大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 8月1日 伝言

2013-08-01 19:58:25 | B,日々の恐怖




    日々の恐怖 8月1日 伝言




 結婚して2年で旦那の癌が発覚。
嫁親は結婚に反対し、旦那親は父親の浮気で離婚。
そして旦那の父親は会社の金を横領して刑務所に、母親は水商売で若い男と同棲中。
この母親は、嫁に金まで借りまくっていた。
 嫁はOLをし、夜中までファミレスでバイト真夜中は道路工事の警備員に。
でも発病が26才の旦那の癌は、若い分だけ進行が早かった。
旦那の親は一度も見舞いには来ない。
 手術や新薬の為、嫁は働いても働いてもお金がない。
病室に毎日行くと「もっと傍にいてくれ」と旦那は言う。
しかし仕事があるから長居できない。
 嫁の睡眠時間は2日間で3時間。
若さだけで乗り切る日々。
この生活が2年半続いたある日、病院から電話が。
 しかし嫁は仕事中で、気が付くまで9時間以上掛った。
必死に病室に行くと…、旦那はいなかった。
看護師に聞くと、旦那の母親が遺体を引き取ったらしい。
 旦那の母親はとある新興宗教の熱心な信者。
旦那も名前だけ信者になっていた。
嫁が地方の旦那の母親に電話をすると、「葬式はこちらでやります。あなたは信者じゃないし来ないでよ」と。
 呆然と立ちつくす嫁に、看護師から封書が渡された。
旦那からの手紙と離婚届け。

「 ありがとう。
毎日ボロボロになるまで俺の為に働いてくれて。
 おまえはまだ若い。
誰よりも綺麗だ。
俺の死亡届けより離婚届けを出して。
 俺の親はどうしようもない。
縁を切って自由になってくれ。
少し悔しいけど再婚して、俺がかけられなかった愛情を未来のご主人から受けて欲しい。
 ごめん。
愛していたよ。
痩せ続け、手荒れしたおまえの手に涙が止まらなかった。
幸せになって欲しい。
 ありがとう。
本当にありがとう。
○○、愛しているよ。」

嫁は号泣して倒れた。
 166cm35キロ。
体も限界だったのだろう。
その後、旦那の実家地方に行くが母親は引越していた。
 息子の生命保険で家を買っていたのを知ったのは数年後。
嫁は墓の場所すらわからなかった。




 そんな嫁が海外で仕事先を見つけた。
一人で渡米。
そして3年振りに帰国し、役所関係の手続きを終え、仲間との飲み会に。
 しかし、横断歩道を歩いていて車にひかれた。
幸い、脳震盪と脱臼。
脳の検査入院で1ヶ月。
ひいたのは俺。
 親御さんに土下座して、毎日病室に行った。
俺の親も謝罪に行った。
 嫁の意識が戻った時、「○○さん?」といきなり俺の下の名前を読んだ。
持参した黄色のチューリップを見て、「1番好きな花です。ありがとうございます」と。
その時は、寝ている最中に名前なんて話したかな?と思っていただけ。

 俺より8才下で、とにかく綺麗な人だった。
退院してから海外に戻ると言う嫁に告った。
結婚したかった。
嫁は「×1ですが…」と恐縮していたが、双方の親は大賛成だった。
 結婚式(嫁は初婚の時に挙式していないので、友人らが勧めてくれた)の前に、嫁の親友に初めてこの話を聞いた。
こんな苦労していたとは知らなかった。
 でも、親友にさえ「忙しいけど大丈夫!」と、旦那が死ぬまで何も伝えなかったらしい。
結婚式はレストランで控え目にしたが、嫁の友達がみんな涙しているし、友達がたくさんいる人気者だと知った。
 結婚して3年目に嫁から打ち明けられた。
入院中、旦那が夢に出て来て、

「 △さんはおまえを幸せにしてくれるよ。
俺の事は忘れて、△さんと幸せになってね。」

と、俺の名前を告げて消えたらしい。
その後、一切出て来ないそうだ。
若くして亡くなった旦那の分まで幸せにしてやりたい。


















童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

しづめばこ 8月1日 P261

2013-08-01 19:57:58 | C,しづめばこ
しづめばこ 8月1日 P261 、大峰正楓の小説部屋で再開しました。


小説“しづめばこ”は読み易いようにbook形式になっています。
下記のリンクに入ってください。(FC2小説)

小説“しづめばこ”



童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------