日々の恐怖 10月22日 不動産屋(6)
一昨日、男の姉がKさんに謝罪に来てくれたのだという。
そして男の奇怪な行動について話してくれた。
姉が男から聞いた話によると、男は彼女が自殺をした後、部屋に篭りがちになっていた。
しかし夜になると誰からか見られているような不安な気持ちになる。
気になって窓から外をそっと覗いてみると、近くの道路に死んだはずの彼女がこちらを見て立っていた。
女性はしばらくそのままでその後、どこかに去っていく。
毎日それが続き、我慢できなくなった男は彼女の後を追うことにした。
彼女に気づかれないよう静かに後を追うと、Kさんの住んでいるアパートに行き着いた。
しかし彼女は部屋の前まで来ると姿は消えてしまう。
彼女が部屋に入ったのだと思って、部屋の前まで忍び寄り、様子を伺うのだがどうにもならない。
どうにもならないイライラが、死んでまで自分に付きまとう彼女に対する怒りに変わり、
男は発作的にあのような行為をしてしまう。
そういう行動を何週かごとに繰り返していたようだ。
神妙な面持ちで話をするKさんを見て俺は少しあきれた。
確かに気持ちの悪い話ではあるのだが、男は精神を病んでいたので幻覚を見ている可能性があるし、
なによりも心霊やオカルトを信じていないはずのKさんが、そんな話を鵜呑みにするのはおかしいと思ったからだ。
そんな俺の気持ちを感じたのかKさんが、
「 実は昨日の夜・・・・。」
「 えっ!また男が来たんですか?」
反射的に俺が聞くと、
「 いや・・・、違うんだけど・・・・。
やっぱいいです。」
と何か歯切れの悪い返事だった。
腑に落ちず、さらに聞こうとしたが彼のあまりに青ざめた表情を見て気の毒になり、それ以上の話を聞くのをやめた。
結局、Kさんは次の部屋が見つかるまで知人の家に泊めてもらうことで終わり、彼と別れた。
実際に自分が心霊現象にあったわけではないですが、いわくつきの部屋にはこんなトラブルもあったという話です。
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