福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

関口さんの「三重塔と五重塔の違い如何」との質問のお答え。最終回

2010-06-27 | Q&A
・五輪塔婆・・五輪塔の地輪を長くして柱状に作ったもの。これらの塔婆につき「真俗仏事編」には「「五輪の塔婆は大日如来の三摩耶形であるがゆえに、あらく刻んだ小塔婆であってもこれは如来法身の法界塔婆である。または法界体性の標識とする。かの弥勒菩薩が五輪塔をもっておられるのも衆生の所具の大日を示されているのである。このように尊い卒塔婆であるがゆえにひとたび見ても悪趣を離れ,業障を滅する。ましてやそのために立てる亡者に対してはなおさらである。」としてお大師様の「秘蔵記」を載せています。「卒塔婆は鑁の一字の所成なり。また阿卑囉吽劔(あびらうんけん)五字の所成なり。一一を取るに任せて、自性清浄身とも、真如とも、佛性とも、如来蔵とも、法性とも観ずべし。(秘蔵記)」

・板碑・・・・塔婆の輪郭(上部)を板石にあらわしたもの。関東地方に多い。

・碑伝・・・・板碑に似ているが下方にも廣い刳込みをいれる。山伏がで山中で満行記念にたてたもの。

・摩尼輪塔・・八角柱石の上に宝珠輪をつくり梵字を彫る。四国81番白峯寺参道にあり「此処からは神聖な場所である」という趣旨。多武峯にもあるということです。

・無縫塔、卵塔・・卵を立てた形。僧侶の墓に多い。「中国では相輪の数によって階級を決め、八重は如来、七重は菩薩、六重は縁覚、五重は羅漢、三重は斯陀含、二重は須陀含、一重は転輪王、一般佛徒の墓は相輪のない無縫塔にしたのである(仏教考古学論攷)。」室町時代に無縫塔は中国から入ってきたとされるがこれからすると中国の僧侶が自分は「一般の佛徒にしか過ぎない」と遠慮して無縫塔をつくったのを日本の僧侶も真似たということかもしれません。しかし密教大辞典には「卵塔はおそらくバン字(梵字の鑁)所成塔を意味するか」としています。バンという梵字が卵型たからこれを象ったのが卵塔だとするのです。

・三重塔・・さきにのべた中国の考えでは三重は「斯陀含」の塔ということになります。有部毘奈耶雜事第十八には「相輪の数は或は一二三四乃至十三なり。・・如来のために卒塔婆をつくらんには・・若し独覚のためならば宝瓶を安んずることなかれ。若し阿羅漢は相輪を四重に、不還は三に至り、一來は応に二なるべく、豫流は応に一なるべく、凡夫の善人は唯平頭ばかりにして輪蓋あることなし。」とあります。ここからすると三重塔は「不還果」を得た聖者のためのものということになります。印度のほうがすこし厳しいのですがいずれにせよ日本の三重塔にはあてはまりません。
日本の三重塔については「天台宗に圧倒的に多い。これは天台教理の三諦円融思想によるものと思われる(仏教考古学論攷)」とあります。しかし天台宗の溪嵐拾葉集では「三重塔は南天の鉄塔なり」としています。(「三重塔婆ヲ建。此則不二南天鐵塔表示也。上ノ一重ニハ天子本命ヲ安ス。中ノ重ニハ百官萬乘ノ本命ヲ安ス。下ノ重ニハ國内萬民ノ本命ヲ安ス・・・」。)お寺によってその意味は別れると思われます。
国宝のものとして法起寺三重、薬師寺東塔、当麻寺東塔西塔、興福寺三重塔(奈良県)浄瑠璃寺三重塔(京都府)一乗寺三重塔(兵庫県加西市)安楽寺八角三重塔(長野県上田市)大法寺三重塔(長野県小県郡 )明通寺三重塔(福井県小浜市)西明寺三重塔(滋賀県犬上郡)常楽寺三重塔(滋賀県 )向上寺三重塔(広島県)があるといいます。

・五重塔・・・さきの中国の考えでは「五重は羅漢」となりますが、「密教においては塔婆を以って大日如来の三昧耶身とし、その主要なるものを二種とす。一は五輪所成の塔にして一はバン字(梵字)所成の塔なり。前者は胎蔵五大の徳を表示せる本有の理塔にして、後者は金界智徳を表示せる修生塔なり。大師高野山に建立せる大塔は後者にして、東寺に建立せる五重塔は前者に属す(密教大辞典)。」つまり五重塔は五輪塔と同じで胎大日を表すということです。国宝の五重塔は羽黒山 、東寺 、醍醐寺 、海住山寺 、法隆寺 、興福寺 、室生寺 、明王院 、元興寺 海龍王寺、瑠璃光寺 (山口県)にあるということです。

・七重、九重塔、十三重塔等・・・溪嵐拾葉集に「七重塔ト者。衆生命根ハ七星ヲ表ス。有時ハ七星ト成リ衆生ノ本命ヲ現ト。在ル智慧時現
七佛藥師ト喩ス衆生ノ煩惱業苦ノ病。草木ノ
中ニ在ル時ハ七草トナリ衆生ノ良藥爲リ。故知。七重
塔ハ眞言行者見テ七星トナス。法界ヲ得度スル時ノ義也
云云 又云。八重塔ト者。法界ハ只八葉ソト見テ
法界ニ入ル時ノ義也 云云 九重塔ト者。八葉九尊ト見テ
法界ニ入ル時ノ義也。故大師今ノ平安城ヲ九重ニ
分給フ。九條ノ末ニ塔婆ヲ。建立シ給フ。此所表也 云云
十三重ト者。十三大會ノ曼荼羅ト見テ法界ヘ入時
義也。三十七重ト者。三十七尊ノ所表也 云云
十七重ト者。理趣經ノ十七段曼荼羅ト見ヘ法界
入ル表示也・・」などとあります。
即ち七重塔は七佛薬師及び北斗七星、八重は八葉蓮華、九重は胎蔵界曼荼羅の中台八葉院における四仏および四菩薩と中央に坐する大日如来の九尊を、十三重塔は十三大院(現図曼荼羅の十二大院に四大護院を加えたものを十三大院という。)を表し、十七重塔は理趣經の十七段を表し、三十七重は金剛界三十七尊を表す、ということです。
(以上)




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1 コメント

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ありがとうございました (関口)
2010-07-02 13:26:44
以前「三重塔と五重塔に付いて違いは如何でしょうか」と質問したことがありますが、今回その1,その2.最終回と三度にわたって、文献を織り交ぜ、とても丁寧に、ご解説頂きありがとうございます。
 難しいところもありましたが、写真もあり、疑問に思っていたことが少し分かりました。忘れずに懇切に書いて下さったことに感謝しながら何度も読みました。
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