密教の修法では必ず最初に行の成就を願って以下のように神々に祈願します。
祈願の言葉です。この部分は専門的には「神分じんぶん」および「霊分りょうぶん」とよびます。神々に呼びかける言葉とでもいう意味でしょうか。どの修法にもある共通の祈願文です。
「外金剛部の五類諸天をはじめたてまつって三界九居の天王天衆、殊に別ては当年属星本命元辰諸宿曜等當山鎮守両所権現部類眷属百二十社王城鎮守神諸大明神當年行疫流行神等総じては日本国中大小神祇普天率土の権実二類しかしながら威光倍増のために・・般若心経・ 大般若経名・・・
弘法大師普賢行願皆令満足のために・・摩訶毘盧遮那宝号・・
有縁無縁諸精霊等皆成仏道のために・・摩訶毘盧遮那宝号・・」。
1、ここで
・「外金剛部の五類諸天」とは胎蔵曼荼羅の一番外、外金剛部におられる上居天(色無色界天)・虚空天(欲界の夜摩天・都史多天・楽変化天・他化自在天)・地居天(四天王・忉利天)・遊虚空天(日月星宿の天)・地下天(龍・阿修羅・閻魔天等)の五をいい、
2、・「三界九居」とは欲界・色界・無色界の三界に住む九種類の存在という意味で、欲界の人、色界の四天(初禅・二禅・三禅・四禅天)、無色界の四天(空無辺処・識無辺処・無所有処・非想非非想処天)を加えて九居とした。
3、・「当年属星本命元辰諸宿曜」とは宿曜経による星を指すもので、「当年星」とは、行者の当年をまもってくださる星、「本命星」とは北斗七星のうち行者の一生の本命を司る星、「元辰星」とは行者の一生の貧富盛衰を司どる星。「諸宿曜」とは七曜二十八宿の星。
4、・「當山鎮守両所権」とは高野山では、丹生高野の両明神様。ここでは祈願するそれぞれの寺の鎮守様を入れる。
5、「百二十社王城鎮守神諸大明神」とは一か月三十日を守ってくださる三十番神(例えば一番は大日如来の垂迹とされる熱田大明神、二番は普賢菩薩の垂迹とされる諏訪大明神等)を四方に配して百二十となる。
6、「権実二類」の「権類」とは、覚った仏菩薩様が仮に姿を現されているもの。「実類」は迷っている霊達。
7、・「當年行疫流行神」とは、その年の疫病神のこと。