日々の恐怖 8月8日 その1 赤ん坊
子供の頃、一時長屋に住んでたことがあった。
そこに引っ越して間もないある日、姉が遊びから帰るなりおかしなことを言い出した。
「 あのね、うちの下に赤ちゃんが埋まってるって○○ちゃんに言われたよ。」
母はその時、近所の新参者に対する意地悪かな、程度にしか考えなかったらしい。
ところがそれから暫らくした朝、父が目覚めるなり、
「 この家の下には死体が埋まってるんじゃないか?」
と言い出した。
何でも、夜中に金縛りにあい、自分が寝ている三畳間の床下から赤ん坊の泣き声が聞こえた、と。
驚いた母が姉の話をすると、建築業を営んでいた父はダイナミックな行動に出た。
何と、大家に無許可で畳を外して床板を剥がして調べた。
ドラマなら、そこで死体が見つかるとこだけど、結果は何も出ず。
ただ、不審に思った母が後で近所に聞いて回ったところによると、私達家族の前は若い身重の女性が暮らしていたそうで、女性はその家で出産したらしい。
暫らくは赤ん坊の泣き声がしてたのにピタリと静かになって、やがて逃げるように引っ越してしまったと言うことだった。
その後も父は、頻繁に、
「 夜中に赤ん坊の声が聞こえた。」
とぼやいてた。
もっとちゃんと探せば、もしかしたら死体は出てきたのかも知れないと今でも思う。
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