日々の恐怖 3月18日 漁に出る(2)
海釣り用の竿を出したオヤジが、のんびりと糸をたらします。
暢気なもんだと思っていたら、程なく大きな魚がヒット。
「 鯛ですかね?」
と、聞いたんですが、親父はゴニョゴニョ言うばかりで教えてくれません。
” まぁ、良いか・・・・・。”
と思っていたら、親父が血相を変えて竿をしまいました。
「 なんかあったんですか?」
と聞いても、何も言ってくれません。
しつこく聞いていたら、
「 良いか、何があっても、これから声を出すな、絶対に出すな!」
と怒鳴られました。
意味が分からず、ちょっとふて腐りモードで沖のほうを眺めていたら、なんか白いモヤみたいなのが漂っているのが見えました。
オヤジは自分にも聞こえるような音で派手に舌打ちして、クルリと船の向きを変え、港に向かって船外機全開で走り始めます。
ふと気が付けば、何となく生臭い臭いと共に、ベタベタするような湿気交じりの空気が船を包んでました。
” なんだこりゃ・・・・?”
と思い、親父を見たら、もの凄い血相で指を口に当てて、
” シー、・・・・。”
とするようにして、沈黙を求めています。
そして、ハエでも払うように、
” シッ、シッ!”
と手を振って、前を向くように指示されました。
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