、このところは観音影現の霊地、仙人練行の跡なり・・・霊夢しきりに示して感応これあり」とあります。
 一遍上人は信濃善光寺で阿弥陀如来を感得し故郷に戻り、久万町の三坂峠麓に庵を結び千日修行、その後ここ岩屋寺に半年参篭、この修行の後、「なむあみだぶつ」と唱えれば誰でも往生できると悟ったといわれています。
また「ある時は普賢文殊来現し、ある時は地蔵弥勒影向し給しにより」ともあり多くの仏様の霊験をいただける地であったことが伺えます。
 
 
「日本巡礼記集成」の中の田中妙善尼の手記によると昭和55年5月ここの奥の院で小児麻痺により20年間動かなかった女性の手が行場へ登ろうとして鎖に手をかけた途端に動くようになったということです。「不思議はいまも新たなり」ということです。其処の所を抜粋しておきます。「昭和55年5月12日、四国88所巡拝に(美代ちゃんという19歳の女性、小児まひで左腕が上に上がらず左足も不自由、が)お母さんと参加され3日目に45番岩屋寺に着きました。そしてセリ割禅定に美代子ちゃんも上げようとして下から押したり、上から引っ張ったりしても、美代ちゃんの腕は上がらず、鎖も握れませんでした。それでもなおも下からと上からでひっぱいあげてやっと岩の頂上に着きました。一同よかったよかったと悦びあっていたとき、突然美代ちゃんが『先生手が動いた』というのです。『あっ』みんな驚いて美代ちゃんを見ました。するとあの2歳か変形し硬直して動かなかった左手の指五本のうち三本が動くようになっていて、さらに腕が上下に動いているのです。みんなただただ目を見張っているばかりです。やがて感動の涙と御寶号が皆の口から一斉にあふれ出ました。とりわけお母さんもとめどなく涙を流しつついつまでも『南無大師遍照金剛』を唱え続けました(日本巡礼記集成)」自分でもここを書き写すたびに涙が止まらなくなります。

「一遍聖絵」にはまた「四十九院の岩屋あり父母のために極楽を現じ給へるところあり、・・・抖撽の行者霊験を祈る砌なり」ともあります。
 岩屋寺は行者が父母のために祈ったところでもあったわけです。当方にとってもここは、父が亡くなってすぐ、母の夢に出てきて修行していると言ったところでもあります。

納経所では多くのお遍路さんがいる中、お寺の奥さんが私だけに「そこの歩き遍路さんどうぞ」とお茶とお菓子を接待してくれました。
亡き父の縁でしょうか。なにか申し訳ないような複雑な気分で皆さんにみえないように隠れていただきました。

さきに述べた田中妙禅尼の一行に霊験が現れた逼割り禅定は鍵がかかっています。納経所で申し込むと入り口の鍵と納札の束をわたされます。

 逼割り禅定のまわりの山肌には八大童子や五大明王がお祀りしてあります。

 ここで山肌に抱かれて祀りしてある八大童子(八大童子とは不動明王の眷族として 、衆生救済に活躍する童子たちで矜羯羅(こんがら)童子、制多伽(せいたか)童子、阿耨達(あのくた)童子、清浄比丘(しょうじょうびく)童子 、慧喜(えき)童子、烏倶婆伽(うぐばか)童子、持徳(しとく)童子をいいます)や五大明王(降三世明王(ごうざんぜみょうおう)軍荼利明王(ぐんだりみょうおう)金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう大威徳明王(だいいとくみょうおう)烏枢渋摩明王(うすしまみょうおう))を拝みながら自分も行者になったのだなと実感しました。
せり割り禅定は2段になっており鎖場の上が木の階段です。 岩場の上には白山権現がおまつりしてあり納経所で渡された納札のなかに白山権現のお守りもはいっていました。
岩の頂上の白山権現さまのお社はおそれおおいので写真はとりませんでした。岩のうえにパンの包みなどが捨ててあったのであつめてもってかえりました。


さらに最後に寺を去るとき不思議の極み出会いました。寺の石段を降りる時、なにげなく周囲に立てられている寄贈者の名前をみていたのですが、其のうちの一つに我が家の先祖の名が彫られていたのです。更に其の寄贈理由まで彫られていましたがその理由のあまりの身につまされる生々しさに息を呑みました。
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