日々の恐怖 4月22日 白狐(8)
話は変わるが、私はとあるバンドが好きで割と全国を歩き回っている。
所謂おっかけだ。
実家に帰ってからというもの生活に回す出費が減ったので、以前よりも遠征が多くなった。
開場時間までの空き時間、会場の近くを歩き回るのが常だ。
全国各地の御朱印を貰うのも好きなので、基本は神社を見て回るようにしている。
その活動の中、東北のとある県に行った。
霧雨が降る中、いつも通り近くの神社に行った。
寂れた神社だった。
参拝客もいない神社なので朱印がない可能性が高かったけれど、一応念の為に社務所らしき建物に訪いを入れた。
おっさんが出てきた。
小豆色のジャージを着たおっさんだった。
おっさんは私の顔を見ると凄い驚いた顔をしてから、上から下まで全身を眺め回す。
失礼なおっさんだった。
「 御朱印頂けますか?」
「 うちはそういう面倒なのやってないんだよね。」
ジャージだもんな。
期待してなかったのもあって早々に立ち去ろうとすると、
「 まぁお茶でも飲んでいきなよ。」
と軒下に置いてある木の縁台を勧められた。
ジャージのおっさんにナンパされる日が来ようとは。
この県が嫌いになりそうになる。
私は相当嫌そうな顔をしていたんだと思う。
おっさんは慌てて、いやそういうんじゃなくてと取り繕う。
「 白い狐に心当たりはないか?」
” 神田様だ!”
すぐにそう思った。
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