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日々の恐怖 11月16日 記憶

2016-11-16 18:35:33 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 11月16日 記憶




 生まれて来てから今までで、一番古い記憶って、いつ頃のものだろうか。
俺の場合は幼稚園の入園試験だった。
前後の記憶は大概おぼろげなんだけど、この時の出来事は、それこそ昨日の事のように覚えてる。
いや、正確には覚えている気になっていたと言うべきだろうか。
 俺が入園試験を受けたところというのは、カトリック系の幼稚園だった。
別に生家が宗教をやっていたわけではなく、単純に近いという理由でその幼稚園が選ばれたそうだ。
 試験の会場は、幼稚園と道路を挟んだ向かい側にある小さな教会だった。
もちろん教会までは親と一緒に行ったんだけれど、子供だけで一人ずつ別室に通されて、神父と面談を兼ねた簡単な試験をするという内容だった。
 最初は、

「 お名前はなんていうの?」
「 好きな食べ物は?」

とか当たり障りのない内容だったんだけど、少ししたら大きめの画用紙を取り出して、

「 これは何色ですか?」

って質問が始まった。
 その画用紙は全面が単色で塗られていて、なんてことはない、考えるまでもない質問だと思った。
赤の画用紙が出てはその通り答え、緑の画用紙が出てはその通り答え、と特に問題はなかったんだけど、それがいつまで経っても終わらない。
 さすがに出てきた順番までは覚えてないものの、色は赤、緑、紫、白、黒の5種類だった。
この5色をひたすら答えさせられた。
 その5色の出し方も不思議で、最初のうちは満遍なくランダムで出されていたものの、回を重ねるたびに黒の出現頻度が上がっていった。
30回目くらいに達した時には、もう黒しか出なくなっていた。

「 この色は何かな?」
「 これは何色?」
「 この色は?」

延々と繰り返される質問に対し、俺は馬鹿正直に黒と答え続けた。
 そのうち神父は、無表情のままに徐々に声を荒立て始めて、

「 これは本当に黒!?」
「 黒に見えるのか!?」
「 黒かどうか、もっとよく見ろよ!!」

と、気づけばもう質問の体裁を保っていない状態になっていた。
 目の前の神父は相変わらず無表情で、口もそんなに大きく開けているようには見えないのに、声はどんどん大きく、また口調も汚くなって行く。
 明らかな大声なのに誰も助けに来てくれない。
一緒に来ている母親も、部屋の外で待っているはずなのに来てくれない。
その状況に耐え兼ねて、俺はついに泣き出してしまった。
ここで俺の記憶は途切れる。
 後に母親にこの時の事を尋ねたのだが、聞かされた話は全く異なっていた。
簡単な入園試験があったのは事実だが、会場は教会ではなく幼稚園の一室で、母親も同席していたという。
 考えてみれば2歳3歳の子供が一人で面談を受ける事は考え辛いし、客観的には母親の弁が正しいのだろう。
でも、俺ははっきりとその時の事を思い出せるし、今でもたまに夢に見る。
この記憶、いったいどこから来たのだろうか?













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