日々の恐怖 7月7日 お茶漬け専門店
俺はお茶漬け専門店なんてニッチなお店で働いている。
ホール希望だったけど夜勤に回された。
専門店のお茶漬けすべてに言えることだと思うけど、お茶漬けの米ってカビをつける作業がある。
夜中に室温の管理しながらダメなカビが発生してないかを監視するっていう、ちょっと変な仕事内容だ。
ガラスのフタを覗いて、ダメなカビがあったらそのタライの米は全部捨てる。
ちゃんと発酵してるものは、カビを綺麗な水で洗い流して店に出す。
この工程のおかげで1杯2000円でも売れる。
サラサラっと胃に流し込んでしまえちゃういい米になる。
洗い流す工程の時に異変に気付いた。
エプロンの結び目を解かれたり、頭のタオルを落とされたりする。
それが何日も続くもんで、大将(社長)に相談した。
「 そりゃ狐やろ、この辺は昔は山やったからな、狐くらいおるわな。」
「 え~?
でも、音もしませんでしたし・・・?」
「 生きとるもんじゃないからな、うまくやれ。
台所に、お揚げさん置いといてやるわ。」
「 えぇ・・・、それだけ・・・?」
「 騙された思うて1週間頑張ってみ。
あんまり気になるならホール任せる。
ほんまは、ホールは女がええけどな。」
次の日から、パタリとイタズラが無くなった。
でも、お揚げさんが減ってる様子も無く、
“ もったいないな・・・・・。”
と思って社長に聞いたら、
「 食ってもいい。」
と言われた。
それで、毎日味噌汁に入れて食べている。
そのときはイタズラの被害者は俺だけだったが、店を立ち上げた当初から、そういうのがあったらしい。
社長の母親がやって来て、
「 食べ物供えないと、なかなかどっか行かないよ。」
って言われた。
俺が、
「 狐って、食べ物貰うと、すぐどっか行くんか・・・・。」
と呟くと、
「 でも、また、すぐ戻って来るけどね。」
「 えっ、住み着いてるんですか・・・?」
「 うん、そんな気もする・・・、知らんけど・・・・。」
と返事があった。
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