日々の恐怖 7月7日 寂れた旅館(4)
私は旦那さんと一緒に、本館と別館を繋ぐ渡り廊下に行きました。
本館と別館を分ける仕切りの南京錠を外す前に、旦那さんから、
「 別館は老朽化が進んでいるので、足元に気をつける。
それから、何を見ても驚かないように。」
と念を押されました。
いよいよ南京錠を外して仕切りを開けたときです。
ものすごく冷たい空気が、私の方に流れて来ました。
別館は何か空気が違いました。
別館をライトで照らすと、辺りは廃墟同然で、昔使っていたと思われる椅子やテーブルがそこ、ここに転がっていました。
旦那さんは私に、
「 汚い物を見せて申し訳ない。」
と引きつった笑顔で言いました。
また、
「 長居はしたくないから速めに行く。
足元に気を付けて・・・。」
とも言いました。
別館に踏み入れてからは、終始誰かに見られている感じがありました。
私は恐怖感から、何か喋らないといけないと思って旦那さんと何かを喋りましたが、もう何を話していたのかの内容は覚えていません。
別館の奥にある小さな部屋までやってきました。
部屋の入口には、壊れたドアと陥没した床がありました。
「 ここだ。」
と旦那さんが私に言いました。
最初に旦那さんが部屋に入り、その後、私も陥没した床を飛び越えて、その部屋に入りました。
部屋に入って、すぐ右に女性の日本人形がかざってありました。
私は、
” 見られているようで、気持ち悪いな・・・・。
ここには、長くは居たくない。”
と思いました。
私はすぐさま配電盤の蓋を開け、ブレーカーに測定器を当てようとしたのですが、手がふるえて思うようにできません。
私は、
「 手間取ってすいません・・・・。」
と旦那さんを見ながら言いました。
その時の旦那さんの顔はこわばり、体はびっしりと汗をかいていました。
旦那さんはポロシャツ一枚で、上半身が透けて見えるほど汗をかいていました。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ