日々の恐怖 6月24日 フワフワ
10年くらい前の話です。
大学4年間、親戚の不動産屋の紹介で、繁華街の雑居ビル屋上のプレハブに住んでいた。
プレハブなので冬寒く夏暑かったが、約18畳部屋でシャワー付、駅徒歩6分で月3万円だった。
安くて良かったのだが、変なものを月に一度か二度見るのには困った。
屋上の3分の1ぐらいがプレハブを占めていて、あとは給水タンクと庭みたいになってるのだが、その庭みたいな空間に、夜中の2~3時になると、変なものがユラユラ踊っている。
西洋の幽霊みたいな、ぼんやり光る白いシーツを被った人型のものがフワフワする。
屋上を浮かびながら、それがゆっくり円を描く。
初めて見たのは、引っ越してから2週間ぐらいした夜のことだった。
非常階段から不審者が忍び込んだのかとバットを持って、
「 こらっ!」
と声をかけたが、そいつはこっちを振り向くと、じわーっと消えていって終わりだった。
それで、この世のものじゃないとわかって、やっとビビったぐらいだった。
うちに泊まって見た友人も2人いる。
1人は、夜中にトイレに起きた時に見て、
「 どちらさん?」
と声をかけたら消えてしまったようだ。
もう1人は、これが見たくて何度か遊びに来てて、4度めに見た。
声をかけずに見てたら、ずーっと周ってて、友人がタバコに火を付けた瞬間に消えた。
ちっとも怖くはないんだけど、気持ち良いものじゃないんで、屋上に粗塩ぶちまけてみたり、日本酒ぶちまけてみたり、色々したけれど効果は無かった。
親戚の不動産屋に話してみたら、
「 だから、安いんだよ。
でも、害はないだろ?」
で終わりだった。
そのうち、出てくる周期が、満月か新月の日だとわかったんで、その日は早寝してた。
飲み屋で知り合ったオッサンに、話の序でに相談してみたら、
「 それがいるから、他のが来ないんだろ。
ぐるぐるしてるだけで害がないなら放っておいたら・・・。」
と言われた。
実際、そのプレハブに住んでた4年間は、特に実害も無く平穏な日々だった。
それも驚くぐらいに怖くない奇妙な経験だった。
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