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最近の小説はやさしくて、いわゆる「ほっこりする」系だったり、青春系だったり、
どんでん返し系だったり、まあ、会話も今風に緩いし、今時だから何でもスマホでできちゃうし。
そういう時は、時代に逆行して大藪晴彦など読むと、ガツンと来るのである。
この2冊は500ページが2冊で1000ページになるが、面白いので一気に読みたくなる。
(わざとゆっくり読むけれど。もったいないので。)
大藪晴彦はまさしくハードボイルド小説で、銃もバイオレンスも麻薬も殺人も米軍も
もう総出で悪い(笑)。
舞台は意外に古く、1962年~1963年ぐらいで、オリンピック前の道路拡張などが盛んな頃。
今と違ってダイナミックに変化する様が判る。
大藪晴彦は拳銃とクルマ・バイクには細かい描写が施されて、まるで自分が操っているように感じるんだが、
とにかく、ものすごくたくさんの車と拳銃が登場する。
他に、道路、街、郊外の様子、などが事細かく描写されて面白い。
都電もたくさん出てくる。
京橋付近の様子も細かい。
やはり映画になった松田優作と風吹ジュンのイメージが強く、そのまま投影して読めば良い。
経理マンが会社を乗っ取っていくまでの野望を描いたフィクションだが、当時の株価が100円ぐらいだったり、
ドルの交換レートが400円ぐらいでの闇取引だったり、郊外はまだ未舗装で、アメ車がゆったり走れるので、
役員車はみんな大きなアメ車だったり、道路の名前も今と違うし、等々力や
赤堤、下北沢なども出てきて、いやあ、そういうストーリーと
関係ないところが今となってはかなり面白い。
大藪晴彦のもう一つ良い所は、登場人物に関して、何回でもどこそこの誰と表示してくれるので、
たくさんの名前を覚えなくても済むところ。
いつでも属性を書いてくれるので、読むのが楽なのである。
しかし書店では売ってない。
中古で買った。
おそらく、バイオレンスが強すぎ、暴力シーンもたくさん出てくるから、
今だと発売しにくいとも思う。
やさしい世の中だからね。
でも、久しぶりの大藪晴彦は今だからこそお勧めである。