日々の恐怖 2月10日 黒電話(2)
何を言っているのかわからないぼそぼそと喋る声は、主人が受話器を手に取ると押し黙る。
気味が悪くなった主人はしぶしぶ電話番号を変えてみたり、電話局に連絡し、警察に連絡し、いたずら電話の相手から逃れようとした。
しかし、何をしても毎日夜中に黒電話は鳴り続けた。
そして、原因が分からず精神的にまいってしまった主人は、祈祷師にお祓いを頼むまでに至ってしまった。
しかし、何をしてもいっこうにいたずら電話は止まなかった。
精神を病んだ家族は、その家を売り払う事に決めた。
由緒正しい家柄、家屋にもそれなりの価値があり、これは当時の価値観からして辱めを受ける事と同義だった。
が、背に腹は代えられない。
しかし、それが決まった数日後から電話は嘘のように鳴り止んだ。
そして、その数日後、旧家近くに住む娘が亡くなった。
原因は旦那による撲殺であった。
夫婦仲はよくなかったと主人も聞いてはいたものの、そのような事が起こるとは、信じがたい悲劇であった。
そして警察の捜査のあと、娘の遺書が見つかったとの報告があった。
主人は娘の遺書を警察から受け渡され、その内容を見て悲しみのどん底に落とされた。
いたずら電話は娘であったようだ。
” 助けてほしい、助けてほしい、助けてほしい・・・・。”
そういった願いがその遺書には書き綴られていた。
いたずら電話の犯人はわかったが、それが娘であったとは。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ