大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 11月15日 顔

2016-11-15 19:16:05 | B,日々の恐怖




  日々の恐怖 11月15日 顔




 俺は4歳になるまで、夜はバアちゃん家に預けられていた。
夜はバアちゃんと並んで寝るんだけど、その部屋に死んだジイちゃんの仏壇があった。
で、夜中に目が覚めたりすると、たいてい金縛りになる。
その時、必ず仏壇の戸が少し開いてて、中から誰かがこっちを見ている。
扉に手をかけて、白い顔を半分覗かせて。
 最初は、ジイちゃんだと思っていた。
バアちゃんが仏壇に向かって、

「 じいさん、・・・・・。」

って呼び掛けるのを見てたから。
 だけど、その顔、良く見ると子供みたいなんだ。
こっちを見ながら、うっすらと笑っている白い子供の顔。
そんなものを見ながら、俺は不思議とも思わずに、4歳までその部屋で寝ていた。
 バアちゃんは俺が11歳の頃に死んだ。
良く覚えていないけれど、何かの病気だった。
半年ぐらい入院していて、見舞いに行くと割と元気に見えたのに、急に具合が悪くなったかと思うと、2日くらいで死んでしまった。
 それでも、自分の死期はうすうす感じ取っていたみたいで、死ぬ間際には、

「 やっと、じいさんのところへ行けるね・・・。」

みたいなことを言って、周囲を困惑させていた。
 バアちゃんは、具合が悪くなったと同時に昏睡状態に陥った。
親族は交代で病室に詰めていたんだけど、最後を看取ったのは俺の母親だった。
そのときの様子が、ちょっと変だったらしい。
 母親は、病室のベッドの横で本を読んでいたんだけど、何となく呼ばれたような気がして、バアちゃんの方を見たそうだ。
 すると、昏睡していたはずのバアちゃんが目を開けていた。
瞬きもせず、じっと天井の方を見つめている。
 母親が声を掛けようとした時、バアちゃんの口が動いた。

「 お前、じいさんを何処へやった。」

実の子である母親が、今まで聞いた事もないような、低い声だった。
 呆気にとられていた母親が我に帰ると、バアちゃんはもう目を閉じていて、それから半時間程で、あの世へ旅立ったそうだ。
 バアちゃんは、あの白い顔をずっと見ていたのかも知れない。
今思えば、そんな気がする。











童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------