日々の恐怖 5月29日 お守り(3)
その晩、私は付属してるお風呂場のほうから変な気配を感じて、薄目を開けました。
私はあんまり感覚のあるほうではないのですけれど、そこに何かいるとか、気配を読むことが稀にあるので、
” あ~、何かいるんだなぁ・・・・。
まあ古そうなお宿だし、いてもおかしくないよね・・・・。”
と特に怖がりもせず結論付け、一応母の方を確認しようと寝返りを打ちました。
母は私のバックを何か大切な宝石箱でも守るような形で横抱きに抱え込み、私のほうを向いて(左半身を天井に向けて)寝ていました。
” 何かおかしい、どうしたんだろうこの母は・・・・?”
そもそも何で私のバックなんか抱えるなんて言い出したんだろうと、このときになってようやく考え出しました。
母が抱きしめている私のバッグは、外行き用の小さめのバッグで、(母から言わせれば、ずた袋だそうですが)母の友人の小物屋さんから母が買い、私にくれた物でした。
特に何かいわれがあるとかいうものではありません。
中に入ってるものも、特にこれといったものは入っていません。
お財布にお化粧品とスケジュール帳と、実家の方でいつもお世話になっている天狗様のお守りと、お伊勢さまの鈴守りと、那智大社で買ったお守りと、那智の滝の杯。
そこまで考えてから、母はもしかしてこの大量のお守りに用があったのかもしれない、と思い至りました。
それから、そういえば母がこの部屋に持ってきた荷物には、母がいつも持ち歩いているお守りの類が一切なかった、ということも思い出しました。
何かあったことは明白なのですが、対処法に疎い私には何もすることが思いつかず、とりあえず明日も早いだろうから、そのまま寝ることにしました。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ