授業が終わって、掃除の時間、俺は通気口を見に行った。
ニンジンが気になったからだ。
通気口には、ニンジンがそのまま置いてあった。
特に、齧った跡は無い。
“ ウサギはもう何処かに行ってしまったのかな・・・。”
俺がニンジンを眺めていると、用務員のオッチャンがやって来た。
「 あらっ、ニンジンが落ちてる!
よいしょっと!」
用務員さんは、ニンジンを拾い上げた。
俺は用務員さんに言った。
「 あ、それ、俺が持って来たんだ。」
用務員さんは、胡散臭そうに俺に聞いた。
「 どうして、地面にあるんだ?」
「 ウサギが食べに来るんだ。」
「 何処から?」
「 そこの穴だよ。」
「 ここの穴?」
「 ウサギが、そこに逃げ込んだんだよ!」
「 何処のウサギ?」
「 ウサギ小屋の。」
「 さっきウサギ小屋に行ってエサをやったけど、ウサギはちゃんと六匹
いたぞ。」
「 いや、昨日、七匹いて、一匹逃げたんだ。」
「 昨日?」
「 そう、昨日。」
「 昨日も、六匹だけどな。」
「 一匹、ここの穴に逃げ込んだんだよ!」
「 ふ~ん・・・・。」
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