大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 11月11日 老い(3)

2016-11-11 18:45:42 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 11月11日 老い(3)




 好奇心が先に立ったのか、私は階段に一段、足をかけた。

「 ダメだよ、行っちゃあ!」

その時、私を咎めるような声がした
 驚いて声のした方を振り返ると、そこに曾祖母が立っていた。
たいへん長生きをした人で、九十九まで生きた。
このときは、八十くらいではなかったか。
夫に早くに死なれ、女手一つで店を大きくした、たいへん気丈で厳しい人でもあった。
 その人も、

“ 早くこっちにおいで・・・・。”

と私を手招きしている。
 再び階段を見上げると、さすがに曾祖母だけは恐いのか、ヨシ子ちゃんは背を向けてゆっくりと、暗い階上を戻って行くところであった
 やがて、その姿は暗がりに溶けていった。
曾祖母は私の傍、階段の下まで来ると、剣呑な顔をして、

「 あんなに良くしてしてあげたのに、悪戯をするな。」

と、そんな意味のこと上に向かって言った。
 後で叔母の話すところによると、本家には従兄弟が三人いるのだが、三人ともが同じ体験をしているのだそうである。
 不思議なことに大人がいるときには出ないんだそうな。
もし、あのまま三階に行っていたらどうなっていたのか。
あの三階に何があったのか、わからず終いのまま
 家はいつの間にかコンクリートの二世帯住宅に建て替えられたそうである。
今は曾祖母も叔母も、すでにあちらの世界の人間である。
春は、あちらとこちらの世界の境界が少しあいまいになる、そんなことを考えながら、またうつらうつらとしてくる昨今である。










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