日々の恐怖 7月11日 お財布(2)
まず、中に入れてたお金は無事だった。
それどころかむしろ増えていた、不自然に。
それからやたら小さく小さく折り畳んだメモみたいなのが何枚か。
中には、合格祈願みたいな内容や、独立したいとか、店がどうとか、なんかよくわからない個人名だかあだ名だかが書いてあるだけのものとか、とりとめがない。
なんというか、公衆トイレの落書きとか宿泊施設にある交流ノートのノリに近いかもしれない、もしくは神社の絵馬のような。
“ もしかしたら、この小銭入れはお賽銭箱みたいな役目をさせられてたんだろうか?
でも、なんのために?
どうしてそんなことに?”
経緯がまったくわからない。
“ まさか何人もの手を渡ってきた?
どうやって?”
幸いなことに、自分に関係しそうな内容とか、恨みとか物騒な要素はなさそうだった。
それだけは本当に安心した。
でも、やっぱり気持ち悪い。
メンタル弱すぎかもしれないが気分が悪い。
こんなの、少し自分で手を入れてるとはいえ、ただの既製品の小銭入れだ。
そんな願掛けだかなんだか念みたいなもの込められても、ほんと分不相応なんで勘弁してください、許してください。
これ、ほんとにどうしたらいいんだろう。
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