日々の恐怖 8月18日 駅
昔、北陸の某所に出張に行った時のことです。
ビジネスホテルを予約して、そのホテルを基点にしてお得意様を回る事にした。
二日目、最後の所でちょっと飲んで、その後ホテルに戻る事になった。
ホテルまで鈍行列車で20分。
疲れていたせいか、うとうとして気が付いたら降りるはずの駅だった。
あっと思って立ち上がったときはもう遅く、列車は出発してしまっていた。
4~5分して、次の駅に列車が停車したので急いで降りた。
降りて列車が発車してふと気づくと、がらんとしたホームに私が一人。
ホームの端に掘っ立て小屋のような木造の建物があり、それが駅舎だった。
蛍光灯がぼんやりと灯っている無人駅。
降りるはずの一つ手前の駅は、特急も停車し、ローカル線も交わる駅で、その県内では県庁所在地に続いて二番目の大きな市。
その駅から一つ目の駅でしかも本線なのに、どこかのさびれたローカル線のような雰囲気。
駅前は真っ暗。
コンビニひとつない。
映画で見たような古臭い家がひっそりと建っている。
次の列車は一時間後にやって来る。
列車が来るまでの一時間、恐ろしいくらい何の音もしなかった。
結局、何もしないまま一人ポツンとホームのベンチに座り、やって来た列車に飛び乗った。
ホテルについて、次の日の時刻表をチェックして気づいたのだけど、普通列車を待っていた一時間の間、本線なので特急が通過するはずだし、反対方向の普通列車も通過するはずなのに、全く列車が通過しなかった。
静かな中に突然、私が乗りたい普通列車がやって来た感じだった。
その半年後、再びそこに行く時があり、昼に時間が取れたので何となく行ってみた。
駅は小さいけれど、木造ではなく鉄筋だった。
一人駅員さんがいた。
駅前には小さいけどロータリーがあり、コンビニもあった。
半年あればがらりと駅も駅前も変わるかもしれない。
でも、駅もコンビニも特に新しい感じはしなかった。
今でもあの時、時間がずれてどこかに紛れ込んだのではないかと思う事がある。
時々、あの列車が来なかったら、と思って怖くなる。
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