福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

今日弘仁六年一月十日は大師が小野陸奥守に餞別の歌を贈られた日です

2024-01-10 | お大師様のお言葉

・今日弘仁六年一月十日は大師が小野陸奥守に「野陸州に贈る歌并(なら)びに序」を贈られた日です(弘法大師全集および性霊集による)。

「戎狄馴れ難く辺笳感じ易し。古より有り、今何ぞ無からむ。公、大廈の材を抱いて、出でて犲狼の境を鎮む。堂中には久しく定省の養を闕き、魏闕には遠く龍顔の謁を阻てたり。天理歓然に合へりと云ふと雖も、人の情豈感歎無からむや。貧道と君と遠く相知れり。山河雲水何ぞ能く阻てむ。白雲の人、天辺の吏、何れの日か念ひ無からむ。聊か拙歌を抽でて、以て辺霧の頤を解くに充つ。
日本の麗城(美しい国)三百の州。就中に陸奥最も柔げ難し。天皇赫怒して幾たびか剣を按(おさ)ふ。相将幄の中に争うて謀を馳す。往帝も伐ち、今上も憂へたまふ。時時の牧守劉(ころ)すこと能くせず。古より将軍悉く啾啾たり。毛人羽人境界に接す、猛虎豺狼処処に鳩(あつま)る。老鴉の目、猪鹿の裘。髻の中には骨毒の箭を挿み著けたり、手の上には毎に刀と矛とを執れり。田つくらず、衣おらず、糜鹿を逐ふ。晦とも靡く明とも靡く(昼夜問わず)、山谷に遊ぶ。羅刹の流にして人の儔(ともがら)に非ず。時時、人の村里に来往して千万の人と牛とを殺食す。馬を走らしめ刀を弄ぶこと、電の撃つが如し。弓を彎き箭を飛ばす、誰か敢へて囚へん。苦しい哉、辺人毎に毒を被つて歳々年々常に喫(くら)はるる愁あり。我が皇(きみ)、世の為に出でて能く鑒(かんがみ)みたまふ。咨(なげ)いて刃局(おさ)む。千人万人挙(こぞ)つても応ぜず。唯君のみ一箇帝心に抽でられたり。山河の気、五百の賢、允(まこと)に武、允に文、得ること天よりす。九流三略は肚(むらと)の裏に呑めり。鵬翼を一たび搏ち此の境を睨る。毛人面縛して城辺に側てたり。凶兵庫に蘊むで冶鋳を待つ。智剣胸に満ちて幾許(いくばく)ばかりの千ぞ。戦せず征せず。自ら敵無し。或いは男、或いは女、天年を保つ。昔は聞く、瞬帝の干舞の術を。今は見る、野公が略ごと匹無きことを。京邑の梅華は春に先だつて開く、京城の楊柳は春の日に茂し。辺城遅く暖かにして春の蘂無く、辺塁早く冬(さむ)くして茂実無し。高天高しと雖も聴くこと必ず卑し。況んや鶴の響九皐より出づをや。愁ふる莫れ、久しく風塵の裏に住(とどま)ることを。聖主は必ず万戸の秩を封む」。

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