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日々の恐怖 7月10日 寂れた旅館(5)

2021-07-10 17:55:44 | B,日々の恐怖



 日々の恐怖 7月10日 寂れた旅館(5)




 私は震える手でなんとかブレーカーに測定器を当てて、漏電している回路を探し出しました。
私は旦那さんに、

「 この3番目の回路が漏電しているので直してください。」

と震える声で伝えました。
 旦那さんは、

「 分かった、戻ろう。」

と言って、私を先に部屋から出してくれました。
 部屋から出ても、なお凄まじい視線を感じます。
明らかに、近くに何かがいる気配がします。
 旦那さんも直ぐに部屋から出てきて、

「 早く戻ろう。」

と私に言いました。
 私は頷いて、もと来た道を戻りました。
戻る最中も、後ろにぴたっと何かがいる気配を感じていました。
私は振り返ってそれを見たら、死んでしまうかも、とも思いました。
 来た道を進んで、やっと渡り廊下まで戻ってきました。
旦那さんが本館と別館の仕切りを閉めて、南京錠を2つかける音がしました。
それでもまだ、私は後ろを振り返れないでいました。
いまだに視線を感じていたのです。
 そのまま渡り廊下を進み、大きな扉を開けて廊下から出ました。
そこでようやく視線は感じなくなりました。
会社から支給された携帯で時刻を確認すると、18時28分でした。
 戻ると女将が心配そうに聞きました。

「 大丈夫でしたか?
何もありませんでしたか?」

私は、

「 何もありませんでした、でも、やっぱり漏電はしてました。」

と謎の受け答えをしました。
 すると女将は、

「 良かったです。」

と何かを察したかのように答えました。
私も旦那さんと同様にものすごく汗をかいていました。
 私はその後、漏電箇所改修依頼の書類を書いて判子をもらって、

「 電気屋さんに直してもらって下さいね。」

との趣旨を、旦那さんと女将に伝えて帰りました。
 帰り際に女将と旦那さんから、

「 ご苦労さま。」

と言ってポカリスエットをもらいました。

「 ありがとうございます、お手数おかけしました。」

と伝えて帰路につきました。
 帰路についた私ですが、全く気分が晴れません。
落ち込んだ気分のまま、自宅に到着しました。










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