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なんじゃもんじゃ物語 1-6  (もんじゃ王国にて)

2006-06-25 11:00:09 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語 1-6  (もんじゃ王国にて)


なんじゃもんじゃ物語 25

(もんじゃ王国地下室)

 ホイ大臣が、塔の上で寝込んでいる頃、もんじゃ王国では、チカーメ大臣と五人の男が、王宮の地下にある部屋で秘密の相談をしていました。
ろうそくのゆらゆら揺れる火で、チカーメ大臣の顔は絶えず変化して、渦をまいた眼鏡の奥に光る眼は、黒く鋭く悪意に満ちていました。
机の上に広げられたなんじゃもんじゃ地図を指で押さえながら、チカーメ大臣は言いました。

「 このなんじゃ王国を倒すのは、たやすい。
しかし、なんじゃ王国を倒しても、どうせ私は大臣のままでしょう。
仕事も更に増えるし、給料を上げる交渉をしても何時ものように、のらりくらりと、うやむやになってしまいます。
お前たちの給料も、私の給料が上がらないのに上がる筈はありません。
これ、聞いてますか!!」

チカーメ大臣は、居眠りしている男たちに興奮して、思わず大きな声を出してしまいました。
そして、しまったと言う顔をして部屋を見まわして言いました。

「 おっとっと。
誰にも、聞かれてないでしょうね。」

大きな声は、二度、三度と部屋の中で響き、余韻を残して小さくなっていきました。
五人の男は、びくっとして背筋を伸ばしました。
チカーメ大臣は、五人の顔を一人ずつ確認しながら、普段より声を低めて言いました。

「 そこで、相談があります。
手っ取り早く言いますと、私はもんじゃ王を殺して、女王になります。
王女は、そなたたちで殺しなさい。
 もうすぐ、なんじゃ王国が攻めて来る。
今まで、平和過ぎてチャンスが無かったのです。
今回、長く待っていたチャンスがやって来ました。
この機会を逃したら、もう二度とありません。
 そして、次には、なんじゃ王国も併合してチカーメ王国をつくるのです。
成功した暁は、あなたたちとインフルエンザで休んでいる男とを、政府の要職につけてあげましょう。
給料も今までより、2倍にはしてあげます。
もし、嫌と言うなら、この場で射殺します。」

チカーメ大臣は、机の下に隠してあった拳銃を取ろうとしました。

「 あれっ、ない。
ない、ない。
何処へいってしまったんでしょう?」
「 チカーメ大臣、これですか?」

横に座っていた男が、拳銃をポケットから取り出しました。

「 何時の間に取ったんですか!
油断も隙も、あったもんじゃない。」
「 いや、さっき大臣が、喋っている時、床に落ちたので拾ってあげようと思っただけで。」
「 おだまり!!
どうせ、持って帰って売るつもりだったんでしょう!!」
「 あはは、ばれたか。」

チカーメ大臣は、拳銃をひったくって五人に銃口を向けました。
五人は、順に、うん、うん、と肯きました。

「 そう、みんなオーケーなのね。
それじゃ、今日の事は、他言してはいけませんよ。」

チカーメ大臣は、満足そうに、にやっと笑いました。





なんじゃもんじゃ物語 26


(もんじゃ王国王室にて)

「 た、た、た、た、た、た、たい、たい、たい、大変だべ!!
お、お、お、お、お、王様!!」

もんじゃ王国の漁師ポチが、片手に朝食のバナナ、片手でずり下がったモモヒキを引っ張りあげながら、もんじゃ王の寝室の扉を蹴破って入ってきました。

「 な、なんじゃ、お前は?
わしの寝間着姿は、亡くなった后にしか見せた事がないんじゃぞ。
お前は、わしの后になりたいのか!!」
「 ならせてくだせえますか?」
「 ヨーロッパあたりの開発途上国ならいざ知らず、わしは、その気は無いぞ。」
「 そうだか、おしかったなー。
ほな、さいなら。
モグ、モグ。」

漁師ポチは、朝食のバナナを食べて、ポイと皮を床に捨てて出て行こうとしました。
もんじゃ王は言いました。

「 おいこら、ちょっと待て!
まだ、急用を言っとらんぞ!!」
「 そうか、いや、別にたいした事じゃないんでございますだがね。
なんじゃ王国の軍勢が100万人ほど、ホンジャ島の北側から攻めて来てるだけの事でございますだ。」
「 なんだ、そんなことか。
ん、ん、な、な、なんと!!
それを早く言え、ばか。
おい、お前、チカーメ大臣を呼んで来い。」

その時、チカーメ大臣が辞書をお盆代わりにして、モーニングコーヒーを持って部屋に入って来ました。

「 どうなされたのですか、王様。」
「 なんじゃ王国が攻めて来たぞ、チカーメ大臣。」
「 ひえっ!!」

漁師ポチの捨てたバナナの皮に滑って、チカーメ大臣は毒入りのコーヒーをカップごと床に落としてしまいました。
そして、床にひっくり返って、腰を打ってしまいました。

「 こんな所に、バナナが。
いてててて、腰を打った。」

チカーメ大臣は、腰をさすりながら、心の中で考えました。

「 しまった、こぼしちゃった。
あれっ、漁師ポチがいる。
危なく、殺す所を見られる所だったわ。
なんで、こんな時に、ここに居るの、ばか・・・・。
なんじゃ王国が、今日攻めてくることは、なんじゃ王国に潜入させてあるスパイから聞いて知っているわ。
今、もんじゃ王を殺しておいて、なんじゃ王国が攻めて来た時、戦場でほっぽり出しておけば、誰が見ても戦死と思うでしょうに。
毒入りコーヒーもこぼしちゃったし、拳銃は音が聞こえるし。
漁師ポチは、しぶといから殺しても、一週間は死なないわ。
でも、もう時間がないわ。
…………・。
ええい、もう後回しだわ。
とりあえず、戦いに勝たなければ。
もんじゃ王国が負けて潰れれば、大臣のポストも危ないわ。」





なんじゃもんじゃ物語 27


もんじゃ王が言いました。

「 おい、何だ、これは霧か、朝もやか、公害か?」

チカーメ大臣が、さっきこぼした毒入りコーヒーは、床を溶かしてモクモクと煙を出していました。

「 王様、朝霧でございます。」
「 ゴホン、ゴホン、最近の霧は眼にしみるなあ。」
「 ゴホン、本当にそのとおりでございま、コホン、すわ。」

モヤがうっすらと晴れて来ますと、床に大きな穴が開いていました。
チカーメ大臣は、とっさに側にあったテーブルを引っ繰り返して穴の上に置き、誤魔化したのであります。

「 ふー、危なかったわ。」
「 何か言ったか、チカーメ大臣?」
「 いえ、何でもありません。
それより、早速防衛対策をいたしましょう。
部下の六人は、それぞれ特技を持っております。
あっと言う間に、なんじゃ軍を打ち負かしてくれます、では。」

チカーメ大臣は、部屋を大股で急いで出て行きました。
もんじゃ王は、満足げにつぶやきました。

「 ほんに、頼りになる奴じゃのう。」





なんじゃもんじゃ物語 28


チカーメ大臣は、ちぎれて短くなったもんじゃ軍呼びだし紐に一生懸命飛びついていました。
紐が短くって、なかなか引っ張れません。
いつのまにか、漁師ポチが、それを見ていました。

「 柳に飛びつくカエルみたいだんべ。」
「 ばか、ただで見ないでちょうだい。」
「 でも、おもろいだんべ、10もんじゃ払うから、もっとやるだんべ。」
「 お金を貰ってる場合じゃないわ。
これよっ!!
この紐はもんじゃ王国の命運を背負った紐なのよ。
見てないで、手伝いなさい。
あはははは。
私の足を引っ張るんじゃない。
くすぐったいじゃないの。
紐、紐よ。
ばか、自分のモモヒキの紐を引っ張ってどうするの!
変な物、出さないで。
これよ、これっ!!」

ようやく、漁師ポチは、紐に飛びつき呼び出しの鐘が鳴りました。
チカーメ大臣は、漁師ポチを見ながら言いました。

「 はー、時間がかかる。
もーいいから、ポチ、どっか行きなさい。」
「 面白そうだから、もうちょといるべ。」

そこに、待機していたチカーメ大臣の五人の部下が入って来ました。
チカーメ大臣は、言いました。

「 また、一人足りないけど、どうしたの?」





なんじゃもんじゃ物語 29


「 今度は、」
「 歩けなくなるほど、」
「 ひどい、」
「 悪性の、」
「 水虫、」

そこで、五人はじゃんけんをしました。
第一の男が、勝ち残って言いました。

「 です。」
「 まあ、いいわ。
作戦変更よ、先になんじゃ王国をぶっ潰すのよ。
殺すのは、それから。
なんじゃ軍は、ホンジャ島の北側から攻めて来たわ。」
「 100万人だべ。」
「 わっ!!
漁師ポチ、お前まだいたの。
なんじゃ島民は、全部で50人ほどよ。
100万人もいるわけないでしょ。
もう、人手不足だから、お前も欠席者一名の代わりよ。
一緒に戦いなさい。」
「 おらは、乱視で人間がたくさん見え…。」
「 うるさい!!
おだまり、漁師ポチ!
あんたが喋ると話しが混乱する。
それで、ホンジャ島の北側は崖になっている。
崖の上から石を転がし、なんじゃ軍を蹴散らして、その勢いでナンジャ王国を一気に攻め取るのよ。
分かった!!」
「 はい、分かりました。」

第一の男が、一人で喋ってしまいました。
残りの男の拳骨が飛んで来て第一の男の頭にコブが五個できました。
第一の男は、頭をさすりながらいいました。

「 一つ多いぞ、ばか。」

みんなの視線はチカーメ大臣に行きました。
でも、チカーメ大臣ではありませんでした。
チカーメ大臣は、漁師ポチを指差して言いました。

「 あれ、あれよ!!。」
「 みんなやったから、おらも一緒に。
付き合いがいいのが、」

漁師ポチが、喋っている途中に頭にコブが増えていきました。
五人は言いました。

「 それでは、」
「 チカーメ大臣、」
「 行って、」
「 まいり、」
「 ます」

そこで、何時もどおり六人目の男が喋る分を、じゃんけんをして決めました。
第三の男が勝ちました。
しかし、第三の男は苦しみだしました。
言う事が無くなってしまったのです。
しばらく苦しんでいて、やがてハッと気がついて笑顔が現れました。
そして、大きな声でいいました。

「 まる。」



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