日々の恐怖 11月5日 正月は暇(3)
タクシーが迎えに来て、引き止める叔母さんを振り払い、タクシーに乗り込んだ。
宿泊先のホテル情報はタクシー運転手さんに伝わっており、俺はカメラをふきふきしながら、後部座席でムカムカ怒っていた。
だいぶ酔っていたので柔らかい足回りのタクシーは殊の外酔った。
ホテル到着後、さっさと部屋に通して貰った。
ここのホテルは満室だったのだが、無理を言ったので予備の部屋のようであった。
部屋は細長く狭い。
ドアをあけてすぐ左手にシャワーとトイレ。
その先、左手にシングルベッド。
右手には鏡。
突き当たりに窓、といったレイアウト。
入った瞬間気持ち悪かったが、正月ということもあり代わりのホテルは無い。
なんにせよムカついていたし、馬鹿らしかったし、疲れていたので速攻ベッドで横になった。
思ったより酔っていたようで、すぐに睡魔が襲って来た。
それとほぼ同時に、耳鳴りと金縛り。
俺は、
“ 来たか・・・。”
と思った。
過去に何度か怪しい経験をしているので、そんなに慌てなかった。
金縛りは2種類あると勝手に思い込んでいるのだが、大概は身体の疲れから来るものだと思っていた。
当然、悪夢と幻覚は付いて来る。
その金縛りの最中、足下に誰かがいた。
人数は分からない。
ただ、俺の足下で俺の脚を踏まないように、足踏みしているか、歩いているか分からないのだが、ベッドがグン、グン、と凹む。
どうせ幻覚だと思ったし、怒りモードの俺は、
「 うるせーよ!どっかいけよ!」
と怒鳴り付けた。
するとソレはピタっと止まり、俺は眠りについた。
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