日々の恐怖 4月25日 白狐(9)
おっさんから貰った缶コーヒーを飲みながら、縁台で話をした。
おっさんと書くには少々失礼なので便宜上、小豆さんとする。
ここは代々小豆さん家が管理している神社で、一応神職の資格は持っているけれど本職の方がメインだから最低限の管理しかしていない。
「 御朱印でも始めれば参拝客も増えて金になるんかね~。」
と言う小豆さんはとっても俗っぽい人だった。
それでも神田様の事は何一つ話してないのに、小豆さんは神様と断定する。
「 最初に見た時、白い狐がやってきたと思った。
よく見たら人間だったけど、神さんが来るなんてどういうことかと混乱した。
信仰しているところのお狐さんかな?」
私自身、特に神田神社を信仰しているわけではない。
どちらかといえば限りなく浅ましい欲求のみで神田神社のことを思っている。
執着以外で表せる言葉が思い浮かばない。
その事も含めて、ざっと小豆さんに説明した。
子供の頃の神田神社への思い入れ、放火されたこと、焼け落ちた外壁が悲しかったこと。
あの白さがどれほど美しく寂しいものなのか。
私の話を聞き終えた小豆さんは、
「 探してるんかな・・・・?」
と呟いた。
「 君に付いて回って犯人を探してるんじゃないかなぁ。」
「 取り憑かれてるってことですか?」
「 そこまで大層なことじゃなくてね、社が燃えたなら修復されるまで居心地悪いだろうし、君を仮宿にしてるって状態だと思う。」
「 私処女じゃないですよ?」
思ったことを口にすると小豆さんは大爆笑した。
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