日々の恐怖 8月9日 その2 怨念
同じく、長屋にいた頃の話です。
長屋のすぐ傍に古いアパートがあって、そこの二階に若い女性が一人暮らしをしていた。
多分30代だった記憶がある。
そのお姉さんは近所の主婦とも気軽に立ち話するし、私達子供にも会えば挨拶してくれる気さくな感じの人だった。
お姉さんの部屋にはたまに男が出入りしていて、近所では『ヒモ』だと囁かれてた。
母によれば、お姉さん自身が「彼がお金を無心にくる、生活がきつい」と嘆いていて、それでも好きな男だったらしく、「今日彼が来るの」などと嬉しそうにしてたらしい。
そんなお姉さんが、そのうち近所で姿を見かけなくなり、「どうしたんだろうね」と近所で噂が立ち始めた頃、部屋で死体で発見された。
死因は餓死。
第一発見者は金の無心にやってきた男。
「可哀想に・・・」と母がうなだれてたのを今も覚えてる。
やがて近所の噂も収まり、お姉さんの部屋にも新しい住人が入るようになった。
でも、皆一ヵ月もしないうちに出ていく。
長く居る人は発狂する。
小学生の男の子が、窓から通行人に向かって鋏を投げて大怪我させたこともあったし、自殺未遂騒ぎもあった。
(ちなみに、うちの長屋と同じ大家で、困り果ててたらしい)
最後はお祓いしてた。
近所ではお姉さんの怨念だなんて囁かれてたけど、個人的には怖い云々より、お姉さんのことを思うと心からやりきれなかったです。
関係ないけど、その長屋とアパートの大家の娘さんがすぐ近所で暮らしてたのですが、鬱病だったそうで、自室で寝てた中学生の娘をメッタ刺しで殺害する、という恐ろしい事件が起きました。
あの土地には何か因縁があったのかも・・・。
餓死事件が発生したのは、母の記憶によると昭和49年~52,3年位だったようです。
ただ、大家さんがいわゆる地元の有力者だったので、新聞には載らなかったかも。
そのアパートの一階に住んでいた中学教師が失踪する事件があったのですが、その時も載らなかったので。
少なくとも毎日新聞には載りませんでした。
私は子供だったのでもう記憶は薄いのですが、母によると、お姉さんは「痩せ細ってたのに顔だけは綺麗に化粧してた」そうです。
お姉さんに合掌 (-人-)
あと、「赤ちゃん埋まってる事件」ですが、母の話では、父と姉だけでなく私も言ってたらしいです。
本人記憶なし。
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