日々の恐怖 7月13日 歯医者
前に、歯医者に行ったときの話です。
その日は仕事の徹夜明けで、ボケ~っとしたまま歯医者に行った。
親知らずの抜歯のために最初に麻酔して、麻酔が効くまでの少しの時間ウトウト寝てしまった。
すると突然、顔に、
“ ベチャッ!”
と冷たいものが乗ってきて、驚いて反射的にそれを掴んでしまった。
感覚的に明らかに人の手だった。
子供とか女の人みたいな小さくて華奢な感じだった。
歯科助手のお姉さんの手だと思って、
「 あ!すいません!」
ってパッと離して体を起こしたら、誰も周りにいなかった。
俺の声に驚いたのか、隣の衝立から歯科助手のお姉さんが出てきて、
「 どうされました?!」
と聞いてきた。
困っていると先生までやって来て、
「 大丈夫?」
と聞いて来た。
「 すいません。
ちょっと寝ちゃって。
寝ぼけたみたいです。」
と返したら、2人とも、
「 何だあ・・・・・。」
と笑っていた。
それから一ヶ月経った。
最後の通院日に、帰る時に歯科助手のお姉さんが、
「 じゃあ次は半年後の定期検診ですね、お大事に。」
と言われ、
「 はい、ありがとうございました。」
と返事したところで、急に顔を寄せて来て、耳元で、
「 前に大きな声を出されたときに、寝ぼけたとおっしゃってましたけど、本当は見たんですよね?」
と言ってきた。
「 え・・・。」
と困っていると、
「 ちょっと見た目は怖いですけど、害は無いので、また来てくださいね。」
と笑顔で言われた。
“ 見てはないんだよな・・・。”
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