日々の恐怖 9月19日 不動産屋(2)
興味を持った俺は、Kさんに紹介する部屋の事について聞いてみた。
その部屋は一人暮らしの二十代の女性が半年くらい前に自殺した部屋で、事件後は誰も借り手がついていない物件だった。
実際に部屋を見てみたくなった俺はKさんの担当を代わってもらい、二日後にKさんと共に部屋を見に行った。
部屋に行く途中、Kさんと話をしたのだが、彼は霊などのオカルトは全く信じていないようで、
以前にもいわくつきの部屋に住んでいたという。
その時も特に霊体験をしたことはなかったそう。
アパートは築八年ほどの二階建てのごく平凡な建物だった。
以前は近くにある機械の部品組み立て工場で働く、一人暮らしの派遣労働者がほとんど入居者だったようだが、
不況の煽りを受け派遣切りがあったので、今ではアパートの入居率は2割ほどしかいない。
目的の部屋は、道路から入って一階の一番手前の場所だ。
ドアを開けて中を見たのだが、何の変哲も無いワンルームの部屋だった。
Kさんからも特に意見がなかったのでその日のうちに契約が成立し、次の週には入居した。
しかしKさんが部屋に住んで一週間ぐらいが過ぎたとき、突然彼から苦情の電話が来た。
Kさんの話によれば、彼が夜中に寝ていると突然、
” ドンッ!ドンッ!”
という大きな音で起こされたという。
飛び起きてドアのほうに向くと、部屋の外で男が何か怒鳴ったりドアを叩いたりしていたそう。
こういった苦情は良くある事で、
「 どこかの酔っ払いが騒いでいるのだろうから大丈夫ですよ。」
と彼をなだめるように説得した。
Kさんもしぶしぶ了承してその場は収まった。
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