日々の恐怖 11月29日 チエ(3)
死因は原因不明の高熱だった。
突然ガーッて熱が上がって、入院して、それっきり。
俺はもしかしたら、俺が御神酒サボってるせいじゃないかって思った。
でも親にも婆さんにも言えなかった。
罪悪感とか、そんなん。
妹が死んだのは俺のせいだって思った。
でも、母親は、妹が死んだのはチエのせいだって言い始めた。
話を聞くと、妹は今際の際に、
「 ちえちゃーん。」
と泣いたらしい。
ちえちゃーんなんて友達は妹にいなかったし、思い当たる事があれば、あの怪しげな人形だ。
俺が過去騒いだせいかも知れないけど、母親も過敏になって、
「 人形を捨てる!」
と言い出して、妹の葬儀中に大喧嘩した。
この一件から、うちの両親は不仲になって、母親は実家へ帰った。
親父は黙々と仕事をして、婆さんはチエを抱きながら毎晩泣いた。
親父仕事から帰って来ないし、婆さんは泣いてばかりだし、この辺りから、俺が家事をするようになった。
次に婆さんの呆けが始まった。
今思えば当然だ。
飯を食うか、部屋に篭って人形抱きながらぼーっとして、泣いて、泣き疲れたら寝てた。
「 ご飯だよ。」
って呼びに行ったら、何か食ってんの。
「 何食ってんの?」
って聞いたら、
「 ご飯。」
って言う。
“ はあ・・・?”
と思いながら、婆さんの顔見たら、金色の糸が口から出てんだよ。
そんで、手元には半分剥げたチエ。
俺はこの時が一番怖かったとおもう。
急いで婆さんから吐き出させた。
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